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Secret Garden 少年の誇り
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少年の誇り 序章

小さな小窓から射す光に反射され、薄暗い室内に囚われている少年の裸体が照らされる。

「あっ…み、見るなぁああぁ!」

少年は叫ぶ、必死に迫りくる外敵から身を守りながら…


俺の名前はシオン。あの、気高く誇り高きダーカンドラ王国の将軍だ!凄いだろ?
でも、なんでこうなってしまったのか分かんねぇけど、今はスゲー…恥ずかしい目に…
こんなことになるなら出しゃばらずに、大人しくダーカンドラに居ればよかったぜ…はぁ。



~数日前 ダーカンドラ王宮~

俺はいつもの様に玉座前で「元」大親友のロイと仕事を掛けてバトルを繰り広げていた。

「クフィリオスには僕が行くって段取りじゃないですか!デコ助はお呼びじゃないですよ!」

「なんだとインテリメガネ!将軍の俺に向かって暴言吐くなんていい度胸してぇんじゃねぇーか!」

ダーカンドラの王宮。しかも、その国を治める国王が居る玉座を前にして、恐れ多くも喧嘩をする二人の少年。なぜ、このような場所に場違いな子供が居るのかと言うと、なんとこの二人は列記としたこの国の将軍と軍師なのだ。

「痛っ!…うぅ、何するんですか…」

口論の末、軍師である相棒ロイの頭をガツンと叩くシオン。毎度のことだが、大体はこれで喧嘩は終幕を迎える。そして…

「いい加減にしろ!ワシはお前達の才能を認め、それぞれ将軍と軍師の位を与えたが…お前達は事あるごとにワシの眼前で喧嘩ばかりしおって!」

と、ダーカンドラ王がいつもの様に二人を怒鳴りつけて完全に争いを鎮火する。

「も、申し訳ありませんでした陛下!」

「すみませんでした…でも」

怒ったダーカンドラ王に顔を俯かせて謝罪する二人。しかし、軍師であるロイの方は
喧嘩両成敗に納得がいかずにダーカンドラ王に食い下がろうとするが、「でも」とロイが言いだした瞬間にダーカンドラ王はキッとロイを睨む。

「…何でも無いです」

二人の喧嘩はいつものことだが、今回の争いの元は元々ロイが王命で実行しようとしていたクフィリオス訪問を、いざ出発する際にシオンが「俺が行く」とワガママを言ったことから始まったものだった。当然ロイには何の非も無いのだが、ムキになって権利をシオンと奪い合ったことでダーカンドラ王の怒りを買ってしまったようだ。

「とにかくじゃ、こうなったらどちらでも構わんから、さっさとワシの親書をクフィリオス王国の新国王であるクノ王に届けてくれ」

疲れ果てた様な顔でダーカンドラ王はそう言うと、誰に差し出すでもなくクノ王宛ての親書が入った金細工の施された巻物をスッと二人の前にかざす。

「へへっ…そんじゃ俺が」

そう言って何の躊躇も無く、親書をダーカンドラ王から奪い取る様にして受け取るシオン。

「あぁ!デコ助!それは僕が!」

「うるせぇー!早いもん勝ちだよぉーん!」

出遅れたロイは、咄嗟に親書を手にしたシオンから親書を奪い取ろうとするが、身軽なシオンを中々捉える事が出来ず、今さっき怒られたばかりなのに二人は再び玉座の前でドタバタ暴れまわり始める。

「お前達…さっきワシが言ったことは覚えていないのかぁ~!」

二人の振る舞いに今一度声を荒げて激怒するダーカンドラ王。

「し、失礼しましたぁー!」

その瞬間、二人は身体を大きくビクンと震え上がらせた後、声を揃えて玉座から急ぎ足で立ち去った。



その後、玉座を追われる様にして出てきた二人は、不機嫌そうな顔でお互いの肘をぶつけ合いながらダーカンドラ王宮中心部にある中庭までたどり着く。

王宮中心部に存在する中庭は、建国当時から存在するダーカンドラの貴重な文化遺産でもありながら、庭園内には今も朽ちることなくダーカンドラ城の浄水を一手に引き受ける噴水が設置されている。

今は喧嘩の絶えないシオンとロイではあるが、嘗てはこの噴水の縁に二人仲好く寄り添いながら腰かけ、取るに足らないことをいつまでも笑顔で話し合っていたという。しかし、今となってはそれも既に二人の記憶の片隅に追いやられ、最近ではもっぱらの口喧嘩会場となり果てていた。

「あのさ、何でシオンは何かと出しゃばってくるワケ?僕に恨みでもあるの?」

庭園内の噴水前で立ち止まり、さっとシオンの方に向かってそう尋ねるロイ。

「別にー。ただ、お前が手柄立てるのがしゃくにさわるだけ」

ロイの問いに、シオンは目も合わせずにそっぽ向きながら不貞腐れた顔でそう答える。
これには流石のロイも堪忍袋の緒が切れたのか、普段は言わない様な子供染みた台詞をズラリと並べてシオンに浴びせる。

「……くっ…うぅ…お前って本当に嫌な奴だな!小さい頃はずっと僕の隅に隠れてたクセに!このデコ助!バーカ!バーカ!」

ロイは言うだけ言うと、シオンの反撃を許さずにその場からさっさと立ち去った。一方、一人取り残されたシオンは立ち去るロイを自分で怒らせておいてどういう訳か引き止めるが…

「おい、ロイ!何処に行くんだよ!親書は…」

「お前が行くんだろ!さっさと行けよ!妖怪デコデコ!」

顔をパンパンに膨らませ、振り向きざまにシオンの悪口を言うロイ。

「あの野郎ぅ…帰ったら頭ぶん殴ってやるからな…フンッ」


少しムキになって思わず親書を取っちまったが、妖怪デコデコは言い過ぎだ!
俺はロイに親書を返してやるつもりだったが、それは止めて再び親書を懐に戻した。
でも、この行為が後に最悪に繋がるなんてこの時はこれっぽっちも思わなかったんだ…

少年の誇り 第一話 「避けられぬ罠」

~数日後 クフィリオス城~

「ここがクフィリオスか…こんなに遠いとは思わなかったぜ。地図だとこんなに近いのになぁ」

ダーカンドラから数日かけてクフィリオス城の城門前までたどり着いたシオン。
思った以上の長旅に、ブツブツと愚痴を零しながら乗って来た馬から降りる。

「クフィリオスの周辺は山々に囲まれていますからね…」

「っ!アンタは?」

俺もそれなりに気配とかに敏感な体質なのだが、そいつはいきなり俺の前に現れ、涼しい顔して唐突に地形の説明なんてしてやがる。まるで、今まで俺と一緒に居た様な口振りで…

「私はクノ王に仕えております宰相のラドスです。衛兵からの知らせで、貴方をダーカンドラの使節団の方とお見受けしてお迎えに上がりました。…本隊は今どちらに?」

突然シオンの目の前に現れ、自らをクフィリオスの宰相と言うラドスと名乗る人物。どうやら見張りの兵からの伝令で城から出てきたということだが、どこか人離れした雰囲気が漂う男だ。

「いや、俺が今回の大使だ。出迎え御苦労だぞ」

「えっ?貴方様が…ですか?」

シオンを見下ろすラドスはその答えに興味深そうな眼差しで見つめる。

というのも、13歳のシオン単騎での行動ではさほど珍しくない対応であり、ごく普通のリアクションなのだが…ラドスの場合は少違った反応ともいえる素振りを振る舞う。
だが、そこまでは気が付いていないシオンは、いつも通りに不機嫌な顔をし、大人にしてみれば腹の立つ偉そうな態度をとる。

「そうだ、俺が……えっと、俺はこう見えてもダーカンドラの将軍だぞ?人を見かけで判断するのはどうかと思うぞ?」

「これは失礼しました。ご無礼をお許しください…ホント、あまりにも幼い容姿なものですから」

一瞬笑みを浮かべてそう言うラドス。

「…ふん、まぁいい。さっさと玉座に案内してくれ。クノ王宛ての陛下の親書を預かっているのでな」

コイツ、一瞬笑った?気持ちの悪い奴だ…とにかく面倒な仕事はさっさと終わらせて、城下町でいっぱい遊ぶぞー!

ラドス対応に少し不信感を抱くシオンであったが、任務後の自由時間の方にばかり気が行ってしまい、それ以上勘ぐろうとはしなかった。

「御意…」


その後、シオンはラドスに連れられ長い大理石の廊下を真っ直ぐに進んだ後、何度か階段と同じような通路を行き来し、ついにクノ王が居る玉座までたどり着く。


「王様、ダーカンドラ国より使者が参りました。…さぁ、お入りください」

扉越しにクノ王に向かってそう伝えたラドスは、扉の左右に立っている衛兵達に玉座に繋がる扉を開けさせ、シオンを玉座のある部屋に招き入れる。

「…なっ!」

進んだ先に広がっていた光景に絶句して歩みを止めるシオン。

豪華な装飾のされた室内の先にある高台。そこに「クノ王」と呼ばれる王が座っているのだろが…果たして今王座に腰かけている子供は一体…

シオンが絶句した理由。それは部屋を進んだ先にある玉座に座っていたのが、明らかに自分よりも年下の少年だったからである。そして、一瞬の沈黙の後、絶句しているシオンに向かって少年が話しかける。

「どうしたのだ?余の顔に何か付いておるのか?」

「い、いえ…こちらが陛下からの親書です。お納めください…」

少年の反応に、恐らくあの子供が「クノ王」だと思ったシオンは慌ててその場に膝まずくと、ダーカンドラ王から預かった親書をクノに差し出す。

すると、クノの指示で近くにた家来がさっとシオンに近寄り、シオンの前で一礼して親書をそっとシオンの手から受け取り、それを、まるで卵を扱うかの様に大事に両手で抱えながらクノの所まで持ち帰り、クノの眼前で膝まずいて親書を差し出した。

「うむ…。ふむ…ふむ…ふむ…読めん!」

家来から親書を受け取り、食い入るようにしてそれを読み始めるクノ。だが、すぐにその表情の雲行きは怪しくなっていき、挙句の果てに「読めん」と言い放って親書を家来につき返す。

「よ、読めないとは…」

あまりにも意味不明な状況に混乱するシオン。そもそも、眼の前の子供がクノ王であるのかということ自体に再び疑問を抱く。しかし、シオンがそのことを尋ねようとしたその時、間にラドスが割って入り、クノに膝まずいてこう言う。

「王様、私目にお任せください」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!幾ら宰相だからって、陛下の親書を…」

王が王へ宛てた手紙を読む。子供であるシオンにすら、それがどれだけ王族の権威を汚すことか容易に分かることなのに、ラドスはそれをあえて承知しているかの様な口調で弁解した。

「先王が急死なされたため、国政は私が一手に担っているのです。どうぞお気になさらず」

「気にするなって…しかし…」

この国はコイツが既に牛耳っているのか?そんで、あの子供を良い様に利用しているって訳か…さっき会った時から気に食わない奴だと思ってたが…結構達が悪いな。

クフィリオスの内情を「ワザワザ」見せつけられたシオンは、この何とも言い表せない不穏な空気を本能で感じ取り、そっと誰にも気づかれないように腰の長剣に手を伸ばす。

「……なんと、大変です王様!これは親書などではありませんぞ!」

「????」

玉座に響くラドスの声。シオンはラドスの言っていることの意味が理解できず、呆然とした態度でラドスの言葉に聞き入る。

「これは…ダーカンドラからの侵略戦争の開始を告げる宣戦布告の書類です!…即時降伏せねばクフィリオスを火の海にするとか…」

「なっ!」

思わず耳を疑うような発言に驚くシオン。もちろん、ダーカンドラがクフィリオスに攻め入るなどと言う話は初耳であった。

「それは本当なのかラドス?ダーカンドラが余の国に攻めてくるというのは!」

傀儡であるクノも、流石に自国が戦争になるという言葉には驚きを隠せずに慌てふためく。

「そんな…おい、親書を見せろ!」

ラドスの言うことがデタラメだと思い、とっさにラドスから親書を奪い返そうとするシオン。しかし、こうなることは最初から決まっていたかのようにラドスの掛け声とともに大量の重装備兵士がドッと玉座に流れ込む。

「衛兵!直ちにこの無礼者を捕らえよ!即刻地下牢にぶち込むのだ!」

「だから親書を…って放せ!おいっ!こんなことして…」

剣を抜くか迷ったシオンだが、その迷いが命取りとなり一瞬で遅れる。

「くっ…ラドス!」

それは一瞬の出来事だった。俺がラドスに掴みかかろうとした瞬間。俺は大勢の兵士達に取り押さえられ、床に押し付けられたかと思ったらあっという間に荒縄で全身を縛りあげられてしまい、次に視界が良好になった時には俺を万弁の笑みを浮かべながら見下ろすラドスの姿が…

結局大した抵抗も出来ぬまま、一連の騒ぎで気を失ったシオンはラドスの命令で地下独房に移送されることになった。



「危うく王様を危険に晒すところでした…まさか、ダーカンドラの連中がこんな大胆なことをするなんて」

「まったくじゃ、余の納めるクフィリオスをバカにしおって!思い返せば、大使にあんな子供をよこす時点で既に余をバカにしておる!」

騒ぎの後、ラドスは改めて親書の内容が宣戦布告を告げるものだとクノに教え込むと、次第に幼いクノはラドスの考えに同調していき、ラドスの思惑通りに反ダーカンドラの思いを強めていく。

「確かに王様のおっしゃる通りでございます。後ほど、正式にダーカンドラに対して我々の断固とした意見を返し、あの子供にはキツイお仕置き与えておきます」

「ふむ…まぁ、子供じゃから手荒なマネはするなよ」

「はい…それは十分に承知しております…十分に」




クフィリオス城の西側にある施設。その地下は監獄としても機能しており、罪人扱いとなったモノたちは全てこの暗闇が支配する施設に収監される。無論、国賓扱いであるシオンは例外のハズなのだが…

「こんにゃろぉ!さっさと牢屋から出しやがれ!…それと、装備返せぇぇええぇ!!」

言われなき容疑で地下の独房に投獄されたシオン。着ていた装備はもちろん、青いスタライプの下着以外は全て没収されてしまい、もはや自身がダーカンドラの将軍であるという証は鍛え上げられて培った引き締まった身体の筋肉ぐらいだろう。

「黙れ!このクソガキ!…ったく、本当にあれがダーカンドラの将軍かよ…」

「将軍ですよ」

「っ!ラドス様!…こ、このような場所に何用でおこしに?」

またもや何処からともなく現れたラドス。自国の宰相とはいえ、クフィリオス城の兵士達もラドスとその側近には少なからず恐怖という名の警戒心を持っている。

「いえ、ちょっとあの坊やに聞きたいことがありましてね…それで、君は少し席を外してもらいたいのだが」

本来、受刑者への面会は担当の兵士が原則として一人付く決まりになっているのだが、この兵士はラドスの鋭い視線と重圧に耐えられず、特例としてシオンへの面会を許可。さらには見張りの任まで放棄するという始末だ。

「は、はぁ…ラドス様がお望みとあれば」

少し怯えた様な表情を浮かべながら、見張りの兵士はそそくさと地下独房から飛び出していった。

「さて……ご機嫌いかがですか「将軍」?」

コツコツと足音を立たせながら、徐々にシオンの入れられている牢に近づいていくラドス。そして、自身の牢に近寄ってくるラドスを物凄い形相で睨みつけるシオン。

「ラドス…だったな。何が目的だ?」

ラドスが牢の前に来るや否や、先程の行為の真意を問いただすシオン。

「おや、あの親書の内容を聞いていなかったのですか?貴国の王はクフィリオスに戦線布告したのですよ?」

「それはテメェーのでっちあげだろ!陛下が軍部の意見無しに戦を企てるハズが無い!お前の狙いは一体何だ!戦争を起こして…」

誤魔化そうとするラドスに対し、一歩も食い下がろうとしないシオン。だが、シオンがしゃべり終わる前にラドスがそれをかき消すかのようにして口を開く。

「お前に答える通りは無い。…それより、自分の身の心配をした方がいいぞ、明日からお前の拷問を始めるからな」

「ご、拷問!?」

「拷問」という二文字に驚くシオン。

「ふふ、さっきまでの威勢はどうした?恐怖で体がプルプル震えているぞ?」

「べ、別にそんなこと…」

戦士として、常に死は隣合わせだということを多少心得ているシオンであったが、実際にこのような危機に陥ったことが無いので、内心不安で満ちていた。

そして、それを見抜いているラドスは、さらにシオンを精神的に追い詰めて弄ぶために次から次へと恐ろしい拷問方法を口頭で語って行く。

「…鋭角の三角木馬に掲げ、喉が枯れて叫べなくなり失禁するまで鞭で痛めつけられる…そして、抉れた皮膚に特製の塩キズ薬を塗り込むんだ…ふふ、安心しろ、拷問の担当は私だ。死なない程度にたっぷりと料理してやるから楽しみに待っているがいい」

「ぐっ…くそぉ…」

やがて、ラドスは脅かせるだけシオンを脅かすと、さっさと帰っていった。

「ど、どうしよう…俺…」

その日は「あえて」拷問は行われなかったが、シオンはその夜、独房の片隅で丸く蹲りプルプルと身体を震わしていたという。

少年の誇り 第2話 「巣窟の扉」

クフィリオスの夜明けは遅い。その理由は国の周りを標高の高い山々が囲っているからである。すでに時刻は午前9時を指すというのに依然としてクフィリオスは濃霧に包まれた様に薄暗い…それはまるでシオンの現状を表しているかのようだ。

翌朝、パンと水だけという質素な朝食が出された少し後、シオンの入れられている独房に見慣れぬ風貌の二人組が訪れる。

「っ!ドリス様!それにロンド様まで!」

ドリスとロンド。対照的な印象をもつこの二人はラドス直属の部下であり、クフィリオス軍の中にも組み込まれていない完全な私兵である。ドリスと呼ばれる男は大柄で非常に筋肉質な体型をもち、逆にロンドと呼ばれる男は全体的に細長い華奢なシルエットをもつ。

「うぃ~す、シオンはちゃんと居るな?」

「シオン…あぁ、ダーカンドラの将軍ですね?それで…面会ですか?」

怯えた口調でたどたどしく二人の対応をする見張りの兵士。

「そんな訳無いでしょう?私達はあの子を迎えに来ただけ…もちろんラドス様の命令でね」

「しかし、そんな勝手に…」

「いいから出せって言ってんだよぉ!!テメェー、ミンチになりてぇのか?」

ドリスは見張りの兵士の前に仁王立ちになり、その剛腕で兵士の頭スレスレの位置にある壁を勢いよくガツンと殴りつける。

「あ…いや…その…どうぞご自由に…」

「わかりゃ良いんだよ!カギよこしなっ!」

クフィリオスの宰相であるラドスの部下の命令ではあるが、本来は私設組織のモノ達に捕虜を勝手にどうこう出来る権利は無い。しかし、ドリスの脅しにすっかり怯えきってしまった兵士は、意図も簡単にその脅しに屈してしまい、独房のカギを震えた手でドリス達に渡してしまった。



「なんだよ、お前等…」

さっきの騒ぎの元はこいつ等だと思うけど、どう見てもクフィリオスの兵士じゃない。無論、ダーカンドラからの救出隊という訳でも無さそうだし…

正体不明の訪問者に警戒するシオン。だが、直後に誰の差し金かすぐに判明することに…

「お前がシオンだな。喜べ、ラドス様の命令で迎えに来たぞ」

「覚悟しろよ、ラドス様は容赦ないからなクソガキ!」

…ラドス。アイツの部下か!…ってことは…俺は…やっぱり拷問を…

ラドスの使いと言うことを知り、昨日のラドスの言葉を思い返すシオン。

その後、シオンは下着姿のまま両手を縛りあげられ、ドリス達によって人目を避けながらクフィリオス城の東側にあるラドスの自室へと向かい、さらにそこから関係者しか入れない様な怪しげなルートを通って再び薄暗い地下施設に移された。





「さて、ここまでくれば問題無いだろう…仕上げだ」

やがて、シオンはドリス達に連れられ地下の錆びついた鉄扉の前までやってくると、そこでいきなりドリスに「仕上げ」だと言われ、唯一身につけていた下着を無理やり剥ぎ取られる。

「うわっ!パンツまで取り上げる気かよ!やめっ…あぁぁあぁ!」

こんな不気味な地下室に連れてこられたと思ったら、いきなり俺のパンツを奪おうとしてくるこのデカブツ。俺は必死のその手から逃れようとして暴れるが、奴は俺の身長の何倍もあってどうにか出来るような奴じゃ無かった…

「放せぇええぇ!」

ドリスはシオンの片足を、まるで人形を扱う様にしてひょいっと掴みあげると、シオンの穿いているパンツの一部を摘み、ズリズリと脱がし始める。

「あっ…み、見るなぁああぁ!」

どんどん露わになって行く股間部を、慌てて大声を上げながらさっと両手で包み隠すシオン。

「何恥ずかしがってんだ!さっさとチンチン見せろよ!」

「ざけんなっ!誰がみせるか!」

「しっかし、ラドス様も欲が深いねぇ…ダーカンドラとクフィリオスを戦争させて…」

「ロンド、お喋りが過ぎますよ。その「子」は「一応」ダーカンドラの将軍なんですから。余計なことは吹き込まないでください」

ドタバタと暴れる二人を冷静な眼差しで見つめながら、計画の一部をロンドが口走ろうとした瞬間、その背後に突如現れたラドス。しかし、ロンドはいたって冷静に後ろを振り返りながらラドスに言葉を返した。

「!…コイツを拷問するのは趣味の範囲なんでしょう?」

「まぁ、それはそうですが…うまくいけばダーカンドラ軍部の情報に加え、天才軍師のロイについての情報も得られるでしょう」

「くっ…お前等!こんなことしてタダで済むと思うなよ!!」

二人の会話をちゃっかり聞いていたシオンが、現れたラドス目掛けてそう叫ぶ。だが、その身体は既にドリスの手によってパンツを完全に取り上げられ、小振りな性器が丸見えのスッポンポンに剥かれた後だった…

「テメェーは黙ってろ!粗チン!」

「ゴハッ!」

威勢よくラドス達に怒鳴ったものの、直後に食らったドリスの強烈な一撃がシオンの腹部を直撃。シオン殴られた勢いで逆流した少量の胃液を吐き出しながら、バタっとその場に倒れ込む。

「ドリス、拷問前に虐めたらかわいそうでしょう。それに、彼はまだ幼い子供なんだから粗チンでもしょうがないでしょ。粗チンでも」

そう言いながら、笑みを浮かべて倒れたシオンを見下ろすラドス。

「にゃろぉ……」

俺はギっと笑ってるラドスの奴を睨んでやったが、なんだか意識が遠のいていくのを感じる…なんて思ったら一瞬で辺りが真っ暗になった。

ドリスの一撃が相当急所に入ったのか、シオンは倒れたまま意識を失ってしまう。

「ところでロンド、「私」の拷問室はいつでも使えますか?」

倒れ、意識を失ったシオンを特に気遣うでもなく、ロンドに拷問室の状態を尋ねるラドス。

「前のオモチャの匂いが多少残っていますが…責め具は問題ありません」

「そういうことらしいから、さっそく拷問を始めようかシオン。…二人とも御苦労だったな、後は私一人で十分だ。引き続き軍部と親衛隊の監視を頼むぞ」

意識を失い、冷たい石造りの床に倒れ込んだシオンの頭を軽く撫でまわしながら、ラドスは意識の無いシオンに向かってそう言うと、突然ドリスとロンドを厄介払いするように追い出そうとする。

「ちょ、ラドス様!「また」一人占めですか!」

「俺等には雑用ばっかじゃないですか!この前だって、あのガキの漏らした後始末を…」

これからが本番だという時に出て行けというラドスの言葉に食い下がる二人。どうやらこの様なやり取りは毎回行われている様だ。

「お前達に子供を拷問するのはまだまだ無理だ。それに、私自身が遊んでいる姿を他人に見せたくないのでね。それはお前達だって知っているだろう?」

そうラドスが言うと、二人は「ハイハイ」と言う様な表情を浮かべてその場から立ち去って行く。これも毎度の事なのであろうか、ラドスは潔く引き下がる二人を視界から消えるまで見送った。

そして、その場に残ったラドスは倒れたシオンを難なく持ち上げわきに抱えると、眼の前の鉄扉を開き、扉の奥の闇にシオンと共に消えていった。

少年の誇り 第3話 「狂気の拷問」

「うっ…っ!これは!?」

気がつくと、俺は見覚えの無い場所に移されていた…それと、なんだか体が自由に動かせない…なんというか、何かの上に跨っている様な…

「お目覚めかい?シオン」

意識を取り戻したシオン。だが、まだ完全に感覚が戻った訳ではなく、自身の置かれている状況がいまいちよくわかっていない様だ。しかし、直後に耳に入ったラドスの声に反応して意識が覚醒する。

「…ラドス!テメ…うぅ…あぁ…くっ」

意識が戻り、シオンがラドスを視認して襲いかかろうとした瞬間、シオンの股間に痛みが走る。その痛みに何事かと思い、シオンは改めて自身の身体を眺め絶句。

「…」

シオンの両手は正常位の位置のまま、適当な長さで天上から伸びる鎖に縛りあげられており、身体は鋭角な鉄製の三角木馬に跨がされていた。しかも、両足の足首には重り付きの足枷が嵌められており、少しでも身動きすれば途端に鋭く尖った木馬の頂点が容赦無くシオンの股間部を刺激する。

「大人しくしていた方が身のためだぞ?あんまり激しく動くと、どんどん身体に食い込んでいくからね…ほら、もう玉袋が真っ赤に染まっているし」

「う、うるせぇ!この変態野郎!」

淡々と語るラドスに対し、ジワジワと身体に広がる痛みに耐えながら精一杯の力を振り絞ってラドスを罵倒するシオン。

「おやおや、変態とは随分じゃないか…貴方の国でもこういった拷問は行っているでしょう?将軍?」

笑顔でシオンに切り返すラドス。対するシオンは少し思い当たる節があるのか、一寸の間をとって考えた後に返答する。

「確かにダーカンドラ軍部だって、多少は手荒なマネをすることもあるが…これはやり過ぎだ!」

「それは貴方が「子供」だからですか?…都合のいい時だけ子供…」

「違う!俺はそんな…」

俺がそういうことを言っている訳じゃないと弁解しようとした瞬間、突然ラドスの奴が勝手にベラベラと話し始めた。正直、今は会話なんてしてられる状況じゃねぇんだけど…

「…今、貴方が苦悶の表情を浮かべて跨っている三角木馬ですが、つい先日までちょうど貴方くらいの年の男の子が跨っていたんですよ」

ラドスは唐突に、少し前まで自身が責めていた子供の話をシオンに語り始める。

「お前…何を言って」

「その子はねぇ、本当にごく普通の子供でした。ただ、ちょっと家が貧乏で…パンを盗んだんですよ」

「パン…?」

(こいつ…こんな時に…)

「本来なら、店主に謝罪させた後は厳重注意をして帰宅させるのが基本なんですが…ついつい、その子があまりにも私好みの子供だったので…ちょっと連れ出して「拷問」しちゃったんですよ」

「なっ!」

「本当にかわいかったな…何度も何度も顔をグチャグチャにしながら私に許しを求めていましたよ。でも、私は責め続けました。それで…おっと、無駄話が過ぎましたね。拷問を始めましょう」

「このやろぉ…」

ラドスの奴は、遠回しにこの拷問がダーカンドラの情報を俺から聞き出すためのものでなく、只の趣味でやってるってことを言いたいのか、胸くそ悪い話を聞かせやがって…下衆野郎…畜生…

「ふふ、あの子も最初はそんな感じでしたよ…こうされるまではねっ!」

そうシオンに伝えると、ラドスはシオンが跨がされている三角木馬の横に設置された、なにやら怪しげな液体の詰まった小さな瓶に入るだけ指を突っ込み、ネトネトした液体を指に絡め取って行く。

そして、ある程度「それ」が指に絡みついたのを確認すると、その粘液の付着した指でシオンの胸元にある小さなピンク色の突起にいやらしく粘液を擦り付ける。

「ぐっ」

少し汗ばんだ身体に突然駆け抜けるひんやりとした感触に、身体をゾクっと反応させるシオン。

「……?…ひゃっ!な、何してんだよぉ!…ってか、触るな!」

正体不明の粘液を、グリグリとラドスの手によって両乳首に入念に擦り込まれていくシオン。しかも、ラドスは乳首に塗るだけでは飽き足らず、今度はシオンが制止するのを無視して股間の突起物にまで手を伸ばす。

「はぁ!やめぇ…くっ」

ラドスはスっとシオンの小振りな性器を摘み、乳首同様に入念に指先に残る粘液をシオン性器に擦りこむラドス。

コイツぅ…とんでもない変態だ。一体何を塗っているのかわかんねぇけど、どうせろくでも無いもんだろう…絶対に…

「私は子供の体を傷つけるのは嫌いでしてね、心の方は別ですけど…そうそう、昨日の夜はずっと独房の隅で震えていたとか…可愛い反応ですよ」
怪しげな粘液をシオンの身体にある目的箇所に塗り終わったラドスは、唐突にそんなことを言い出し、昨夜の脅し文句がフェイクだったとシオンを小馬鹿にするような口繰りで打ち明ける。

「気絶するまで鞭打ちも…傷口に塩とかも嘘か!俺をビビらせるために…くそぉ」

「まぁ、今から体験することが、必ずしもそれ以下とは限りませんよ?ふふふ」

シオンの反応に、不気味な笑みを浮かべながらそう言い返すラドス。

「?……んっ!ふぅん…うぅう…何だ?熱い…うぅん…熱いぃ!うぅ…」

と次の瞬間、何の前触れもなく突然「熱い」と言って苦しみ始めるシオン。どうやら今さっきラドスによって擦り込まれた粘液の効果がさっそく表れ始めたようだ。

熱い…変なのを塗られた所だけじゃなくて、体中が熱いぃ!野郎ぅ、マジで俺に何しやがったんだ…もがけば股間にどんどん木馬が食い込んでくるし、だからってジッとしてられねぇよぉ…

「ほぉ、さっそく効果が表れた様ですね」

もじもじと自由の利かない身体を震わすシオンを眺めながら、笑みを浮かべるラドス。

「お前ぇええぇ…何をぉ塗ったぁ…俺の胸とぉ…アレにぃ?」

「ちょっとした興奮剤ですよ。オチンチンがムズムズしてきたでしょう?」

そうラドスの奴に言われた瞬間。確かにチンコがムズムズしていると感じた。俺は、まさかと思って下腹部を除いてみると…なぜかチンコが勝手に大きくなり始めてやがる!普段はHなことを考えたりした時に大きくなるチンコが…こんな奴に責められて大きくなるなんて…スゲェー恥ずかしいし、それに…悔しい…

「そんな訳…そんな…あぁ!なんで!やぁ…やめぇ…おいっ!やめろぉ!」

身体の焼きつくような熱さは収まったものの、その代わりに湧き上がってくるなんともいえない感覚によって興奮状態に陥ってしまったシオンは、必死に自身の性器に向かって「勃起」するなと叫ぶ。だが、気にすればするほどムクムクとシオンの意思とは反比例して肥大化していく。そして、ついには皮の被った性器からピンク色の亀頭が飛び出した所で、やっと性器の勃起は止まった。

「いやいや、私は何もしていませんよ?貴方が勝手に勃たせているだけでしょう?…それにしても、貴方はいやらしい子供ですね。ちょっときっかけけがあればすぐに、どんな状況でも勃起してしまう…少しお仕置きが必要のようだ」

「何を勝手に言ってやがる!このへん…っあぁ!てめぇ!やぁ…んぁ!」

ラドスはシオンに言うだけ言うと、お仕置きと告げてシオンの勃起した性器の先端部分を
キュッと軽く摘む。そして、そのままバナナの皮を剥く様にしてシオンの性器に覆いかぶさっている皮をゆっくりとズリ下げていく。

「変態はお前の方だ。…暴れるなよ?痛い目にあいたくなければな」

突然ラドスの奴の雰囲気が変わった…でも、そんなこと…うぅ…もう訳わかんねぇよ……誰か…助けて…

屈辱的な格好で拘束され、挙句の果てに性器までオモチャにされてしまったシオン。その瞳からはポロポロと無意識に涙が零れ落ち、小柄な身体はいつの間にか流れ出た汗でびしょ濡れに…だが、ラドスの責めはシオンの状態などお構いなしに続けられる。

「くっ…んっうぅうぅ!はぁぁああぁ!」

ラドスはさらに、カリの部分が露出するまでシオンの性器の皮を剥いた後、その部分を何処からか取り出した二本の細い透明な糸を使ってグルッと巻き取り縛りあげる。そして、縛った性器を持ち上げる様にして糸をクッと引っ張り、なんと二本の糸の先をシオンの両乳首に結び付けた。

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「あぁぁ…くぁああぁあ…うぅ!」

薬によって限界まで感度を上げられた性器と乳首を糸で縛りあげられ、半パニック状態に陥るシオン。

「ふん、いい様だ。…ダーカンドラの少年将軍も私の手中に収まればオモチャ同然。これからいっぱい遊んでやるからな」

ラドスは不気味に微笑みながら満身創痍のシオンに向かってそう言うと、ツンっと性器と乳首の間に張られた二本の糸を指で弾く。その瞬間、シオンはまるで感電した人間の様に身体をビクンと跳ねらせ、大きな悲鳴の様な喘ぎ声を上げる。

「くぁ!あぁぁあぁあぁ!……さ、触んなぁ!」

「何?聞こえないな…ふふふ」

シオンの反応を楽しむようにして、そう言いながらもう一度同じ動作を繰り返すラドス。

「はぁあぁ!んぁああぁ!やめぇ…やめぇてぇ…」

ラドスの無慈悲な行為に再び身体を大きく震わせるシオン。

「やめてくださいご主人様だろ?ほらぁ、言ってみろよ!」

「やめぇ…それ以上ぅ…あぁぁ!」

テンションの上がったラドスは、その後も何度も何度も糸を弾き続け、その度に絶叫混じりの喘ぎ声を上げるシオン。

「お前はなぁ、既に捕虜でもなければ囚人でもないんだよ!この私の奴隷なんだ!オモチャなんだ!ふふふ…ははははっ!!」

「あぁ…くぁぁあぁ…んぁ!」

ランタンの灯りに照らされて映し出されるシオンの影は、まるでいつまでも消えない蝋燭の炎の様に三角木馬の上で不定期にユラユラと揺れていた…いつまでも…

少年の誇り 第4話 「訪問者」

薄暗い、レンガ造りの室内に響き渡る少年の声と鎖の擦れる音。その音をたちまち聞き取れば、そこで行われている行為の断片を、否応なしに容易に想像できるだろう…

「くぅ…んあっ!はぁぁああぁ!」

「そろそろイきたくなってきたと思うが、お前には後1~2日間程度そうしててもらうぞ」

依然として続けられているラドスの私的拷問に、その身を捧げさせられているシオン。
また、強制的に感度を上げられたシオンの性器と乳首は真っ赤に腫れあがり、性器の方からは立て続けに刺激され続けた事により、チョロチョロとガマン汁の様なものが噴出し始めていた。

「なんたって子供とはいえ、その歳で将軍だ。並みの子供も同じ扱いでは、いつまでたっても「バカ」なままだろうからな…」

既にシオンが満身創痍であると知っていながら、ラドスはまだまだ責めを止めないという言葉をシオンに向かって告げる。

「テメェ…絶対にぃ…殺してやるからな…」

一方、シオンは力無く頭を倒した状態から、瞳だけを鋭く尖らせてラドスを睨みつけ、途切れ途切れにラドスに向かって反抗の意を示す。

「なんだ?もっと弾いて欲しいのか?ほらっ」

ラドスに向かってシオンが抵抗すると、ラドスはそう言いながらシオンの性器と両乳首を結ぶ糸を摘み、先程の様に再び弾く。そして、その責めと同時にシオンはまたしてもビクンと身体を揺らし、大きな喘ぎ声を上げた。

「やぁめぇ!…んぁぁああぁ!っはぁああぁあぁ!」

「調教し甲斐のある子だ…実にすばらしい!精々、一生懸命私に逆らい続けてみせるんだな…チンチンをピクピクさせながら」

ヒクつき、絶え間なく汁を流し続けるシオンの性器を見下ろしながらそう言うラドス。その言葉に辱めを受けるシオンは、ギュッと拳を握りしめると同時に、何の抵抗も出来ない無力な自分を呪う様にして歯を強く噛みしめる。

「くぅ…」

こんなことが、一体いつまで続くんだ…自分で舌を噛んで死ぬ勇気も無い俺は…
…それなら、いっそラドスに忠誠を誓って…俺は…

これまでに味わったことのない恥辱と苦痛。その二つの刺激はすぐにシオンの幼い心を意図も容易く浸食してき、ダーカンドラの将軍であるというシオンの誇り高き自尊心は、既にズタズタに引き裂かれていた。

そんな時、不意に閉ざされた拷問室の扉が勢いよく何者かの手によって開かれる。



「ラドス様!大変です!」



ラドスの拷問室に現れたのは、ついさっきラドスに王宮監視をまかされていたロンドだった。慌てたそぶりに非常に切羽詰まった様な表情をしているロンドだが、ラドスはそんなことお構いなしにギッとロンドを睨みつける。

「ロンド!今が一体どんな時か…」

「で、ですが…一大事なのです!…小規模ではありますが、ダーカンドラの部隊がクフィリオス城に向かっております!それで、クノ様が対応を決めかねて…」

(ロイ…?)

理由は不明だが、クフィリオスにダーカンドラの部隊が向かっているというロンドの言葉に、ハッと反応して脳裏にロイの姿を浮かべるシオン。それと同時に無意識にその顔に笑みが戻る。

「そんな馬鹿な!…っ!シオン!貴様、同行者が居たのだな?」

このダーカンドラ部隊の動きが、すぐに囚われているシオン救出のためでは無いとさとったラドスは、シオン自身に同行者の有無について問い詰める。そして、シオンはラドスの質問に笑みを浮かべながらこう答えた…

「へへっ…だとしてもぉ…1日じゃ…戻るのは無理だ…バーカぁ…」

「コイツめぇ!」

冷静な状態であれば、聞く必要もない質問をシオンに行ったラドス。しかも、それを満身創痍のシオン自身に指摘され怒り、ギュッと陰部を拘束している糸を引っ張る。

「ぐぁあぁあぁあああぁあああぁ!」

荒々しい扱いによって性器と両乳首が締め付けられ、絶叫を上げるシオン。だが、ラドスは特にそれを楽しむでもなく、クフィリオスに接近しているダーカンドラの部隊の対応について、今後の考えを張り巡らせるのに必死だった。

「現状での開戦はマズイ…ダーカンドラに送った密偵達の知らせも聞かねばならぬのに…チッ、とりあえずクノの元に行くぞ」

「ハッ!」

ラドスは対応を待っているクノの元に向かうとロンドに告げると、シオンが跨らされている三角木馬の方に振り返り、ガチガチに拘束しているのにも関わらずシオンに大人しくしていろと念を押す。

「…シオン。すぐに戻ってくるから大人しくしていろ…逃げようなどと考えるなよ」

「…」

そして、ラドスとロンドは慌ただしくシオンを一人拷問室に残し、急ぎクノの元へ向かっていった。



支配者であるラドスが居なくなり、拷問室には束の間の沈黙が訪れる。しかし、その沈黙は長くは続くことは無かった…その訳は、囚われの身であるシオンが脱出の好機だと見計らったからである。


「はぁ、はぁ…逃げるなら今しか無い…どうにかして逃げないと…それで、ダーカンドラの部隊に合流すれば帰れる…くっ」

下手に動けば鋭角な三角木馬が身体に食い込み、緊縛された陰部が刺激を受けるが、シオンはそれを覚悟でジタバタと懸命に自由の利かない身体を暴れさせ、拘束から逃れようとした。

「くそぉ!こんな分厚い鎖引き裂けねぇよ…それに…んぁ!こっちもさっきからぁ…んはぁ!」

色々と脱出のために試みるシオンだが、やはり陰部の拘束からくる刺激に気力を根こそぎ奪われ、結局は何処の拘束も簡単には外すことが出来ずに終わり、シオンはガクッと頭を下に俯かせる。

「こんな恥ずかしい姿ぁ…これ以上は誰にも見られたくねぇ…んぁあぁ!」



シオンが無限快楽地獄で苦しんでいた頃、クフィリオス城の玉座ではダーカンドラの部隊に対しての処理方針を巡っての話し合いが行われ、ラドス主導の元に話し合いの決着が早々についていた。

「王様。では、ダーカンドラが敵対行為に及ばない場合はこのまま開戦はしないという趣旨でよろしいですね」

「致し方あるまい。今は戦う時では無いのだと皆が言うのじゃから…余としては宣戦布告を受け、黙っているのはガマンできんのだが」

そう言いながらラドスに向かって不貞腐れるクノ。

「今は恥辱に耐え、必ずや次の機会に奴らを…それと、今回は私がダーカンドラの代表と話し合い、一時的な倭寇をとりつけてまいります」

ダーカンドラ部隊との戦闘行為を何とか中止させることに成功したラドスは、今度はダーカンドラ側との交渉を一人で行うということを誰よりも早く言い出す。これは、先の親書騒ぎの際に偽りの報告を行ったことを、王を含めた他の者達に悟られないようにするためである。

「ふむ、余が至らぬばかりにソチに世話をかけてすまない。では、ダーカンドラとの話し合いはソチに一任するぞ」

「御意。…では、さっそく私は…」

なんとか思惑通りに事を運べ、ほっと胸を撫で下ろすラドス。

しかし、玉座から立ち去ろうとした瞬間。不意にクノに呼び止められた挙句、勝手に監禁して拷問を行っている「シオン」についてクノに尋ねられることに。

「おっと、忘れるところであった。ラドス、昨日捕らえた「シオン」をダーカンドラの連中に引き渡してやれ。交渉が有利に進むであろう」

「……はい。そのように…」

特に気にする様な話でなくてホッとするラドスだが、クノがシオンのことを気にかけていたとは予想外だったらしく、個人的に切迫した状況で目の上にタンコブが出来たという事態だろうか…



「ラドス様、あのガキを引き渡すんですかい?」

玉座から出るや否や、合流していたドリスにシオンの処遇について尋ねられるラドス。だが、その質問に答えたのはラドスでは無くロンドの方だった。

「ドリス。お前馬鹿か?そんなことをしたら、本当に倭寇を結ばざる負えなくなるぞ。大体、ダーカンドラが宣戦布告したという話自体が…」

「ロンド。お前は利口だが、少々口が軽すぎるぞ」

城内で「計画」についてロンドが語り始めようとした瞬間。ラドスはそう言ってロンドを黙らせる。

「あっ…す、すいません…以後はこのような…」

ラドスにクセを指摘された上に注意され、弁解するロンド。しかし、肝心のラドスにロンドの言葉は届いておらず、その代わりにラドスの心中はいつの間にか3人の眼前に迫っていたダーカンドラの人間に向けられていた。

「ふん、ダーカンドラの御一行が到着だ。さて、一体どんな奴が…っ!」

ぞろぞろとやってくる一団の中に、ラドスは見覚えのある人物が居たのか一瞬言葉を失う。さらに、なんと偶然にもその人物がラドスに向かって話しかけてきた。

「そのお姿、貴方がクフィリオス側の代表ですね?私はダーカンドラより参りました使節団の大使。ロイ・ドルドンナと申します」

ダーカンドラの軍師ロイ。それはシオンの同僚でもあり、ラドスが自身のコレクションに加えようと前々から狙っていた人物だ。これにはラドスも驚くと同時に、少し興奮した様子でロイの身体を舐めますように見つめる。

(この子が天才軍師の…欲しい!シオンと対にして拘束&調教したい!…しかし、使節団大使というのは?一体…)

「そうですよね。大使と言われても困りますよね?」

黙り込んだラドスに話しかけるロイ。それに対して、考え込んでいたラドスは慌てて言葉を返す。

「いえ、ロイ様の噂は…」

「あぁ、そういうことでは無くて…昨日、或いは数日前にも「大使」と名乗るものが、クフィリオスを訪れたと思いまして。それについては先程、城下町の警備兵と城門前の兵士に証言を…」

(しまった!先手を取られた!これではシオンの事で知らぬふりは…」

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