太陽の香り (東京マグニチュード8.0 より)
誰得+原作汚しなので、心が広い人だけスクロールして読んでください。
※設定は合わせていますが、細部の心情等は食い違っている点もあると思うのでご了承ください。
また、いつものエロ系の話しでもありません。
~太陽の香り~
2013年7月。高校受験を控えた3年時には不適切ということで、1年早まった修学旅行。でも、本気でさらに一流校を狙ってる生徒は多分来ないと思うけど…そうそう、行先は沖縄。パパとママと…そして悠貴と一緒に行った沖縄。
「はぁ、なんで沖縄かなぁ…まぁ、無難って言っちゃ無難だけどさぁ…」
緑色のバックを片手に持ち、友人達との会話を楽しみながら空港のロビー内を進む未来。しかし、内心ではこの修学旅行に少し気が乗らない様だ。その理由は、沖縄という地が1年前に死に別れた弟の悠貴と、4年前に家族で訪れた旅行先だったということが関係しているのだろう。
「あっ…」
空港の外に一歩踏み出した瞬間、常に湿気のある特質な沖縄の空気が未来の身体を包み込む。それに未来は表情をハッとさせ、思わずその場に立ち止まった。
確か、家族で来た時もこんな感じで…悠貴が私に…
「うわぁ、なんか東京の暑いと違うねー!」
「何が?」
「んー…ベトベタ!」
「はぁ?まぁ、確かに少しべたつく感じはあるけど、アンタのベトベタって表現は…」
悠貴とのやり取りが鮮明に蘇った。そういえば、あの日もこんな天気で…悠貴…
「未来?」
「あっ…」
ピクリとも動かなくなった未来を心配し、二人の友人が未来の身体を揺さぶりながら声をかける。
「もぉ、さっそく暑さにやられちゃったの?この程度でバテたら観光できないぞ~」
「…そ、そうだよね。まいったなぁー」
そう言いながら愛想笑いを浮かべる未来。
「どうかしたの?」
「いや、大丈夫!平気だよ!」
せっかくの修学旅行、私の一言で台無しにはしたくない。だから悠貴のことは言わずに、その場を笑って誤魔化した。でも、多分一人だったら泣いていたかも…
その後、未来達は待っていた観光バスに乗り込み、予め学校側の定める身内で来たなら絶対に立ち寄りそうにない微妙なチョイスの観光地をグルグルと回る。しかし、それが不幸中の幸いというべきか、家族で過去に訪れた場所に立ち寄ることは一度もなかった。そして、予定の場所を全てめぐり終わると、未来達を乗せたバスは初日の宿泊地のホテルと向かう。
(いい加減にしないと、悠貴に怒られちゃうかな…)
宿泊地に向かうバスの中、窓際に座る未来は虚ろな表情で黄金色に染まった夕暮れの空を眺めながら、依然として悠貴のことを脳裏に思い浮かべる。
案の定、始めから気乗りしない沖縄旅行に加え、空港でのフラッシュバックですっかり滅入ってしまった未来は、表面上は明るく振る舞っていたものの内心では心から修学旅行を楽しめず、出来ればさっさと東京に帰りたいという心情に陥っていた。
「ここってさぁ、なんか出そうじゃない?」
二日目は本島から離島し、早朝から別の島の海辺にある民宿に移動していた未来達。前日のホテルとは違い、海が目の前と立地はいいのだが、少し薄汚い印象のある慣れない民宿に同室の友人の一人が何かでそうだと言い出す。
「出るって?家のおじいちゃん家はもっとなんか出そうだよ」
そう笑って言い返えすもう一人の友人。
「Gよ!G!」
「G?」
「ちょっとやめてよ、本当に出たらどうするのよー」
窓辺にうつ伏せになり、そこから広がる風景を眺めながら二人の会話に割って入る未来。
「未来、Gって?」
「…っ!!」
……えっ…今のって……そんな……悠貴?
ふと、見知らぬ街の一角に目を落とした時、視界に入った一人の少年の姿。その瞬間に未来の全身に電撃のようなモノが駆け巡り、未来にはその少年が去年の第二次関東大震災で失ってしまった弟の悠貴そのものに写った。未来はしばし無言でその少年を凝視すると、バッとその場に立ちあがって自室を後にしようとする。
「未来?ちょ、何処行くの!これから3人で…」
「ごめん、先に行ってて!後から追いかけるから!」
急に部屋から立ち去ろうとする未来に対し、何事かという様な表情で未来を呼びとめる友人達。しかし、未来はその友人達の方に振り返ろうともせずに簡単な謝罪だけ残して足早に部屋を後にした。
「未来!」
残された友人達は、突然の出来事に状況が理解できずお互いにポカーンとした表情で顔を向き合わせる。
悠貴?そんな…でも、あれは確かに…私が見たのは間違い無く悠貴だ。私が見間違えるハズがない!だって、だって…あれは悠貴なんだもん!
慣れないサンダルで我武者羅に見知らぬ道路を駆け抜ける未来。傍から見れば既に死んでいる悠貴の面影を見せる少年を探し歩いているという痛々しいとしか思えない光景なのだが、沖縄にやって来てから心の底に封じてあった、悠貴への向けるべき先も無い思いが溢れだしていた未来には、些細な刺激でも感情を爆発させる切っ掛けになっていた様だ。
「はぁ、はぁ…どこ…何処に居るの悠貴…」
必死に少年を追い続ける未来。やがて、少年がついさっき歩いていた場所までたどり着くと、そこからさらに悠貴の名を口にしながら走り始める。
「待って!ねぇ!悠貴!悠貴ぃ!」
何処にも居ない…さっきまでここに居たのに!悠貴が居たのに!なんで…なんで…
「はぁ、はぁ…待って…悠貴」
民宿からどれほど走ってきたのか分からなくなる様な場所まできて、ようやく力尽きた未来。ジリジリと太陽の光が照らす道路の上で、小声で悠貴の名を口走りながら呆然と立ち尽くす。
「悠貴…」
「どうかしたの?お姉ちゃん?」
「!」
(……ゆ、悠貴なの?)
ふと、背後からする声。疲れ果てて朦朧とする意識の中、微かな望みをかけて声のする方に振り向く未来。そして振り返った眼前に居たのは…
「っ!…悠貴………じゃない……」
未来の目の前に居る少年は、確かに体格などどことなく雰囲気が悠貴に似ているものの、未来の知っている悠貴とはあきらかに別人だった。未来は追いかけていた少年が悠貴でないことをその目で確認するや否や、バタリとその場に力無く座り込む。
悠貴じゃなかった…当然だよね…でも、確かめずには居られなかった…沖縄に来てからずっと胸が苦しかった…でも、何も変わってないのになんだか少しスッとした気がする。この子が少し悠貴に似てるからかな…喋り方とか。
「えっ?」
急にその場に座り込むや否や、自分の方を見ながら笑みを浮かべる未来に困った顔を浮かべながら少し驚く少年。
「ご、ごめんね。急に倒れたりしちゃって」
しかし、直後に見せた未来の笑顔に少年は安心したのか、未来を気遣って話しかけてきた。
「ねぇ、誰か探してるの?」
「それは…」
少年の問いに言葉を詰まらせる未来。
「悠貴って叫んでたよね。お姉ちゃんの友達?」
「弟なの…」
「そうなんだ。…あっ、そうだ!僕も一緒に探してあげるよ!!僕ね、結構この島のこと詳しいんだよ!」
未来から悠貴の話しを聞くや否や、自分も一緒に悠貴を探すと言い出す少年。突然の少年の申し出に未来は困惑する。
「えっ、それは…」
「悠貴くーん!悠貴くーん!」
未来が返答に困っていると、突然少年は未来を残して走り出す。そして、悠貴の名前をいきなり叫び始めた。
「あっ、待って!違うの…待って!」
それに驚いた未来は、急いで少年が悠貴の名を叫ぶのを止めさせようと少年の後をフラフラになりながらも追い始める。
子供ってみんなこんな感じなのかな…それともやっぱり悠貴に似てるのかな。
先を行く少年の背中に悠貴の面影を再び感じた未来。しかし、先程の様にとりみだす事も無く冷静に前を走る少年を呼びとめながら追いかけた。
「悠貴くーん!悠貴くーん!」
「待ちなさいってば!…もぉ、止まりなさぁーいっ!!」
「!!」
未来が大声でそう叫んだ瞬間、少年の小さな身体がビクンと震え、すぐさま少年の動きが完全に止まった。そして、少年はそっと未来の方に振り返る。
「はぁ、はぁ…」
「探さないの?さっきはすごく急いでたのにぃ…変なの」
息を切らしながら追いついてきた未来に対し、また困った様な顔をしてそう問いかける少年。
「はぁ、はぁ…それは………そ、そうだ、この辺で一番近いバス亭って何処にあるか知ってる?この辺に詳しんでしょう?」
悠貴の話題をズラすと共に、友人との約束のことを思い出した未来は、友人達が先に向かっているハズの施設に向かうべく、地理に詳しいという少年にバス亭の場所を尋ねる。
「バス?それならこの先の海岸が近いと思うよ」
「ありがとう。みんなと合流しなきゃ…迷惑かけちゃってゴメンね!じゃ…」
そう言って少年に別れを告げる未来。しかし、去り際に少年が未来に向かってこう言う。
「お姉ちゃん、あのね…バス、しばらく来ないよ」
「へっ?」
少年の言葉に思わず凍りつく未来。
「2時間に一回だけ来るんだ。もう行っちゃったと思うよ」
「それ本当なの!?…ヤバイ…どうしよう」
先に行っててなんて言っちゃったけど、2時間もバスが来ないなんて…
2時間に1本だけの運行だと少年に聞き、思い込みの勘違いで民宿を飛び出した事を後悔する未来。そんな落ち込む未来に少年が再び問いかけてきた。
「悠貴くん、遠くに居るの?」
「えっ、まぁ…」
理由は分からないが、どうにも執拗に悠貴のことについて尋ねてくる少年。未来は再び曖昧な返事を返す。
「ふぅ~ん。じゃ、僕そろそろ行くね」
「えっ…どこに行くの?」
「えっ?…海岸だよ」
「……お姉ちゃんも一緒に行っていいかな?」
思わず呼びとめてそう言ってしまった私。いくら次のバスが来るまで暇だからって言っても、なんで…出来ればもう少しだけ一緒に居たかったのかな…この子は悠貴じゃないのに…悠貴じゃ…
「うん!いいよ!一緒に行こう!!」
「へっ…ありがとう…」
未来の問いに思いのほかあっさりと万弁の笑みを浮かべながら了承する少年。どうやら少年も未来と同様に時間を余していた様だ。
「そういえば、君の名前は何ていうの?…私は小野沢 未来」
少年と共に道路を歩く未来が、少年に向かって遅れていた自己紹介をする。すると、段差の上を歩っていた少年はその場で立ち止まり、未来に向かって自己紹介を始めた。
「未来お姉ちゃんか…僕はユウタ。西川 悠太だよ!」
「悠太くんかぁ、いい名前だね」
悠太の元気な自己紹介に笑顔でそう言い返す未来。悠太も自身の名前が褒められてうれしいのか、ニッコリとほほ笑んで未来にお礼を言う。
「ありがとう!」
ホント、人懐っこい所も悠貴そっくりだ…そういえば、真理さんと悠貴もこんな感じだったっけ…って、あんまりダブらせちゃ駄目だ…この子は悠太くん。悠貴じゃないんだから…
しばらく道沿いに進むと、悠太の言った通り並木道のある海岸が見えてきた。未来は海岸までの道中、チラッと辺りを見渡しながらバス亭の位置を確認して先に進む。
「悠太くん。少しあそこにある木陰のベンチで休まない?私、少し疲れちゃって…あぁ、でも先にいってていいよ。すぐに追いかけるから」
並木道に入り、砂浜まであと少しと言うところで未来が悠太に少し先に見える木陰のベンチ休まないかと提案を持ちかける。どうやら、先程の全力疾走でいよいよ体力が限界を迎えたようだ。加えて朝からギラギラと降り注ぐ太陽の光にもやられてしまったらしい。
「うん、休もう!…お姉ちゃん大丈夫?」
未来の体調を気にかける悠太。てっきり、ついさっき知り合ったばかりの自分のことなど放って置いて、先に行ってしまうと思っていた未来だが、予想外の悠太の気づかいにまたしても無意識に悠貴の面影を見出してしまっていた。
「大丈夫だよ。でも、ちょっとこの気候が慣れなくってさぁ」
度々、意味も無く私の方に顔を向けてニコニコほほ笑む悠太くん。悠太くんとこうしてると、やっぱり悠貴のことを思い出さずにはいられない…でも、だからってどうなる訳じゃないけど…
「はぁ、それにしても暑い…みんなどうしてるかな。あっ、メールだ…全然気が付かなかった」
徐に携帯をポッケから取り出す未来。思い入れがあるのか、未来の携帯端末は当時のものそのものであり、さらに相変わらずエリマキカエルのクアンパのストラップもプラプラと未来の携帯にぶら下がっている。
「お昼までには合流したいなぁ…」
友人からのメールを受信に気が付いた未来は、慣れた手つきでカチカチと返信のメールを打ち始めた。
「…」
未来の隣でその様子を物珍しそうに眺める悠太。また、未来もすぐにその悠太の視線に気がついて携帯を弄る手を止める。
「どうしたの?」
「誰とメールしてるの?」
「あぁ、友達とね…いきなり出てきちゃったからさぁ…カンカンだよ」
そう言って、友人達からのメールに返信するために再び携帯をカチカチと弄り始める未来。
「いいなぁ。僕も携帯欲しかったなぁ…」
「持ってないの、悠太くん?…お友達も?」
今時、携帯も持っていないという悠太に珍しいと言わんばかりの反応をする未来。
しかし、思い返せば悠貴も携帯を持っていなかった事を思い出す。
そういえば、悠貴も携帯欲しいって…たくさんメールするって…
「携帯は10歳になったらパパが買ってくれるって!でも、僕ね…今はメールとかする友達がいないんだ」
さり気無く友達が居ないという悠太の言葉に、思わず表情を曇らせて携帯を動かす手を止める未来。
「えっ、いないって…誰かに虐められてるの?」
「そうじゃなくて、島に誰もいないんだ…」
悠太の誰もいないという発言に余計困惑する未来。
「そんな、だって学校は?」
「今は行ってない。勉強は「つうしんこうざ」っていうのをやってるんだ」
「あぁ、なんか最近流行ってるよね。新しい学習のなんたらとかで…」
随分前に見たニュース番組の特集を思い出す未来。それは、第二次関東大震災以降にPTSD等で登校出来なくなってしまった多くの児童、又は以前から問題視されていた不登校児童に対する処置として生まれた、画期的な新しい学習指導のガイドラインだった。
「でも、昔はいたんだよ。パパのお仕事で島に来るまでは…」
最初に合った時からそうだと思ってたけど、やっぱり悠太くんはこの島に元々住んでいた子供じゃなかったんだ。親の都合で引っ越しなんて、なんか少しかわいそうだな。
父親の仕事の都合で学校の無い島に引っ越してきたことを知り、そのことを気の毒に感じる未来。
「…悠太くん。お父さんのこと嫌い?」
「そんなことないよ!だけど…昔住んでたとこには戻りたい」
未来の問をすぐに否定しながらも、少し落ち込んだ様子で俯きながらそう答える悠太。
どうやら、父親の振る舞いについては多少の不満があるようだ。
「…け、けどさぁ。ここって気候もイイ感じだし、立地条件はいいんじゃない?」
落ち込む悠太に、なんとなく話しの路線をいい方向にもっていこうとする未来は、辺りを見渡していい所だと悠太に告げる。
「りっち?」
「あぁー住むには良い所ってこと」
「確かに、最初は海とか山が近くに合ってすごいなーって思ったけど、もう飽きちゃったよ…」
「そうだよね…旅行で来てる訳じゃないしね」
もっともな悠太の切り返しに凹む未来。すると、今度は悠太の方が未来に質問を問いかけてきた。しかも、その質問は再び未来の弟の悠貴に関する話し。どうやら、悠太はおそらく同年代だと思える悠貴に先程の理由からか関心があるようだ。
「そういえば、悠貴くん探しに行かなくていいの?ここには居ないみたいだよ」
「うん。でもね、悠貴はすごーく遠い所に居るから会いに行けないんだ」
悠太の質問に、どこか遠くを眺めながらそう答える未来。
「それって北海道とか?ここから一番遠いんだよってパパが言ってたんだ!」
「もっと遠いの…」
「じゃ、アメリカだ!ずーっと、ずぅーっと!先にある別の国なんだよ!」
「もっと、かな…」
悠太くんには悠貴が死んじゃってるなんて言えない。というか、私がその話を口に出したくないだけかもしれないけど…いや、多分そうだ…
「えぇー!それじゃ会えないよー!どうするの、お姉ちゃん?」
知りうる遠方を全て答えた悠太は困った様な、少し悲しそうにも見える顔をして未来を見つめる。
「でもね、いつも側に居てくれるって言ってくれたの…それに、いつかまた会えるから…」
そうだよね…悠貴。
悠太からは見えないが、この時未来は少し涙目になっていた。しかし、全てを理解せずともなんとなく未来の思いを悟った悠太は、ベンチから立ち上がって未来に提案を告げる。
「お姉ちゃん?………そうだ!悠貴くん探さないなら、僕と貝殻探そうよ!」
「貝殻?」
「うん!たまーに凄く綺麗なのがあるんだよ!僕ねぇ、いっぱい集めてママにプレゼントするんだぁ!」
万弁の笑みを浮かべながらそう言う悠太。その一点の曇りも無い、澄み切った青空の様な悠太の態度に少し滅入っていた未来の気分も晴れ、二人は改めて貝殻を探しに海岸にむかうことになった。
「へぇーそうなんだ。それじゃ、バスが来るまで一緒に探そうか」
「うん!」
「凄い…綺麗…」
悠太と共に未来が訪れた海岸。そこにはひっそりと人目に付かない様な小さな砂浜があり、その砂浜にうちあげられている無数の貝殻は、太陽の光に反射して七色の輝きを放つ。また、その神秘的な光景はまるで虹で出来た絨毯の様だった。
「近所の人に教えてもらったんだ。ここは「あなば」って言うらしいよ」
砂浜を目の前にして、少し自慢げな口調でそう言う悠太。
「確かに、ガイドにも載って無かったかも…」
キョロキョロと辺りを見渡しながらそう呟く未来。確かにそこは観光ガイドにも載っておらず、正真正銘の穴場スポットだった。また、悠太の様な子供や観光客が周りにいなこともあって、七色に輝く砂浜は未来と悠太の貸し切り状態だ。
「行こう!」
そう言って未来の手を引っ張る悠太。それに未来は微笑みながら答える。
時折押し寄せる波の音と、心地よい潮風。人気のない海岸と人々の生活音が届かないこの場所は、未来にまるで別世界に居る様な錯覚を与える。
「ここの貝殻たくさん集めると、願いが叶うんだって」
ふと、未来に背を向けながらお目当ての貝殻を探していた悠太がそう呟く。
「へぇー。悠太くんは何かお願いごとでもあるの?」
未来も砂浜と睨めっこしながら、悠太に問いかける。すると、悠太はチラッと未来の方に振り返り、ニカっと笑ってこう答えた。
「うん。ママの病気が早く治りますようにってお願い!あと、ちょっとお願い余ったら友達も欲しい…それと、パパにお休みもあげたい!」
「……」
悠太くんの口から漏れた複数の願い。それは、特別な願いでも無なければ求め過ぎた願いでも無く、普通の人は全部じゃないけど大体もっている様な、一般の人並みの生活も求めるささやかな願いだった。
未来は一瞬黙り込んだ後、悠太に向かってニコっと万弁の笑みを浮かべてこう言った。
「そっか、それじゃたっくさ~ん集めないとね!」
「うん!」
元気な返事で答えると、再び貝殻を探し始める悠太。
「でも、お母さんの病気って大変なの?」
神頼みの様なことをしてまでも母親の病気の完治を願う悠太に、それほど重病なのかと思った未来は、さり気無く悠太に母親の様子を聞きだす。
「うーん…よくわかんない…けど、ずぅーっと病院にいるんだよ。パパは大丈夫って言ってたけど」
重症なんだ…悠太くんのお母さん。ちゃんと治るといいなぁ…
家族を失った痛みを知っている未来は、それが他人事に思えなかったのか、自分のことのように心から悠太の母親が病を克服することを心の中でそっと願う。
「…そうなんだ。早く治るといいね」
「だから貝殻集めてるんだよー。お姉ちゃん信じてないの?」
少しムッとした様なトーンで答える悠太。どうやら、貝殻を集めても願いは叶わないと未来が思っていると受け取った様だ。しかし、現に未来は悠太の言っている事を信じていた訳ではない。焦った未来は慌ててそれを悠太に否定する。
「ごめん、ごめん。そう言うことじゃないの!さぁ、いっぱい集めて悠太くんのお母さんの病気治そう!」
「えっ、お姉ちゃんは悠貴くんのために集めなよ!会いたいんでしょ?それにね、自分で集めないとダメなんだよー」
「…」
子供だなぁと思う時もあれば、やっぱり少し大人びてる悠太くん。貝殻集めに誘ってくれたのも、もしかしたらなんだかんだで落ち込んでた私のためでもあったのかもしれない…
「悠太くん…そうだね。私も悠貴のために集めてみるね」
悠太の気づかいに少し未来は涙目になりながらも、そう言って再び貝殻を探し始める未来。
その後も二人は、誰も居ない七色に輝く砂浜の上で他愛も無い会話繰り返しながら貝殻探しに勤しむ。そして、あっという間の二時間も過ぎて貝殻探しも一息ついた頃、未来の待っていたバスが並木道の奥からやってきた。
「ヤバイ!バスが…悠太くん、付き合ってくれてありがとう!お姉ちゃんそろそろ行かないと…」
「お姉ちゃん?」
静かな海岸沿いに響き渡る独特のエンジン音。停留所まであと少しの位置まで来ていたバスを見つけた未来は、夢中で貝殻を探していた悠太に一声別れを告げ、咄嗟に持ち出していた小さなポーチに拾った貝殻を入れると、急いで先程確認した停留所に向かって走り出す。
「はぁ、はぁ…これを逃したらみんなと合流出来なくなっちゃう」
未来は全速力で砂浜を駆け上がり、並木道の停留所に飛び込むようにして滑り込む。すると、未来の姿を確認した運転手が停留所に止まるためにバスの速度を緩める。とりあえずこれで一安心だろう。未来ははぁはぁ息を切らしながら胸をなでおろす。
「…ふぅ、なんとか間に合った…」
バスがプシューとい排気音を出しながら停車し、前の自動ドアがガラリと音を立てて未来を迎え入れる。未来は顔を俯かせながらバスに乗り込み、ポーチから電子カードを取り出し料金箱にそれをあてる。
「あぁー疲れた…」
「お姉ちゃんー!!」
背後に響く子供の声。その聞き覚えのある声に未来はハッとして背後を振り返る。すると、砂浜の方から悠太が走ってくるのが見えた。
「…?悠太くん!?」
「はぁ、はぁ…こ、これ…」
全速力で走ってきた悠太は、バスにたどり着くころには少し息が荒かったが、悠太は未来に先程まで集めていた虹色の綺麗な貝殻を数枚差し出す。
「でも、これは悠太くんが集めた貝殻じゃ…お母さんのために…」
一度は勢いで受け取った貝殻だが、未来はそう言って貝殻を悠太に返そうとする。だが、悠太は首を横に振ってそれを拒むと、ニッコリと再び微笑んでこう言った。
「いいよ、お姉ちゃんに上げる!それだけあれば悠貴くんにきっと会えると思うし!」
なんで私なんかのために…自分だってお母さんのこと助けたいって思ってるのに…
この時、私の今まで我慢していた感情が再び爆発した。もう、さっきみたく自分では流れ出る涙を抑えることなんて出来なかった。
「悠太くん…でも…これじゃインチキだよぉ…」
ポロポロと涙をながしながら震えた声でそう呟く未来。
「大丈夫。大丈夫だから…」
「えっ…」
そう悠太が呟いた瞬間、悠太はバスの運転手に向かって一礼する。すると、二人のやり取りを見守っていたバスの運転手が悠太の「もういいですよ」という合図に首を縦に振る。そして次の瞬間バスの扉が閉まり、ゆっくりと未来を乗せたバスは動き出した。
「悠太くん……」
未来は、停留所に立って未来に向かって笑顔でブンブンと手を振る悠太を、まるで追いかける様にして無人のバスの中を移動し、後部座席の窓から自身も手を振って答える。
と、次の瞬間。ふと目に付いた停留所の少し奥にあるさっき二人が休憩がてらに座っていたベンチに、見覚えのある人物の姿が見える。
「っ!!…うそ…ゆ、悠貴?」
涙で霞んだ瞳に映る人影。でも、私にはそれがハッキリ悠貴だって分かった。悠貴はこっちを向いて悠太くんに負けないくらいの笑顔で笑うと、再びスッとその姿を消していく。それは本当に一瞬のことだったけど、あれは確かに悠貴だ…
「ありがとう…ちゃんと会えたよ…ありがとう…」
未来は悠太から受け取った貝殻をギュッと胸元で抱きしめてそう呟きながら、どんどん小さくなっていく悠太にその姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
この時、後部座席から未来が見た悠貴は幻だったのかもしれないが、その姿は未来の脳裏に決して色褪せない記憶として刻まれたのだろう。
消して十分に満喫できた修学旅行でもなかったが、自宅に帰宅した未来の顔に後悔の色は出ておらず、寧ろ行って良かったという様な顔つきだった。
「未来、その貝殻どうしたの?子供じゃあるまいし…」
荷物やお土産の整理をしていた未来の部屋に訪れた未来の母親が、机の上に置かれた数枚の貝殻を目にしてそう呟く。
「ちょっとね…悠貴にあげようと思って」
それを聞いた母親はハッとした表情をみせ、置いてあった貝殻を一枚手に取りこう言う。
「ふーん……綺麗な貝殻じゃない。…悠貴もきっと喜ぶと思うわ。…ありがとね、未来」
「うん…」
全開の窓から、ゆっくり私を包み込むようにして流れ込む初夏の心地いい風。このまま少し、ベッドで眠りたくなるような心地よさだ…
これは、私が修学旅行先で体験した、ちょっと切なくて不思議な出来事の話。
※設定は合わせていますが、細部の心情等は食い違っている点もあると思うのでご了承ください。
また、いつものエロ系の話しでもありません。
~太陽の香り~
2013年7月。高校受験を控えた3年時には不適切ということで、1年早まった修学旅行。でも、本気でさらに一流校を狙ってる生徒は多分来ないと思うけど…そうそう、行先は沖縄。パパとママと…そして悠貴と一緒に行った沖縄。
「はぁ、なんで沖縄かなぁ…まぁ、無難って言っちゃ無難だけどさぁ…」
緑色のバックを片手に持ち、友人達との会話を楽しみながら空港のロビー内を進む未来。しかし、内心ではこの修学旅行に少し気が乗らない様だ。その理由は、沖縄という地が1年前に死に別れた弟の悠貴と、4年前に家族で訪れた旅行先だったということが関係しているのだろう。
「あっ…」
空港の外に一歩踏み出した瞬間、常に湿気のある特質な沖縄の空気が未来の身体を包み込む。それに未来は表情をハッとさせ、思わずその場に立ち止まった。
確か、家族で来た時もこんな感じで…悠貴が私に…
「うわぁ、なんか東京の暑いと違うねー!」
「何が?」
「んー…ベトベタ!」
「はぁ?まぁ、確かに少しべたつく感じはあるけど、アンタのベトベタって表現は…」
悠貴とのやり取りが鮮明に蘇った。そういえば、あの日もこんな天気で…悠貴…
「未来?」
「あっ…」
ピクリとも動かなくなった未来を心配し、二人の友人が未来の身体を揺さぶりながら声をかける。
「もぉ、さっそく暑さにやられちゃったの?この程度でバテたら観光できないぞ~」
「…そ、そうだよね。まいったなぁー」
そう言いながら愛想笑いを浮かべる未来。
「どうかしたの?」
「いや、大丈夫!平気だよ!」
せっかくの修学旅行、私の一言で台無しにはしたくない。だから悠貴のことは言わずに、その場を笑って誤魔化した。でも、多分一人だったら泣いていたかも…
その後、未来達は待っていた観光バスに乗り込み、予め学校側の定める身内で来たなら絶対に立ち寄りそうにない微妙なチョイスの観光地をグルグルと回る。しかし、それが不幸中の幸いというべきか、家族で過去に訪れた場所に立ち寄ることは一度もなかった。そして、予定の場所を全てめぐり終わると、未来達を乗せたバスは初日の宿泊地のホテルと向かう。
(いい加減にしないと、悠貴に怒られちゃうかな…)
宿泊地に向かうバスの中、窓際に座る未来は虚ろな表情で黄金色に染まった夕暮れの空を眺めながら、依然として悠貴のことを脳裏に思い浮かべる。
案の定、始めから気乗りしない沖縄旅行に加え、空港でのフラッシュバックですっかり滅入ってしまった未来は、表面上は明るく振る舞っていたものの内心では心から修学旅行を楽しめず、出来ればさっさと東京に帰りたいという心情に陥っていた。
「ここってさぁ、なんか出そうじゃない?」
二日目は本島から離島し、早朝から別の島の海辺にある民宿に移動していた未来達。前日のホテルとは違い、海が目の前と立地はいいのだが、少し薄汚い印象のある慣れない民宿に同室の友人の一人が何かでそうだと言い出す。
「出るって?家のおじいちゃん家はもっとなんか出そうだよ」
そう笑って言い返えすもう一人の友人。
「Gよ!G!」
「G?」
「ちょっとやめてよ、本当に出たらどうするのよー」
窓辺にうつ伏せになり、そこから広がる風景を眺めながら二人の会話に割って入る未来。
「未来、Gって?」
「…っ!!」
……えっ…今のって……そんな……悠貴?
ふと、見知らぬ街の一角に目を落とした時、視界に入った一人の少年の姿。その瞬間に未来の全身に電撃のようなモノが駆け巡り、未来にはその少年が去年の第二次関東大震災で失ってしまった弟の悠貴そのものに写った。未来はしばし無言でその少年を凝視すると、バッとその場に立ちあがって自室を後にしようとする。
「未来?ちょ、何処行くの!これから3人で…」
「ごめん、先に行ってて!後から追いかけるから!」
急に部屋から立ち去ろうとする未来に対し、何事かという様な表情で未来を呼びとめる友人達。しかし、未来はその友人達の方に振り返ろうともせずに簡単な謝罪だけ残して足早に部屋を後にした。
「未来!」
残された友人達は、突然の出来事に状況が理解できずお互いにポカーンとした表情で顔を向き合わせる。
悠貴?そんな…でも、あれは確かに…私が見たのは間違い無く悠貴だ。私が見間違えるハズがない!だって、だって…あれは悠貴なんだもん!
慣れないサンダルで我武者羅に見知らぬ道路を駆け抜ける未来。傍から見れば既に死んでいる悠貴の面影を見せる少年を探し歩いているという痛々しいとしか思えない光景なのだが、沖縄にやって来てから心の底に封じてあった、悠貴への向けるべき先も無い思いが溢れだしていた未来には、些細な刺激でも感情を爆発させる切っ掛けになっていた様だ。
「はぁ、はぁ…どこ…何処に居るの悠貴…」
必死に少年を追い続ける未来。やがて、少年がついさっき歩いていた場所までたどり着くと、そこからさらに悠貴の名を口にしながら走り始める。
「待って!ねぇ!悠貴!悠貴ぃ!」
何処にも居ない…さっきまでここに居たのに!悠貴が居たのに!なんで…なんで…
「はぁ、はぁ…待って…悠貴」
民宿からどれほど走ってきたのか分からなくなる様な場所まできて、ようやく力尽きた未来。ジリジリと太陽の光が照らす道路の上で、小声で悠貴の名を口走りながら呆然と立ち尽くす。
「悠貴…」
「どうかしたの?お姉ちゃん?」
「!」
(……ゆ、悠貴なの?)
ふと、背後からする声。疲れ果てて朦朧とする意識の中、微かな望みをかけて声のする方に振り向く未来。そして振り返った眼前に居たのは…
「っ!…悠貴………じゃない……」
未来の目の前に居る少年は、確かに体格などどことなく雰囲気が悠貴に似ているものの、未来の知っている悠貴とはあきらかに別人だった。未来は追いかけていた少年が悠貴でないことをその目で確認するや否や、バタリとその場に力無く座り込む。
悠貴じゃなかった…当然だよね…でも、確かめずには居られなかった…沖縄に来てからずっと胸が苦しかった…でも、何も変わってないのになんだか少しスッとした気がする。この子が少し悠貴に似てるからかな…喋り方とか。
「えっ?」
急にその場に座り込むや否や、自分の方を見ながら笑みを浮かべる未来に困った顔を浮かべながら少し驚く少年。
「ご、ごめんね。急に倒れたりしちゃって」
しかし、直後に見せた未来の笑顔に少年は安心したのか、未来を気遣って話しかけてきた。
「ねぇ、誰か探してるの?」
「それは…」
少年の問いに言葉を詰まらせる未来。
「悠貴って叫んでたよね。お姉ちゃんの友達?」
「弟なの…」
「そうなんだ。…あっ、そうだ!僕も一緒に探してあげるよ!!僕ね、結構この島のこと詳しいんだよ!」
未来から悠貴の話しを聞くや否や、自分も一緒に悠貴を探すと言い出す少年。突然の少年の申し出に未来は困惑する。
「えっ、それは…」
「悠貴くーん!悠貴くーん!」
未来が返答に困っていると、突然少年は未来を残して走り出す。そして、悠貴の名前をいきなり叫び始めた。
「あっ、待って!違うの…待って!」
それに驚いた未来は、急いで少年が悠貴の名を叫ぶのを止めさせようと少年の後をフラフラになりながらも追い始める。
子供ってみんなこんな感じなのかな…それともやっぱり悠貴に似てるのかな。
先を行く少年の背中に悠貴の面影を再び感じた未来。しかし、先程の様にとりみだす事も無く冷静に前を走る少年を呼びとめながら追いかけた。
「悠貴くーん!悠貴くーん!」
「待ちなさいってば!…もぉ、止まりなさぁーいっ!!」
「!!」
未来が大声でそう叫んだ瞬間、少年の小さな身体がビクンと震え、すぐさま少年の動きが完全に止まった。そして、少年はそっと未来の方に振り返る。
「はぁ、はぁ…」
「探さないの?さっきはすごく急いでたのにぃ…変なの」
息を切らしながら追いついてきた未来に対し、また困った様な顔をしてそう問いかける少年。
「はぁ、はぁ…それは………そ、そうだ、この辺で一番近いバス亭って何処にあるか知ってる?この辺に詳しんでしょう?」
悠貴の話題をズラすと共に、友人との約束のことを思い出した未来は、友人達が先に向かっているハズの施設に向かうべく、地理に詳しいという少年にバス亭の場所を尋ねる。
「バス?それならこの先の海岸が近いと思うよ」
「ありがとう。みんなと合流しなきゃ…迷惑かけちゃってゴメンね!じゃ…」
そう言って少年に別れを告げる未来。しかし、去り際に少年が未来に向かってこう言う。
「お姉ちゃん、あのね…バス、しばらく来ないよ」
「へっ?」
少年の言葉に思わず凍りつく未来。
「2時間に一回だけ来るんだ。もう行っちゃったと思うよ」
「それ本当なの!?…ヤバイ…どうしよう」
先に行っててなんて言っちゃったけど、2時間もバスが来ないなんて…
2時間に1本だけの運行だと少年に聞き、思い込みの勘違いで民宿を飛び出した事を後悔する未来。そんな落ち込む未来に少年が再び問いかけてきた。
「悠貴くん、遠くに居るの?」
「えっ、まぁ…」
理由は分からないが、どうにも執拗に悠貴のことについて尋ねてくる少年。未来は再び曖昧な返事を返す。
「ふぅ~ん。じゃ、僕そろそろ行くね」
「えっ…どこに行くの?」
「えっ?…海岸だよ」
「……お姉ちゃんも一緒に行っていいかな?」
思わず呼びとめてそう言ってしまった私。いくら次のバスが来るまで暇だからって言っても、なんで…出来ればもう少しだけ一緒に居たかったのかな…この子は悠貴じゃないのに…悠貴じゃ…
「うん!いいよ!一緒に行こう!!」
「へっ…ありがとう…」
未来の問いに思いのほかあっさりと万弁の笑みを浮かべながら了承する少年。どうやら少年も未来と同様に時間を余していた様だ。
「そういえば、君の名前は何ていうの?…私は小野沢 未来」
少年と共に道路を歩く未来が、少年に向かって遅れていた自己紹介をする。すると、段差の上を歩っていた少年はその場で立ち止まり、未来に向かって自己紹介を始めた。
「未来お姉ちゃんか…僕はユウタ。西川 悠太だよ!」
「悠太くんかぁ、いい名前だね」
悠太の元気な自己紹介に笑顔でそう言い返す未来。悠太も自身の名前が褒められてうれしいのか、ニッコリとほほ笑んで未来にお礼を言う。
「ありがとう!」
ホント、人懐っこい所も悠貴そっくりだ…そういえば、真理さんと悠貴もこんな感じだったっけ…って、あんまりダブらせちゃ駄目だ…この子は悠太くん。悠貴じゃないんだから…
しばらく道沿いに進むと、悠太の言った通り並木道のある海岸が見えてきた。未来は海岸までの道中、チラッと辺りを見渡しながらバス亭の位置を確認して先に進む。
「悠太くん。少しあそこにある木陰のベンチで休まない?私、少し疲れちゃって…あぁ、でも先にいってていいよ。すぐに追いかけるから」
並木道に入り、砂浜まであと少しと言うところで未来が悠太に少し先に見える木陰のベンチ休まないかと提案を持ちかける。どうやら、先程の全力疾走でいよいよ体力が限界を迎えたようだ。加えて朝からギラギラと降り注ぐ太陽の光にもやられてしまったらしい。
「うん、休もう!…お姉ちゃん大丈夫?」
未来の体調を気にかける悠太。てっきり、ついさっき知り合ったばかりの自分のことなど放って置いて、先に行ってしまうと思っていた未来だが、予想外の悠太の気づかいにまたしても無意識に悠貴の面影を見出してしまっていた。
「大丈夫だよ。でも、ちょっとこの気候が慣れなくってさぁ」
度々、意味も無く私の方に顔を向けてニコニコほほ笑む悠太くん。悠太くんとこうしてると、やっぱり悠貴のことを思い出さずにはいられない…でも、だからってどうなる訳じゃないけど…
「はぁ、それにしても暑い…みんなどうしてるかな。あっ、メールだ…全然気が付かなかった」
徐に携帯をポッケから取り出す未来。思い入れがあるのか、未来の携帯端末は当時のものそのものであり、さらに相変わらずエリマキカエルのクアンパのストラップもプラプラと未来の携帯にぶら下がっている。
「お昼までには合流したいなぁ…」
友人からのメールを受信に気が付いた未来は、慣れた手つきでカチカチと返信のメールを打ち始めた。
「…」
未来の隣でその様子を物珍しそうに眺める悠太。また、未来もすぐにその悠太の視線に気がついて携帯を弄る手を止める。
「どうしたの?」
「誰とメールしてるの?」
「あぁ、友達とね…いきなり出てきちゃったからさぁ…カンカンだよ」
そう言って、友人達からのメールに返信するために再び携帯をカチカチと弄り始める未来。
「いいなぁ。僕も携帯欲しかったなぁ…」
「持ってないの、悠太くん?…お友達も?」
今時、携帯も持っていないという悠太に珍しいと言わんばかりの反応をする未来。
しかし、思い返せば悠貴も携帯を持っていなかった事を思い出す。
そういえば、悠貴も携帯欲しいって…たくさんメールするって…
「携帯は10歳になったらパパが買ってくれるって!でも、僕ね…今はメールとかする友達がいないんだ」
さり気無く友達が居ないという悠太の言葉に、思わず表情を曇らせて携帯を動かす手を止める未来。
「えっ、いないって…誰かに虐められてるの?」
「そうじゃなくて、島に誰もいないんだ…」
悠太の誰もいないという発言に余計困惑する未来。
「そんな、だって学校は?」
「今は行ってない。勉強は「つうしんこうざ」っていうのをやってるんだ」
「あぁ、なんか最近流行ってるよね。新しい学習のなんたらとかで…」
随分前に見たニュース番組の特集を思い出す未来。それは、第二次関東大震災以降にPTSD等で登校出来なくなってしまった多くの児童、又は以前から問題視されていた不登校児童に対する処置として生まれた、画期的な新しい学習指導のガイドラインだった。
「でも、昔はいたんだよ。パパのお仕事で島に来るまでは…」
最初に合った時からそうだと思ってたけど、やっぱり悠太くんはこの島に元々住んでいた子供じゃなかったんだ。親の都合で引っ越しなんて、なんか少しかわいそうだな。
父親の仕事の都合で学校の無い島に引っ越してきたことを知り、そのことを気の毒に感じる未来。
「…悠太くん。お父さんのこと嫌い?」
「そんなことないよ!だけど…昔住んでたとこには戻りたい」
未来の問をすぐに否定しながらも、少し落ち込んだ様子で俯きながらそう答える悠太。
どうやら、父親の振る舞いについては多少の不満があるようだ。
「…け、けどさぁ。ここって気候もイイ感じだし、立地条件はいいんじゃない?」
落ち込む悠太に、なんとなく話しの路線をいい方向にもっていこうとする未来は、辺りを見渡していい所だと悠太に告げる。
「りっち?」
「あぁー住むには良い所ってこと」
「確かに、最初は海とか山が近くに合ってすごいなーって思ったけど、もう飽きちゃったよ…」
「そうだよね…旅行で来てる訳じゃないしね」
もっともな悠太の切り返しに凹む未来。すると、今度は悠太の方が未来に質問を問いかけてきた。しかも、その質問は再び未来の弟の悠貴に関する話し。どうやら、悠太はおそらく同年代だと思える悠貴に先程の理由からか関心があるようだ。
「そういえば、悠貴くん探しに行かなくていいの?ここには居ないみたいだよ」
「うん。でもね、悠貴はすごーく遠い所に居るから会いに行けないんだ」
悠太の質問に、どこか遠くを眺めながらそう答える未来。
「それって北海道とか?ここから一番遠いんだよってパパが言ってたんだ!」
「もっと遠いの…」
「じゃ、アメリカだ!ずーっと、ずぅーっと!先にある別の国なんだよ!」
「もっと、かな…」
悠太くんには悠貴が死んじゃってるなんて言えない。というか、私がその話を口に出したくないだけかもしれないけど…いや、多分そうだ…
「えぇー!それじゃ会えないよー!どうするの、お姉ちゃん?」
知りうる遠方を全て答えた悠太は困った様な、少し悲しそうにも見える顔をして未来を見つめる。
「でもね、いつも側に居てくれるって言ってくれたの…それに、いつかまた会えるから…」
そうだよね…悠貴。
悠太からは見えないが、この時未来は少し涙目になっていた。しかし、全てを理解せずともなんとなく未来の思いを悟った悠太は、ベンチから立ち上がって未来に提案を告げる。
「お姉ちゃん?………そうだ!悠貴くん探さないなら、僕と貝殻探そうよ!」
「貝殻?」
「うん!たまーに凄く綺麗なのがあるんだよ!僕ねぇ、いっぱい集めてママにプレゼントするんだぁ!」
万弁の笑みを浮かべながらそう言う悠太。その一点の曇りも無い、澄み切った青空の様な悠太の態度に少し滅入っていた未来の気分も晴れ、二人は改めて貝殻を探しに海岸にむかうことになった。
「へぇーそうなんだ。それじゃ、バスが来るまで一緒に探そうか」
「うん!」
「凄い…綺麗…」
悠太と共に未来が訪れた海岸。そこにはひっそりと人目に付かない様な小さな砂浜があり、その砂浜にうちあげられている無数の貝殻は、太陽の光に反射して七色の輝きを放つ。また、その神秘的な光景はまるで虹で出来た絨毯の様だった。
「近所の人に教えてもらったんだ。ここは「あなば」って言うらしいよ」
砂浜を目の前にして、少し自慢げな口調でそう言う悠太。
「確かに、ガイドにも載って無かったかも…」
キョロキョロと辺りを見渡しながらそう呟く未来。確かにそこは観光ガイドにも載っておらず、正真正銘の穴場スポットだった。また、悠太の様な子供や観光客が周りにいなこともあって、七色に輝く砂浜は未来と悠太の貸し切り状態だ。
「行こう!」
そう言って未来の手を引っ張る悠太。それに未来は微笑みながら答える。
時折押し寄せる波の音と、心地よい潮風。人気のない海岸と人々の生活音が届かないこの場所は、未来にまるで別世界に居る様な錯覚を与える。
「ここの貝殻たくさん集めると、願いが叶うんだって」
ふと、未来に背を向けながらお目当ての貝殻を探していた悠太がそう呟く。
「へぇー。悠太くんは何かお願いごとでもあるの?」
未来も砂浜と睨めっこしながら、悠太に問いかける。すると、悠太はチラッと未来の方に振り返り、ニカっと笑ってこう答えた。
「うん。ママの病気が早く治りますようにってお願い!あと、ちょっとお願い余ったら友達も欲しい…それと、パパにお休みもあげたい!」
「……」
悠太くんの口から漏れた複数の願い。それは、特別な願いでも無なければ求め過ぎた願いでも無く、普通の人は全部じゃないけど大体もっている様な、一般の人並みの生活も求めるささやかな願いだった。
未来は一瞬黙り込んだ後、悠太に向かってニコっと万弁の笑みを浮かべてこう言った。
「そっか、それじゃたっくさ~ん集めないとね!」
「うん!」
元気な返事で答えると、再び貝殻を探し始める悠太。
「でも、お母さんの病気って大変なの?」
神頼みの様なことをしてまでも母親の病気の完治を願う悠太に、それほど重病なのかと思った未来は、さり気無く悠太に母親の様子を聞きだす。
「うーん…よくわかんない…けど、ずぅーっと病院にいるんだよ。パパは大丈夫って言ってたけど」
重症なんだ…悠太くんのお母さん。ちゃんと治るといいなぁ…
家族を失った痛みを知っている未来は、それが他人事に思えなかったのか、自分のことのように心から悠太の母親が病を克服することを心の中でそっと願う。
「…そうなんだ。早く治るといいね」
「だから貝殻集めてるんだよー。お姉ちゃん信じてないの?」
少しムッとした様なトーンで答える悠太。どうやら、貝殻を集めても願いは叶わないと未来が思っていると受け取った様だ。しかし、現に未来は悠太の言っている事を信じていた訳ではない。焦った未来は慌ててそれを悠太に否定する。
「ごめん、ごめん。そう言うことじゃないの!さぁ、いっぱい集めて悠太くんのお母さんの病気治そう!」
「えっ、お姉ちゃんは悠貴くんのために集めなよ!会いたいんでしょ?それにね、自分で集めないとダメなんだよー」
「…」
子供だなぁと思う時もあれば、やっぱり少し大人びてる悠太くん。貝殻集めに誘ってくれたのも、もしかしたらなんだかんだで落ち込んでた私のためでもあったのかもしれない…
「悠太くん…そうだね。私も悠貴のために集めてみるね」
悠太の気づかいに少し未来は涙目になりながらも、そう言って再び貝殻を探し始める未来。
その後も二人は、誰も居ない七色に輝く砂浜の上で他愛も無い会話繰り返しながら貝殻探しに勤しむ。そして、あっという間の二時間も過ぎて貝殻探しも一息ついた頃、未来の待っていたバスが並木道の奥からやってきた。
「ヤバイ!バスが…悠太くん、付き合ってくれてありがとう!お姉ちゃんそろそろ行かないと…」
「お姉ちゃん?」
静かな海岸沿いに響き渡る独特のエンジン音。停留所まであと少しの位置まで来ていたバスを見つけた未来は、夢中で貝殻を探していた悠太に一声別れを告げ、咄嗟に持ち出していた小さなポーチに拾った貝殻を入れると、急いで先程確認した停留所に向かって走り出す。
「はぁ、はぁ…これを逃したらみんなと合流出来なくなっちゃう」
未来は全速力で砂浜を駆け上がり、並木道の停留所に飛び込むようにして滑り込む。すると、未来の姿を確認した運転手が停留所に止まるためにバスの速度を緩める。とりあえずこれで一安心だろう。未来ははぁはぁ息を切らしながら胸をなでおろす。
「…ふぅ、なんとか間に合った…」
バスがプシューとい排気音を出しながら停車し、前の自動ドアがガラリと音を立てて未来を迎え入れる。未来は顔を俯かせながらバスに乗り込み、ポーチから電子カードを取り出し料金箱にそれをあてる。
「あぁー疲れた…」
「お姉ちゃんー!!」
背後に響く子供の声。その聞き覚えのある声に未来はハッとして背後を振り返る。すると、砂浜の方から悠太が走ってくるのが見えた。
「…?悠太くん!?」
「はぁ、はぁ…こ、これ…」
全速力で走ってきた悠太は、バスにたどり着くころには少し息が荒かったが、悠太は未来に先程まで集めていた虹色の綺麗な貝殻を数枚差し出す。
「でも、これは悠太くんが集めた貝殻じゃ…お母さんのために…」
一度は勢いで受け取った貝殻だが、未来はそう言って貝殻を悠太に返そうとする。だが、悠太は首を横に振ってそれを拒むと、ニッコリと再び微笑んでこう言った。
「いいよ、お姉ちゃんに上げる!それだけあれば悠貴くんにきっと会えると思うし!」
なんで私なんかのために…自分だってお母さんのこと助けたいって思ってるのに…
この時、私の今まで我慢していた感情が再び爆発した。もう、さっきみたく自分では流れ出る涙を抑えることなんて出来なかった。
「悠太くん…でも…これじゃインチキだよぉ…」
ポロポロと涙をながしながら震えた声でそう呟く未来。
「大丈夫。大丈夫だから…」
「えっ…」
そう悠太が呟いた瞬間、悠太はバスの運転手に向かって一礼する。すると、二人のやり取りを見守っていたバスの運転手が悠太の「もういいですよ」という合図に首を縦に振る。そして次の瞬間バスの扉が閉まり、ゆっくりと未来を乗せたバスは動き出した。
「悠太くん……」
未来は、停留所に立って未来に向かって笑顔でブンブンと手を振る悠太を、まるで追いかける様にして無人のバスの中を移動し、後部座席の窓から自身も手を振って答える。
と、次の瞬間。ふと目に付いた停留所の少し奥にあるさっき二人が休憩がてらに座っていたベンチに、見覚えのある人物の姿が見える。
「っ!!…うそ…ゆ、悠貴?」
涙で霞んだ瞳に映る人影。でも、私にはそれがハッキリ悠貴だって分かった。悠貴はこっちを向いて悠太くんに負けないくらいの笑顔で笑うと、再びスッとその姿を消していく。それは本当に一瞬のことだったけど、あれは確かに悠貴だ…
「ありがとう…ちゃんと会えたよ…ありがとう…」
未来は悠太から受け取った貝殻をギュッと胸元で抱きしめてそう呟きながら、どんどん小さくなっていく悠太にその姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
この時、後部座席から未来が見た悠貴は幻だったのかもしれないが、その姿は未来の脳裏に決して色褪せない記憶として刻まれたのだろう。
消して十分に満喫できた修学旅行でもなかったが、自宅に帰宅した未来の顔に後悔の色は出ておらず、寧ろ行って良かったという様な顔つきだった。
「未来、その貝殻どうしたの?子供じゃあるまいし…」
荷物やお土産の整理をしていた未来の部屋に訪れた未来の母親が、机の上に置かれた数枚の貝殻を目にしてそう呟く。
「ちょっとね…悠貴にあげようと思って」
それを聞いた母親はハッとした表情をみせ、置いてあった貝殻を一枚手に取りこう言う。
「ふーん……綺麗な貝殻じゃない。…悠貴もきっと喜ぶと思うわ。…ありがとね、未来」
「うん…」
全開の窓から、ゆっくり私を包み込むようにして流れ込む初夏の心地いい風。このまま少し、ベッドで眠りたくなるような心地よさだ…
これは、私が修学旅行先で体験した、ちょっと切なくて不思議な出来事の話。
小説も読みたいような…読みたくないような
嵐が原因なのか、通信障害が多すぎる。DION軍に未来は無いのかねぇ…
昨日、ビックでTM8の最終巻ゲットしました。実は毎月買ってたんですよーお肉我慢してw
でも、肝心のブラスミは買ってないという…ってか、そんなにマネー無いです。BDだから割増だったし。
00だって止めたしなぁ…ホントに宝クジでも当たらんかなぁ。
今日は1巻~5巻までぶっ通しで見てましたが、悠貴くんとイツキくんがやっぱカワイイよ!
でも、悠貴が一緒に居るとしたらやっぱり未来かな。あと、涙腺が老夫婦のとこで決壊してもうた…(´;ω;`)ブワッ
なんというか俺はマゾいのですかね?
そうそう、特典の「悠貴のメモリアルフォト」。ドSなオマケとしか言えネェ…小説も…うぅ。
それに、なんでボックス作ってくれへんかったの?ケース付きBDの置き場所に困るぅ…なんてドSな仕様だw
↓2度目の…って感じです。今度はイツキくんとセットで描きたいな。
ってか、なるべく似せようと頑張ったけど…俺は似せて描くのが下手みたいです。
昨日、ビックでTM8の最終巻ゲットしました。実は毎月買ってたんですよーお肉我慢してw
でも、肝心のブラスミは買ってないという…ってか、そんなにマネー無いです。BDだから割増だったし。
00だって止めたしなぁ…ホントに宝クジでも当たらんかなぁ。
今日は1巻~5巻までぶっ通しで見てましたが、悠貴くんとイツキくんがやっぱカワイイよ!
でも、悠貴が一緒に居るとしたらやっぱり未来かな。あと、涙腺が老夫婦のとこで決壊してもうた…(´;ω;`)ブワッ
なんというか俺はマゾいのですかね?
そうそう、特典の「悠貴のメモリアルフォト」。ドSなオマケとしか言えネェ…小説も…うぅ。
それに、なんでボックス作ってくれへんかったの?ケース付きBDの置き場所に困るぅ…なんてドSな仕様だw
↓2度目の…って感じです。今度はイツキくんとセットで描きたいな。
ってか、なるべく似せようと頑張ったけど…俺は似せて描くのが下手みたいです。
外でやれ!
ってか、9まだやってないし
みるくちょこれーと (少年の味 番外編)
「いらっしゃいませ高杉様」
毎度同じく「かわいい男の子で遊べる…」って先輩に言われてノコノコ着いて来たけど
今回は、街外れにある物凄く洋風の不気味な屋敷に連れてこられてしまった。
「先輩…ここはなんですか?」
「まぁまぁ、ちゃんと目当ての「男の子」は出るから。だまって俺に着いてこい」
男の上司はお馴染みの台詞を言うと、案内人の男に付いて屋敷の奥に入っていく。男もその後に続いてどんどん屋敷の奥に進んでいった。
やがて、二人は客間の様な部屋に到着すると、案内人の男にこの部屋で待つように言われる。
「では、「チョコレート」をお持ちしますので少々こちらでお待ちください」
「うむ」
(チョコ…レート???)
想像もつかないネーミングを聞かされた訳じゃないが、ただ単にチョコレートなのか、それともやっぱHな姿の少年が来るのか…まぁ、いつも通りとりあえず期待して待つことにしよう…
しばらくすると、先程の案内人の男がキャラキャラと音を立てながら台を引いてやってきた。その台の上には、茶色い中学生くらいの少年の裸を模ったような形をしたチョコレートが置かれており、首元に赤いリボンがかわいらしく結び付けられている。これは…まさかと思うがやっぱり中には…
「お待たせしました。チョコレートのユウタくんです」
「…」
俺は、どう反応していいのかわからず、とりあえず無言で先輩の方を向く。
「どうした?食べないのか?」
「えっ、食べるんですか…これ」
男は、上司の答えに改めて目の前に置かれたチョコレートの像を指さし、上司にそう問いただす。しかし、肝心の上司は「今更何を言っている」と言わんばかりの表情で男を見ると、チョコレート少年の乳首の部分をペロペロと舐め始めた。
「ひゃ!くっ…うぅ」
男の上司の舌が、チョコレート少年の乳首をいやらしい舌使いでペロペロと舐めまわすと、溶けたチョコレートの下から少年の本物の乳首がちょこんと飛び出し、直に乳首を舐められた少年が思わず声を上げて反応した。
「せ、先輩!」
「どうした?今ので、大体は理解しただろう…ほらぁ、さっさと舐めろよ」
「は、はい…い、いただきます…」
そうだとは思ったが、やはりチョコレートの中には本物の少年の姿があった。俺は非道徳だと感じながらも、先輩に背中を押されて心臓をバクバクさせながらチョコレート少年の身体に舌をつける。
ピチャピチャ
「んっ…」
少年を覆っているチョコレートの膜は薄く、男達が舐めた場所はスグにチョコレートが舐めとられていき、どんどん元の少年の肉体が露わになっていく。また、それと同時に少年の喘ぎ声も甲高くなっていき、室内にピチャピチャという男達の下の音と共に響き渡る。
「くぅああぁ…んっ」
「気持ちいいか?ユウタ?」
ほとんど露わになった少年の顔をペロリと舐め、少年の耳元でそう尋ねる男の上司。その問いに少年は顔を真っ赤にさせてこう呟く。
「…もっと舐めて…僕は…チョコレートだから…うぅ」
「…」
とても本心から言っている様に聞こえないその答えに俺は一瞬体が止まった。それは、どうしようもないくらいにかなしい少年の声に、急に閉じ込めていた道徳心が一気に爆発したからだろうか。とにかく俺は、これ以上少年の身体に付いたチョコを舐める気にはなれなかった。
「どうした?もう舐めないのか?」
依然として少年の身体を舐めまわす男の上司は、急に動かなくなった男の方に振り返ってそう尋ねる。
「いやその…なんだかこれ以上はやっぱり…」
「今更どうした?今日まで散々俺と一緒にやって来ただろう?」
今更…確かにそうなんだよな。先輩の言葉に既に再び揺れ動く心。と、次の瞬間。少年の身体から突然物音がし始める。
パキパキッ
「?」
「あぁ…だめぇ…あぁあぁあぁ!やだぁあぁ!」
物音の正体は、少年の勃起した性器がチョコレートのコーティングを突き破ろうとする音だった。少年は大声を上げて必死に勃起を抑えようとするが、直後に少年の性器はいとも簡単にチョコレートの被膜を突き破り、少年の意思とは真逆に半透明の恥液をタラタラとだらしなく垂れ流しながらムクムクと勃起を続ける。
「んぁあぁ…はぁあぁ…んぁはぁあぁ」
その後、二人の男が見守る中、少年は勃起した自らのモノを片手で掴み、それを身体に纏わりついている溶けかかったチョコレートごと勝手に刺激し始める。
「くぅあぁあぁ…んぁあぁあぁ!」
「見ろよ。俺達に身体を舐められて興奮している証だ。まぁ、股間の部分はワザと後回しにしたんだけどな…これで分かっただろう?本能には誰も逆らえないんだよ」
男の上司は勝ち誇った様な顔で男にそう告げると、再び少年の元に寄り添い身体に残ったチョコレートをペロペロと舐め始めた。
「本能には…逆らえない」
俺は目の前で先輩に舐められながら喘ぎ声を上げる少年を目にし、再び自らの欲望を満たすためだけに動き出す。溢れ出そうになった道徳心という扉をゆっくりと閉じながら…
「くぅぅう…あっ…背中も舐めてぇ」
男が再び少年を舐め始めると、少年は予め仕込まれた台詞なのかは分からないが、急に男達に背中も舐めてくれと懇願し始める。そして、少年は男の上司の許可を貰うや否や横向きの姿勢になった。
「ん?」
少年が横向きになって初めて気付いたが、少年の体温で既に溶けかかった背中のチョコレートの下の方、つまり肛門の部分に溶けずに残っている大きなチョコレートの塊がある。しかも、それにはカラフルな粒上の砂糖が塗してあり、形も何となく…そうだ、これはチョコバナナだ。少年の肛門にはチョコバナナのようなモノが挿入されていたのだ。
「先輩。この子のお尻に…」
「あぁ、それは食えないから気をつけろ。タダのアナルバイブだ」
あっさりとそれがアナルバイブと男に告げる男の上司。動いてはいないものの、そっと男が触ってみると硬さがあり、どうやら本当に少年の肛門にバイブが挿入してあるようだ。
「バイブ…ですか。でも、なんで動いて無いんでしょうか?」
「そりゃ、この子が興奮しなかった時のための保健みたいなもんだろう」
「なるほど…」
嫌々ながらも従順に俺達に従っていたのは、このバイブを起動させないためだったのか…よっぽど苦痛なのか、それともバイブの刺激でイク姿を見られたくないからかな。まぁ、どっちにしても起動させられるよりは、現状の方がマシみたいだ。
変態のお帰りだーっ!
help!
今週は休日が…1日も無い…だとぉ?俺を殺す気ですか?過労死させる気ですねわかります。
でも、来週の後半は一息つけるかも。そこで一気に更新だ!
さて…ルパン見るかw
連絡
明日は小説うp出来そうです。でも、新作になっちゃうかも…
でも、来週の後半は一息つけるかも。そこで一気に更新だ!
さて…ルパン見るかw
連絡
明日は小説うp出来そうです。でも、新作になっちゃうかも…
。⌒ ヽ(´ー` )
はぁー
あとちょとなのに、中々時間がとれなくてお手上げや。気合いが足らない…のかな?
歩く死体の様に毎日行ったり来たりしてますが、今日はバスの中から見えた
小学3次ショタが手を繋いで歩いていく光景に萌えてLPが回復したw
歩く死体の様に毎日行ったり来たりしてますが、今日はバスの中から見えた
小学3次ショタが手を繋いで歩いていく光景に萌えてLPが回復したw
終わらねぇ…
俺にはナンノコッチャ
株かよw
満足のコスしようかと思ってた頃(目で挫折)に集めた、∞悪魔が久々に見たオクで超絶高等してて驚いたwww
当時は捨値で売られてたのに…笑いがとまらねぇーよぉw(ウリマセンヨ
これで俺もトリシュと合わせてショタ共の英雄だぜwまぁ、見せた瞬間にパクられそうだけど…
ちなみに…
当時=800円としたら 現在=4000円くらいです。
当時は捨値で売られてたのに…笑いがとまらねぇーよぉw(ウリマセンヨ
これで俺もトリシュと合わせてショタ共の英雄だぜwまぁ、見せた瞬間にパクられそうだけど…
ちなみに…
当時=800円としたら 現在=4000円くらいです。
帰らずの家 第3話 「シルビエルの魔手」
朝食後、ナッツは台所に置いてある自分の荷物を取ると、さっさと帰り支度を始めて屋敷の面々に別れの挨拶を告げる。
「色々とお世話になりました。僕はそろそろ帰らないといけないので…」
食堂の入口で住人にペコリと一度頭を下げ、扉を開けて玄関ホールに移動するナッツ。しかし、玄関が目の前だというところで追いかけてきたヨーセンによって腕を掴まれてしまった。
「!」
「ナッツくん。外はスゴイ濃霧だよ?もう少し待ってからでもいいんじゃないかな?」
昨日の夜のことが結局ずっと頭から離れず、それでヨーセンさんに腕を掴まれた時は驚いたけど、実際にヨーセンさんが僕に言ってることは普通のことで、玄関の横にある窓の外は本当に真っ白だった。
「そうだよ!迷ったらどうするんだよ!」
そこに、後から追いかけてきたファムも駆け付け、ヨーセンの意見に賛成してナッツを引き止める。
だが、ナッツは自分でもなぜだと問いかけてしまうほどに、防衛本能が呼びかけているかのごとく、どうしてもこれ以上この屋敷に留まっていたくは無かったのか、ヨーセンの警告を無視してまで半ば強引に帰ろうとした。
「いや、僕は大丈夫ですから…それじゃ」
そう言って、愛想笑いを浮かべながらヨーセンの手を振り払おうとするナッツだが、ヨーセンはなぜか掴んだ手を離そうとしない。
「っ!?」
「行かせないよ。君はこれからずっとこの家で暮らすんだ…私達とね」
困惑するナッツを尻目に、いきなり訳の分からないことを言い出すヨーセン。
「ヨーセンさん?」
「ヨーセン兄ちゃん。ナッツは家に帰してやろうよ…待ってる人も居るみたいだし」
ナッツの手を離そうとしないヨーセンに対し、ファムがナッツを返してあげようと横からヨーセンに進言する。しかし、ヨーセンはファムの意見にこう向かって言い返す。
「シルビエル様のご命令だぞ?」
「お父様の…シルビエル様の命令…」
シルビエルの命令と聞くや否や、急に黙り込むファム。一部始終を見ていたナッツも未だに状況が理解出来ず、黙り込んだファムに真相を問いただそうとする。
「放してください!…ファム!どういうこと?」
「弟が欲しいって、お前ずっと前から言ってたじゃないか」
「そうそう」
「スタンさん?ストルさん?」
ナッツの質問に答えず黙って俯いているファムに、さらに遅れてやってきたスタンとストルが声をかける。しかし、ファムはそれにも答えようとせず、とうとうグズった様な声でナッツに謝罪し始めた。
「ナッツ。ごめん…ごめん」
「ごめんって…何を…僕をどうするつもりなんだ!うっ……」
急に泣き出すファム。これから一体僕はどうなるんだろう?僕はその理由をファムに聞こうとしたけど、急に眼に前が真っ暗になって…
「んっ…ここは?…体が動かない…何も見えない…うぅ、それにこのネバネバ…」
気がつくと、僕は自分でも何処に居るのかわからない不思議な場所に居た。ついさっきまで玄関に居たはずなのに…ここが屋敷の中なのかどうかも全然分からなかった。とりあえず、なぜか体が動かないのと目が見えない。目は布で目隠しされてるみたいだけど…それと、体中に感じるネバネバした嫌な感じ。
「お目覚めかな?ナッツくん」
「…っ!」
現状が理解出来ずにいるナッツの耳に響き渡る声。だが、聞き覚えのあるその声にナッツはスグにその正体に気がついた。
「…シルビエルさん?……何処に居るんですか?どうしてこんな事を…ねぇ!!」
声の主がシルビエルだと気付いたナッツは、身動きとれない身体をピクピクと懸命に震わせ、シルビエルに真意を尋ねる。しかし、シルビエルから返って来た返事は意味の分からないモノだった。
「何処って…スグ側に居るじゃないか。さっきから君を抱きしめているというのに」
「えっ…」
シルビエルの言葉に悪寒を感じるナッツ。もし、さきほどから身体を圧迫している粘着質な何か「自体」がシルビエルだとしたら、それはシルビエル自身が人ではないということ
だ。
「さぁ、君にも植えつけてあげよう…私の愛をね」
そうシルビエルが呟いた瞬間、ナッツの周囲からシュルシュルと何かが活動を始めた音が響く。そして、それは突然ナッツの口元に勢いよく注ぎ込まれる様にして侵入を始めた。
「やぁ…やめて!やだぁああぁ!ふぅんっ!んぅううぅ!!」
強引にナッツの口の中に入ってくる謎の粘着質な物体。ナッツは懸命にそれを吐き出そうと顔をブンブンと狂った様に振り回すが、謎の物体は容赦なくナッツの口に流れ込み続ける。とその時、ナッツの目隠しが衝撃で中途半端にずれ込み、片目の視界が蘇る。
「んぅんぅううぅ!ふぅんぅううぅ!」
僕の目の前にあったのは、気持ち悪いぶよぶよとした太い緑色のミミズ。これがシルビエルの本当の姿なのか知らないけど、部屋一杯にそのミミズは溢れていた。
なんと、先程からナッツの身体を圧迫していた謎の物体の正体は、テカテカ不気味な光沢を放つ緑色の粘着質な触手であった。その太い触手の一本は相変わらずズブズブとナッツの口の中に入り込み続け、ナッツの口内を勝手気ままに埋め尽くしていく。
「んぅううううぅ!!」
多数の触手に良い様に弄ばれ、吐き気などにおそわれパニックに陥るナッツ。だが、触手はそんなことお構いなしに次なる目標であるナッツのある部分に迫る。
「ふぅんぅ!!」
ナッツの全身がズンと震えた瞬間、ナッツの肛門が無理やり外部からこじ開けられ、開いた肛門から口同様に触手が侵入し始めた。それに慌てたナッツは朦朧とする意識の中、肛門を閉じようと力むが、既に侵入を許してからのそれには意味が無く、触手はナッツの肛門に吸い込まれる様にしてゆっくりと確実に入りこんでゆく。
「んぅううんぅうううんぅ!んぅうんぅううんぅ!!」
僕はこのまま死ぬのかな?ミミズに襲われて死ぬと思っていたら、なんだか体の底から変な感じがしてきた…なんで?これは気持ちいい?
触手に完全に身体を乗っ取られ虚ろな表情を浮かべるナッツだったが、それとは対照的にナッツの性器がこの状況でムクムクと大きくなっていく。また、それを後押しするかのように細い触手がナッツの勃起しかけた性器と両乳首にシュルシュルといやらしく纏わりつき、陰部への刺激を与え始める。
「んぅぅうぅ!んぅっ!んぅうぅ!んぅううんぅ!」
性器や乳首を刺激されることによって、ナッツの息使いはさらに荒くなっていくが、先程までの苦しそうな息使いというよりは違う、まるで触手に犯され喘いでいる様にもとれる表情を見せるナッツ。
「ふぅんんんぅううぅ!んんんんぅんぅんんぅうぅんぅんんぅ!!」
そして、ナッツの快感が触手からの責めによって最高潮に達したと思われる様な動きが身体に起こった時、それと同時にナッツの意識は再び途絶えた。
今日…昨日は節分ですよ
いつから伝承されたのか知らんですが、いつの間にか2月3日は富士山に向かって
「黒光りする大きな円筒状」のモノを口いっぱいに両手で持って味合わなくちゃいけなくなったんですね。
俺は豆撒きで十分どえす。
今日のイナズマ。ついに新章突入しましたね!もう、色々キャラが増えて訳がわからんですよ。
でも、依然として俺の中ではタチムーが一番いいよ!EDのタチムーも乙女チックでカワユスだったし。
(空白の三ヵ月間、タチムーは円堂さんをオカズに何回…
海外選手の中に「大きな風丸」と「半田MK2」が居たのは気のせいか?それと、アメリカの某選手がハムに見えたw
そうそう、リストラされた雷門のメンバーご愁傷さまです。ってか、メガネとかほとんどレギュラー確定だろwww
なんだよ兄弟?双子?設定って!
「黒光りする大きな円筒状」のモノを口いっぱいに両手で持って味合わなくちゃいけなくなったんですね。
俺は豆撒きで十分どえす。
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でも、依然として俺の中ではタチムーが一番いいよ!EDのタチムーも乙女チックでカワユスだったし。
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海外選手の中に「大きな風丸」と「半田MK2」が居たのは気のせいか?それと、アメリカの某選手がハムに見えたw
そうそう、リストラされた雷門のメンバーご愁傷さまです。ってか、メガネとかほとんどレギュラー確定だろwww
なんだよ兄弟?双子?設定って!
カエル襲来!
目隠し=感度が倍?
なんとなく「少年の誇り」更新しましたが、繋ぎの話しなんで微妙な内容に…
まぁ、あんまり先のこと考えて無いのでどうなることやらって感じですw(オイっ
最近のナルポはサスケェの闇化でバッドENDしか思いつかんです。水月とか見捨てた時点であぁ…と思ったら
ついに今週号でやらかしやがったwもう、唯一の救いはブラコン設定だけじゃんってばよ。
アニメの方は時間稼ぎ編wに突入しちゃったんで今一つって感じ、密かにヤマト×ナルポとか思ってしまったのは
内緒だってばよw(末期か…
そうそう、メダのBoxが出たとか出ないとか…その調子でエグゼもたのんます。物凄い量になりそうだけど…
無印・アクセス・ストリーム・ビースト・ビースト+ (゚A゚;)ゴクリ
↓「帰らずの家」様の挿絵にしようかと…ついにナッツが家族の一淫にw
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少年の誇り 第6話 「汚らわしき種族」
「それで、シオン将軍は今何処に?それに…この騒ぎは何です?貴国は「どこかの国」と戦争でもされるのですか?」
強気な姿勢でシオンの行方やクフィリオスの国内情勢についてズカズカとランドに意見するロイ。一方、ラドスの方もロイの勢いに呑まれまいと強気に出る。
「言っている意味が…シオン将軍は既にクフィリオスを発っただけでしょう?道中お会いになりませんでしたか?それと、こんな騒ぎになったのはハッキリ言ってダーカンドラの方々が部隊を率いて我が国の領土に踏み言ったからですよ?」
ロイの追求にシオンは既にクフリオスから発った説明するラドス。さらには、一連の騒ぎはダーカンドラ軍の動きによるものだとロイに牽制する。
「こちらに戦闘の意思が無いのは十分にご承知のハズでは?クノ王にもダーカンドラ王からの親書を…」
「どのように判断するか決めるのは王様です。そちらの都合で一方的に話を進めるのはどうかと思いますが?」
「そうですか…そういうことなら「シオン」を力ずくでも返してもらいますよ」
どういう訳か、突然ロイはシオンが城に居ると確信を持ったうえで、シオンを返さなければ力ずくで奪い返すとラドスに詰め寄る。
「ですから…」
何を言っているんだという表情でロイを見つめながら反論態勢をとるラドスだが、直後に追い打ちをかける様な言葉を立て続けにロイに浴びせられ、言葉を詰まらす。
「王の親書をなんであれ拒んだということは、それを運んできた者は確実に囚われるハズ。正直に話してくだい。シオン将軍はこの城に囚われているのでしょう?」
「ぐっ…」
「貴方の口から聞けないのなら、直接クノ王にご説明いただきたいのだが?」
中々シオンの居場所を話そうとしないラドスに対し、直接クノに上奏すると言い始めたロイ。一方、クノに面会させる訳にもいかず、かといってこれ以上シオンの行方について誤魔化せないと悟ったラドスは、不本意ながらも控えているドリスとロンドに指示を出す。
「…ドリス!ロンド!ロイ以外は皆殺しにしろ」
「待ってましたぁ!」
「それでこそラドス様」
ラドスの合図と共に、隠し持っていた暗器を手にロイ達に襲いかかるドリスとロンド。突然の奇襲に驚きながらも、ロイは控えている騎士達に迎撃の指示を出そうとする。
「なっ!…戦闘態勢に…」
「生意気なクソガキ!たっぷり調教して従順な奴隷にしてやるからな」
本性を露わしたラドスの魔手がロイの華奢な首根っこをガッシリと掴む。
「いつの間に…がぁ!」
ドリスとロンドの攻撃によって護衛の騎士達から孤立してしまったロイは、意図も簡単にラドスの手中に落ちてしまい、容赦無いラドスの一撃によって意識を失ってしまった。
「ロイ様!お前達、何をしている!相手はたった3人だぞ!軍師様を救出しろ!」
騎士達は捕らわれたロイを救出しようと奮闘するが、ドリスとロンドの怒涛の攻めによって隊列を完全に乱され、ラドスに辿りつけさえしない。
「先に頭を叩けば…後は烏合の衆ってなぁ!」
「ふん、この程度の人数では相手になりませんよ」
歴戦の騎士達相手に余裕を見せて戦う二人。しかし、迫りくる騎士達を全滅させるには至らず、それを見かねたラドスは二人にこの場を任せると伝える。
「二人とも、後は頼んだぞ」
「お任せくださいラドス様」
キィンという金属音と兵士たちの騒ぎ声が途絶えることのないクフィリオス城内。ラドスは意識を失ったロイを担ぎ、そのまま振り返ることも無く城内に姿を消していった。
騒がしい城内の中を、ロイを担ぎながら淡々と進んでいくラドス。その道中、クフリオスの宰相であるラドスに兵士や大臣などが城内の騒ぎについて質問するが、ラドスは駆け寄る家臣を邪魔だと言わんばかりに次々と惨殺していった。
「この国を足がかりにダーカンドラをも手中に収めようかと考えていたが…ふん、これでクフィリオスも終わりだな。まぁいい、極上のペットが2匹手に入ったんだ」
ぶつぶつ小言を言いながら、シオンを監禁している部屋に繋がっている隠し通路を足早に進むラドス。
「見つけたぞ、ラドス!」
「?」
突如、誰も居ないハズの通路に響き渡る声。ラドスは声のした方に振り返ると、そこにはシオンを助けに向かう最中のクノと数人の武装した兵士達の姿があった。
「王様…この様な場所に何用です?そんなに兵士を引き連れて」
「お主こそ、ここで何をしておったのだ?シオンの拷問か?」
クノの全て知っているという様な趣旨の問いに、思わず顔を引きつらせるラドス。そして、再びブツブツと独り言の様なことを言い出し始める。
「…思った様に事が運んだと思えばロイが、そして今度は貴方ですか王様…いや、クソガキ!」
ラドスが憤怒した瞬間、突然ラドスの身体からクノ達目掛け、不気味に黒光りする槍の様な鋭い触手が勢いよく飛び出す。
「ぐあぁああぁああぁ!」
この世のモノとは思えないその触手は、クノを除くその場に居た全ての兵士達に容赦なく襲いかかり、兵士達の命が果てるまでその身体をズブズブと突き刺し続ける。
「くっ…お主は一体…」
予期せぬラドスの異形の姿を目にし、言葉を失うクノ。
「ふふ、お前の私のペットにしてやるよ」
ラドスはニヤリと笑みを浮かべてそう言うと、兵士達の惨殺を行っていた触手の一本をクノに差し向け、クノの身体を触手でグルグル巻きに絡めとり、死なない程度に締め上げた。
「…あぁっ!」
幼い身体には耐えがたい苦痛だったのか、クノは対した抵抗も出来ずに締め上げられた直後に意識を失う。
「はぁぁあんっ!んぁぁああぁ!」
もうすぐクノ王が助けを呼んで来てくれる…それまでの辛抱だ…それまでの…
しかし、拷問室の扉から入って来たのは待ちに待ったクノ王じゃなく、あのラドスだった。
「どうだ、シオン?快楽地獄のお味は?あぁーそうだ、一人じゃさみしいと思ってお友達を連れてきてやったぞ」
シオンが監禁されている拷問室にたどり着いたラドスは、さっそくシオンに意識の無いロイとクノの姿をチラつかせる。
「ラドスぅ…っ!ロイ?それにクノ王?どういうことだ!」
助けを呼びに行ったクノ王に加え、本国に居るハズのロイまでラドスによって捕まってしまった事に動揺するシオン。
「どういうこともなにも、こいつらも今日からお前同様に私のペットになってもらうのさ」
三角木馬に相変わらず全裸で掲げられているシオンを、舐めまわす様にいやらしい眼差しで見つめながらそう言うラドス。
「ふざけるな!くぅ…二人を…解放しろぉ!」
悪戯された性器から伝わる刺激に悶えながら、ラドスに二人を解放しろと訴えるシオン。
しかし、無論それをラドスが聞き入れる訳は無く、ラドスはシオンに近づきこう言う。
「三角木馬に跨りながら、全裸で性器をビンビンにたたせている奴の台詞か?あぁんっ?」
ラドスはシオンの耳元でそう呟くと、シオンの性器と両乳首を結ぶ糸を摘み上げてグイグイと意地悪く引っ張る。
「くぁああぁあぁ!やめぇえぇ!」
謎のクスリで身体の感覚を敏感にされた挙句、性器と両乳首を結ぶ糸をラドスのよって引っ張られ、モジモジと身体を揺らしながら悲鳴混じりの喘ぎ声を上げるシオン。
「さぁ、これからが地獄の始まり…っと、本来だったらここでゆっくりとお前達を料理しているところだが、こちらにも事情があってね。すぐにでもクフィリオスを発たねばならなくなったのだよ」
性器への責めに悶え苦しむシオンを万弁の笑みで見つめながら責め立てていたラドスだが、
どういう訳かシオンへの責めを早々に止め、突然シオンに向かってそう言いだす。
「どういう…こと…だぁ?」
「もうすぐこの国は滅ぶからだ。ダーカンドラの侵攻によってな」
あっさりとクフリオスの滅亡を告げるラドス。それは、両国間での戦争が始まったということでもあった。
「そんな…」
「少し待っていろ、今すぐ転移の魔法陣を床に刻むからなぁ」
そう言うと、ラドスはその言葉通りに拷問室の床に何かを刻み始める。
「!?…お前…魔族か?…魔法なんて…ずっと空想だとおもってたが」
前に、「人間に扱うことの出来ない奇跡の高等技術を行うことのできる種族が存在する」という文献を読んだ時だ。ラドスが今まさに床に刻みつけているのと似た様な紋章を見た事がある。それは汚らわしい血族の魔族にしか扱えない術だと…
シオンはラドスの描く魔法陣を見つめながら、嘗て学んだ「魔族」の存在を思い出す。そして、ラドス自身がその魔族であるという疑念を抱く。
「まぁ、貴様ら下等な生物には到達出来ぬ次元の力だ。私の正体も大体分かった事だし、誠心誠意その身を捧げる気になったか?」
ラドスはだからどうしたという様な口調でシオンにそう告げ、自身が伝説の種族であることを知った上で、魔法陣を描きながら改めてその身を潔く捧げる気になったかとシオンに尋ねる。
「ざけんなっ!魔族だからってぇ…俺はぁ…絶対にぃ…お前の奴隷になんて…言いなりになんてぇならねぇ…からなぁ…」
空想の産物だと思っていた魔族を目に前に、シオンもだからどうしたという意気込みでラドスの言葉を突っぱねた。
「そうそう、そうやって強気になってもらわないと責めがいがないぞ」
ラドスは魔法陣を完成させたのか、満足げな笑みを浮かべてそう言いながら、再び三角木馬に掲げられたシオンの元に近づき、先程と同様に陰部を締め付ける糸を引っ張る。
「やぁ!んぁぁああぁ!やめぇろぉおおぉ!」
「ふふ、続きはたっぷり転移先でやってやる。そうだ、次の責めは魔法で操られたロイとチンコをしゃぶり合う。どうだ?いいだろう?」
ニヤリと笑みを浮かべ、床に倒れているロイの方を見ながらシオンにそう言うラドス。
「この下衆野郎ぅ…」
頼みの綱のロイまでラドスに捕まり、二人セットで性玩具にされることに絶望するシオン。
一方、転移魔法に使う魔法陣を完成させたラドスは、ついに呪文の詠唱を開始し始めた。
「さて、時間だ………闇に繋がりし冥府の門よ、今ここに次元と次元を繋ぐ柱を築きたまえ!ディ・ヌフォーボゥド!」
全ての準備が整い、ラドスがいよいよ転移魔法を発動させる。すると、床に刻まれた魔法陣が妖しく輝き始め、ラドス達を黒い霧で包みこみ始めた。だが、その霧は突如力を失った様に薄れ始め、次の瞬間には一斉にラドスの身体に纏まり着く様にして襲いかかる。
「?…なんだ?」
悶え苦しみ始めるラドスを何事かと見つめるシオン。
「ぐあぁぁ…何?どういうことだぁ…転移魔法が使えないだと…ぐぅ」
自らが放った呪文に襲われ、その場に倒れこむラドス。ラドスを覆う黒い霧は一向に消える気配が無く、寧ろラドスの身体をどんどん黒く塗りつぶす様にして膨脹していく。
「僕が何の下調べもせずにノコノコお前の前に現れたと思うか?」
「ロイ!」
シオンが声のする方を見ると、さっきまで床に倒れ込んでいたハズのロイがいつの間にか意識を取り戻し、勝ち誇った表情で仁王立ちしていた。
「貴様ぁ…何をしたぁ…ぐぁあぁああぁ!」
黒い霧に包まれ、薄れゆく意識の中でロイを凝視しながらそう問いただすラドス。その問いに、苦しみもがくラドスを見下ろしながらロイは得意げな表情で解説し始めた。
「事前にダーカンドラの悪魔払いに結界を張らせていたんだ。お前のお得意の魔法は使えないぞ。もし、強引に術を発動させれば…分かるよな?シオンのとこまで案内御苦労さん」
「くそぉ…」
まんまとロイの策略にハマってしまったラドスは、悔しそうな表情を浮かべながら黒い霧に身体を犯されていき完全に意識を失った。
「はぁ、シオン。やっぱり僕が居ないとダメダメだね」
メガネをカチャカチャと上下に揺らしながらそう言ってシオンの元に近づくロイ。一方、見っとも無い姿で拘束されているシオンは、顔を真っ赤に染めながら見苦しい言い訳で弁解し始める。
「う、うるせぇ!ホントはワザと捕まったんだよ…」
「ふーん、ワザとねぇ…それじゃ「んぁあぁあぁ!」って鳴いたのも演技?」
シオンの俯いた顔を覗き込み、半笑いでそう尋ねるロイ。
「…そ、そうだ…」
あきらかに意地を張っているのがバレバレだが、シオンはプイっとロイの視線を避ける様にして顔をそらす。
「なんだ、それなら僕がその責め具から解放してあげなくても大丈夫だね」
「えっ…いや…」
ロイの切り返しに思わず反応するシオン。
「じゃ、僕は先にクノ王を連れて混乱を収めに行くから。シオンは飽きるまでそれに跨ってな」
ロイはそう言うと、三角木馬に拘束されているシオンに背を向け、倒れているクノの方に向かって歩き出す。すると、シオンは慌てた表情を浮かべてロイを呼びとめる。
「…あぁーもうぉ!さっさと助けろよ、インテリメガネ!俺は本当に捕まってるんだよ!んぁっ!」
「それが助けに来た人に言う台詞?」
チラッとシオンの方に振り返ってそう尋ねるロイ。どうやら「インテリメガネ」とロイの事を呼ぶのは禁句の様だ。
「うっ…それは…助けて…さい」
同期の元親友で、今はライバルであるロイに助けを求めるのがよっぽど恥ずかしいのか、シオンは小声でロイに助けてと懇願する。だが、悪ノリしたロイはそれを聞こえないと一蹴。
「えっ?聞こえないよ?何て言ったのかな?」
「あぁ…うぅ…さい…た、助けてください!」
ついに観念したのか、涙目でロイに大声で助けを求めるシオン。それを聞いたロイは、やれやれといった様な表情を浮かべながらシオンの方に振り返る。
「もぉ、最初から素直にそう言えばいいのに…」
その後、ロイの手によって陰部に巻きつけられた糸は丁寧に取り払われ、腕の拘束も解かれたシオンはついに恥辱の責めから解放された。
「はぁ…やっと降りられた…痛てぇ…」
長時間に渡って痛めつけられたシオンの身体は限界に達していたのか、三角木馬から降ろされると力無くその場に倒れこむシオン。
「ほら、裸じゃ恥ずかしいでしょ」
倒れ込んだシオンの惨めな姿を哀れに思ったのか、ロイは咄嗟に身に着けていたマントを外し始め、シオンの身体にそれを覆いかぶせる。
「あ、ありがとう…っ!ロイ後ろ!」
安堵の表情を浮かべながらロイに感謝するシオンだが、ロイの背後に迫る危機に声を荒げる。
「えっ…」
ドン
シオンの声に反応して咄嗟に後ろを振り返ったロイだったが、振り向いた瞬間に瀕死のラドスによって頭部を殴打され意識を失うロイ。
「テメェ!よくもロイ…なっ!!」
ふらふらと立ち尽くすラドスを睨みつけるシオンだったが、以前の姿からは想像できないラドスの変わり果てた姿に絶句するシオン。
「ククク、こうなったら全員ここで殺してやる…最高に恥ずかしくてキツイ拷問を行った後になぁ!」
ドロドロと急速に腐敗する身体を引きずりながら、今にもこぼれ落ちそうな眼球でシオンを睨みつけるラドス。果たして3人の運命は如何に…
強気な姿勢でシオンの行方やクフィリオスの国内情勢についてズカズカとランドに意見するロイ。一方、ラドスの方もロイの勢いに呑まれまいと強気に出る。
「言っている意味が…シオン将軍は既にクフィリオスを発っただけでしょう?道中お会いになりませんでしたか?それと、こんな騒ぎになったのはハッキリ言ってダーカンドラの方々が部隊を率いて我が国の領土に踏み言ったからですよ?」
ロイの追求にシオンは既にクフリオスから発った説明するラドス。さらには、一連の騒ぎはダーカンドラ軍の動きによるものだとロイに牽制する。
「こちらに戦闘の意思が無いのは十分にご承知のハズでは?クノ王にもダーカンドラ王からの親書を…」
「どのように判断するか決めるのは王様です。そちらの都合で一方的に話を進めるのはどうかと思いますが?」
「そうですか…そういうことなら「シオン」を力ずくでも返してもらいますよ」
どういう訳か、突然ロイはシオンが城に居ると確信を持ったうえで、シオンを返さなければ力ずくで奪い返すとラドスに詰め寄る。
「ですから…」
何を言っているんだという表情でロイを見つめながら反論態勢をとるラドスだが、直後に追い打ちをかける様な言葉を立て続けにロイに浴びせられ、言葉を詰まらす。
「王の親書をなんであれ拒んだということは、それを運んできた者は確実に囚われるハズ。正直に話してくだい。シオン将軍はこの城に囚われているのでしょう?」
「ぐっ…」
「貴方の口から聞けないのなら、直接クノ王にご説明いただきたいのだが?」
中々シオンの居場所を話そうとしないラドスに対し、直接クノに上奏すると言い始めたロイ。一方、クノに面会させる訳にもいかず、かといってこれ以上シオンの行方について誤魔化せないと悟ったラドスは、不本意ながらも控えているドリスとロンドに指示を出す。
「…ドリス!ロンド!ロイ以外は皆殺しにしろ」
「待ってましたぁ!」
「それでこそラドス様」
ラドスの合図と共に、隠し持っていた暗器を手にロイ達に襲いかかるドリスとロンド。突然の奇襲に驚きながらも、ロイは控えている騎士達に迎撃の指示を出そうとする。
「なっ!…戦闘態勢に…」
「生意気なクソガキ!たっぷり調教して従順な奴隷にしてやるからな」
本性を露わしたラドスの魔手がロイの華奢な首根っこをガッシリと掴む。
「いつの間に…がぁ!」
ドリスとロンドの攻撃によって護衛の騎士達から孤立してしまったロイは、意図も簡単にラドスの手中に落ちてしまい、容赦無いラドスの一撃によって意識を失ってしまった。
「ロイ様!お前達、何をしている!相手はたった3人だぞ!軍師様を救出しろ!」
騎士達は捕らわれたロイを救出しようと奮闘するが、ドリスとロンドの怒涛の攻めによって隊列を完全に乱され、ラドスに辿りつけさえしない。
「先に頭を叩けば…後は烏合の衆ってなぁ!」
「ふん、この程度の人数では相手になりませんよ」
歴戦の騎士達相手に余裕を見せて戦う二人。しかし、迫りくる騎士達を全滅させるには至らず、それを見かねたラドスは二人にこの場を任せると伝える。
「二人とも、後は頼んだぞ」
「お任せくださいラドス様」
キィンという金属音と兵士たちの騒ぎ声が途絶えることのないクフィリオス城内。ラドスは意識を失ったロイを担ぎ、そのまま振り返ることも無く城内に姿を消していった。
騒がしい城内の中を、ロイを担ぎながら淡々と進んでいくラドス。その道中、クフリオスの宰相であるラドスに兵士や大臣などが城内の騒ぎについて質問するが、ラドスは駆け寄る家臣を邪魔だと言わんばかりに次々と惨殺していった。
「この国を足がかりにダーカンドラをも手中に収めようかと考えていたが…ふん、これでクフィリオスも終わりだな。まぁいい、極上のペットが2匹手に入ったんだ」
ぶつぶつ小言を言いながら、シオンを監禁している部屋に繋がっている隠し通路を足早に進むラドス。
「見つけたぞ、ラドス!」
「?」
突如、誰も居ないハズの通路に響き渡る声。ラドスは声のした方に振り返ると、そこにはシオンを助けに向かう最中のクノと数人の武装した兵士達の姿があった。
「王様…この様な場所に何用です?そんなに兵士を引き連れて」
「お主こそ、ここで何をしておったのだ?シオンの拷問か?」
クノの全て知っているという様な趣旨の問いに、思わず顔を引きつらせるラドス。そして、再びブツブツと独り言の様なことを言い出し始める。
「…思った様に事が運んだと思えばロイが、そして今度は貴方ですか王様…いや、クソガキ!」
ラドスが憤怒した瞬間、突然ラドスの身体からクノ達目掛け、不気味に黒光りする槍の様な鋭い触手が勢いよく飛び出す。
「ぐあぁああぁああぁ!」
この世のモノとは思えないその触手は、クノを除くその場に居た全ての兵士達に容赦なく襲いかかり、兵士達の命が果てるまでその身体をズブズブと突き刺し続ける。
「くっ…お主は一体…」
予期せぬラドスの異形の姿を目にし、言葉を失うクノ。
「ふふ、お前の私のペットにしてやるよ」
ラドスはニヤリと笑みを浮かべてそう言うと、兵士達の惨殺を行っていた触手の一本をクノに差し向け、クノの身体を触手でグルグル巻きに絡めとり、死なない程度に締め上げた。
「…あぁっ!」
幼い身体には耐えがたい苦痛だったのか、クノは対した抵抗も出来ずに締め上げられた直後に意識を失う。
「はぁぁあんっ!んぁぁああぁ!」
もうすぐクノ王が助けを呼んで来てくれる…それまでの辛抱だ…それまでの…
しかし、拷問室の扉から入って来たのは待ちに待ったクノ王じゃなく、あのラドスだった。
「どうだ、シオン?快楽地獄のお味は?あぁーそうだ、一人じゃさみしいと思ってお友達を連れてきてやったぞ」
シオンが監禁されている拷問室にたどり着いたラドスは、さっそくシオンに意識の無いロイとクノの姿をチラつかせる。
「ラドスぅ…っ!ロイ?それにクノ王?どういうことだ!」
助けを呼びに行ったクノ王に加え、本国に居るハズのロイまでラドスによって捕まってしまった事に動揺するシオン。
「どういうこともなにも、こいつらも今日からお前同様に私のペットになってもらうのさ」
三角木馬に相変わらず全裸で掲げられているシオンを、舐めまわす様にいやらしい眼差しで見つめながらそう言うラドス。
「ふざけるな!くぅ…二人を…解放しろぉ!」
悪戯された性器から伝わる刺激に悶えながら、ラドスに二人を解放しろと訴えるシオン。
しかし、無論それをラドスが聞き入れる訳は無く、ラドスはシオンに近づきこう言う。
「三角木馬に跨りながら、全裸で性器をビンビンにたたせている奴の台詞か?あぁんっ?」
ラドスはシオンの耳元でそう呟くと、シオンの性器と両乳首を結ぶ糸を摘み上げてグイグイと意地悪く引っ張る。
「くぁああぁあぁ!やめぇえぇ!」
謎のクスリで身体の感覚を敏感にされた挙句、性器と両乳首を結ぶ糸をラドスのよって引っ張られ、モジモジと身体を揺らしながら悲鳴混じりの喘ぎ声を上げるシオン。
「さぁ、これからが地獄の始まり…っと、本来だったらここでゆっくりとお前達を料理しているところだが、こちらにも事情があってね。すぐにでもクフィリオスを発たねばならなくなったのだよ」
性器への責めに悶え苦しむシオンを万弁の笑みで見つめながら責め立てていたラドスだが、
どういう訳かシオンへの責めを早々に止め、突然シオンに向かってそう言いだす。
「どういう…こと…だぁ?」
「もうすぐこの国は滅ぶからだ。ダーカンドラの侵攻によってな」
あっさりとクフリオスの滅亡を告げるラドス。それは、両国間での戦争が始まったということでもあった。
「そんな…」
「少し待っていろ、今すぐ転移の魔法陣を床に刻むからなぁ」
そう言うと、ラドスはその言葉通りに拷問室の床に何かを刻み始める。
「!?…お前…魔族か?…魔法なんて…ずっと空想だとおもってたが」
前に、「人間に扱うことの出来ない奇跡の高等技術を行うことのできる種族が存在する」という文献を読んだ時だ。ラドスが今まさに床に刻みつけているのと似た様な紋章を見た事がある。それは汚らわしい血族の魔族にしか扱えない術だと…
シオンはラドスの描く魔法陣を見つめながら、嘗て学んだ「魔族」の存在を思い出す。そして、ラドス自身がその魔族であるという疑念を抱く。
「まぁ、貴様ら下等な生物には到達出来ぬ次元の力だ。私の正体も大体分かった事だし、誠心誠意その身を捧げる気になったか?」
ラドスはだからどうしたという様な口調でシオンにそう告げ、自身が伝説の種族であることを知った上で、魔法陣を描きながら改めてその身を潔く捧げる気になったかとシオンに尋ねる。
「ざけんなっ!魔族だからってぇ…俺はぁ…絶対にぃ…お前の奴隷になんて…言いなりになんてぇならねぇ…からなぁ…」
空想の産物だと思っていた魔族を目に前に、シオンもだからどうしたという意気込みでラドスの言葉を突っぱねた。
「そうそう、そうやって強気になってもらわないと責めがいがないぞ」
ラドスは魔法陣を完成させたのか、満足げな笑みを浮かべてそう言いながら、再び三角木馬に掲げられたシオンの元に近づき、先程と同様に陰部を締め付ける糸を引っ張る。
「やぁ!んぁぁああぁ!やめぇろぉおおぉ!」
「ふふ、続きはたっぷり転移先でやってやる。そうだ、次の責めは魔法で操られたロイとチンコをしゃぶり合う。どうだ?いいだろう?」
ニヤリと笑みを浮かべ、床に倒れているロイの方を見ながらシオンにそう言うラドス。
「この下衆野郎ぅ…」
頼みの綱のロイまでラドスに捕まり、二人セットで性玩具にされることに絶望するシオン。
一方、転移魔法に使う魔法陣を完成させたラドスは、ついに呪文の詠唱を開始し始めた。
「さて、時間だ………闇に繋がりし冥府の門よ、今ここに次元と次元を繋ぐ柱を築きたまえ!ディ・ヌフォーボゥド!」
全ての準備が整い、ラドスがいよいよ転移魔法を発動させる。すると、床に刻まれた魔法陣が妖しく輝き始め、ラドス達を黒い霧で包みこみ始めた。だが、その霧は突如力を失った様に薄れ始め、次の瞬間には一斉にラドスの身体に纏まり着く様にして襲いかかる。
「?…なんだ?」
悶え苦しみ始めるラドスを何事かと見つめるシオン。
「ぐあぁぁ…何?どういうことだぁ…転移魔法が使えないだと…ぐぅ」
自らが放った呪文に襲われ、その場に倒れこむラドス。ラドスを覆う黒い霧は一向に消える気配が無く、寧ろラドスの身体をどんどん黒く塗りつぶす様にして膨脹していく。
「僕が何の下調べもせずにノコノコお前の前に現れたと思うか?」
「ロイ!」
シオンが声のする方を見ると、さっきまで床に倒れ込んでいたハズのロイがいつの間にか意識を取り戻し、勝ち誇った表情で仁王立ちしていた。
「貴様ぁ…何をしたぁ…ぐぁあぁああぁ!」
黒い霧に包まれ、薄れゆく意識の中でロイを凝視しながらそう問いただすラドス。その問いに、苦しみもがくラドスを見下ろしながらロイは得意げな表情で解説し始めた。
「事前にダーカンドラの悪魔払いに結界を張らせていたんだ。お前のお得意の魔法は使えないぞ。もし、強引に術を発動させれば…分かるよな?シオンのとこまで案内御苦労さん」
「くそぉ…」
まんまとロイの策略にハマってしまったラドスは、悔しそうな表情を浮かべながら黒い霧に身体を犯されていき完全に意識を失った。
「はぁ、シオン。やっぱり僕が居ないとダメダメだね」
メガネをカチャカチャと上下に揺らしながらそう言ってシオンの元に近づくロイ。一方、見っとも無い姿で拘束されているシオンは、顔を真っ赤に染めながら見苦しい言い訳で弁解し始める。
「う、うるせぇ!ホントはワザと捕まったんだよ…」
「ふーん、ワザとねぇ…それじゃ「んぁあぁあぁ!」って鳴いたのも演技?」
シオンの俯いた顔を覗き込み、半笑いでそう尋ねるロイ。
「…そ、そうだ…」
あきらかに意地を張っているのがバレバレだが、シオンはプイっとロイの視線を避ける様にして顔をそらす。
「なんだ、それなら僕がその責め具から解放してあげなくても大丈夫だね」
「えっ…いや…」
ロイの切り返しに思わず反応するシオン。
「じゃ、僕は先にクノ王を連れて混乱を収めに行くから。シオンは飽きるまでそれに跨ってな」
ロイはそう言うと、三角木馬に拘束されているシオンに背を向け、倒れているクノの方に向かって歩き出す。すると、シオンは慌てた表情を浮かべてロイを呼びとめる。
「…あぁーもうぉ!さっさと助けろよ、インテリメガネ!俺は本当に捕まってるんだよ!んぁっ!」
「それが助けに来た人に言う台詞?」
チラッとシオンの方に振り返ってそう尋ねるロイ。どうやら「インテリメガネ」とロイの事を呼ぶのは禁句の様だ。
「うっ…それは…助けて…さい」
同期の元親友で、今はライバルであるロイに助けを求めるのがよっぽど恥ずかしいのか、シオンは小声でロイに助けてと懇願する。だが、悪ノリしたロイはそれを聞こえないと一蹴。
「えっ?聞こえないよ?何て言ったのかな?」
「あぁ…うぅ…さい…た、助けてください!」
ついに観念したのか、涙目でロイに大声で助けを求めるシオン。それを聞いたロイは、やれやれといった様な表情を浮かべながらシオンの方に振り返る。
「もぉ、最初から素直にそう言えばいいのに…」
その後、ロイの手によって陰部に巻きつけられた糸は丁寧に取り払われ、腕の拘束も解かれたシオンはついに恥辱の責めから解放された。
「はぁ…やっと降りられた…痛てぇ…」
長時間に渡って痛めつけられたシオンの身体は限界に達していたのか、三角木馬から降ろされると力無くその場に倒れこむシオン。
「ほら、裸じゃ恥ずかしいでしょ」
倒れ込んだシオンの惨めな姿を哀れに思ったのか、ロイは咄嗟に身に着けていたマントを外し始め、シオンの身体にそれを覆いかぶせる。
「あ、ありがとう…っ!ロイ後ろ!」
安堵の表情を浮かべながらロイに感謝するシオンだが、ロイの背後に迫る危機に声を荒げる。
「えっ…」
ドン
シオンの声に反応して咄嗟に後ろを振り返ったロイだったが、振り向いた瞬間に瀕死のラドスによって頭部を殴打され意識を失うロイ。
「テメェ!よくもロイ…なっ!!」
ふらふらと立ち尽くすラドスを睨みつけるシオンだったが、以前の姿からは想像できないラドスの変わり果てた姿に絶句するシオン。
「ククク、こうなったら全員ここで殺してやる…最高に恥ずかしくてキツイ拷問を行った後になぁ!」
ドロドロと急速に腐敗する身体を引きずりながら、今にもこぼれ落ちそうな眼球でシオンを睨みつけるラドス。果たして3人の運命は如何に…