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Secret Garden 生意気メイド (妖かし洋館 序章)
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生意気メイド (妖かし洋館 序章)

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人里離れた山中にひっそりと佇む洋館。その洋館は、まるで人目を避けているかのように周囲の木々に埋もれており、嘗て庭園だったと思われる場所は既に大半が森の一部と化している。一見、廃墟にも見えるその洋館は、まるでおとぎ話に登場する不気味な幽霊屋敷をそっくりそのまま再現した様な場所だった。



「カツミ!またサボってるのか!!」

洋館の中から漏れる男の声。

「おい!返事ぐらいしろよ!」

外観の荒れ様からは想像出来ないほど綺麗な洋館内。先程から騒いでいる男は「カツミの部屋」と書かれた、あからさまに後付けされたと思われる粗末な札が打ち付けてあるドアの前で、ドンドンとドアを叩きながら中に居るカツミと呼ばれる人物を呼びつける。

「カツミ!勝手に開ける…ブハッ!」

男がマスターキーらしきモノで施錠されたドアを開けようとした瞬間。閉ざされていたドアが勢いよく開かれた。無論、ドアの前に居た男はドンっと赤い絨毯が敷き詰められた廊下に勢いよく吹き飛ばされる。

「痛てぇ…」

「うるさいぞ!今日は休みだろ?」

勢いよく開かれたドアの中から出てきたのは、片手に枕を抱えた水玉模様のパジャマを着込んだかわいらしい男の子だった。

「カツミ…」

この子の名前は久川 勝美。俺の親戚の子供なんだけど、血縁関係は無いと言ってもイイほど遠い親戚だ。ところで、なぜその子が家に居るかと言うと…

カツミの両親は共にギャンブル依存症とういうタチの悪い病にかかり、貯金も何もかも食い潰した後にギャンブル資金目当てで血縁者に手当たり次第金を貸してくれと頼み歩いていた。その際にどこからか聞きつけたのか、遠い親戚の俺が巨額の富を得ているという情報を得て、とうとう俺にまで辿り着く。まぁ、常識的に考えて俺が金を出すことは無いハズだったんだけど…なんというか、断りきれずに結果的に貸してしまったのだ。

…と、ここまでの話は別にどうでもいいことなんだけど、本題はここからだ。俺が金を貸した一週間後、カツミの両親から荷物が送られてきた。開けるまでは何処かの特産品かなんかだと思っていた俺だが、いざそれを開封してみると…何と荷物の中にガムテープでグルグル巻きにされた男の子が入っていたのだ。しかも、同封されていた手紙には…

「勝美を半永久的に頼みます」

と、だけ書いてあった。金を借りて子供の世話まで押し付けるなんて…それは勝手極まりないというレベルを遥かに凌駕していた。まぁ、こんな感じで俺(神島 ツトム)とカツミの同居生活は始まった訳であります。


「お前が週末は好きにしていいって言ったんだろう。もう忘れたのか?」

「あっ!…ゴメン」

廊下に倒れたままのツトムはハッと思いだしたような表情を浮かべ、ドアの前で膨れっ面を浮かべているカツミに謝る。すると、カツミは無言でドアノブを握りしめ、勢いよく自室のドアを閉めた。

バタンっ!

「はぁ…」

1人廊下に残されたツトムは上半身を俯かせてため息をつくと、ゆっくりとその場に立ち上がり、一瞬だけチラッとカツミの部屋の方に視線を向けてトボトボと来た道を帰って行く。

そもそも、カツミに親代わりである俺が「お前」呼ばわりされるのには理由がある。あれは半年前のことだったか…
当時、軽い人間不信に陥っていたカツミは新しい小学校にも通う事が出来ず。家でひきこもる様にして生活していた。その後、6年生だったカツミは結局そのまま一度も学校に行くことは無く小学校を卒業することになり、中学からは通信制の学力支援プログラムを受けることに。ちなみに俺とカツミの関係が拗れたのはちょうどその頃だ。それまでは年の差がそれ程ない俺の事を「お兄ちゃん」と呼び、唯一俺にだけは心を開いてくれていたカツミ。そう、全ては「アレ」を見られてから激変した。


~半年前~

「お兄ちゃんの部屋って…」

ツトムの部屋の前でブツブツ何かを言っているカツミ。なぜカツミが部屋に入らないのかというと、それはツトムによって禁止されているからである。その理由は仕事場だからということだが…

「どうしよう…少しだけならいいよね?」

長い引きこもり生活で常に退屈感を露わにしていたカツミは、全て知り尽くした狭い箱庭の中で今だに見たことも、入ったことも無いツトムの部屋に徐々に関心を抱いていき、ついには入室が禁止されているのにも関わらず部屋の鍵を探し出し、ついにツトムの部屋に侵入を試みようとしていた。

カチッ

鍵穴に鍵を差し込み、鍵をゆっくりと回転させてツトムの部屋の封印を解くカツミ。この時、カツミの興奮した心臓はドクンドクンと脈打ち、身体は内から沸き上がる何とも言えない背徳感でピクピクと震え出す。

「開いた!ゴメンね、お兄ちゃん…」

少し汗ばんだ右手でツトムの部屋のドアノブを掴むカツミ。そして、一言ツトムへの謝罪の言葉を告げて一気にドアを開く。と次の瞬間、カツミの澄んだ瞳の中に想像も絶するような光景が広がる。

「えっ?…何?…」


…まぁ、結論から言うと俺が「ショタコン」だってことがカツミにバレてしまった訳だ。それからといもの、俺はカツミに変態扱いされた挙句に口も聞いてくれなくなった。それで困った俺がとった行動は…

「カツミ、カツミ!」

しばらくはカツミと距離を取っていたツトムだが、意を決して自室で勉強していたカツミにどうにか弁解しようと詰め寄るツトム。だが、そんなツトムをカツミは受け入れられずにいた。

「触るな!こ、この変態!俺にやさしくしてくれていた本当の理由って…」

涙目でツトムの腕を振りほどき睨み付けるカツミ。これまで見ず知らずの自分の親代わりになってくれた理由が「自分の体目当て」なんだと思いこんだカツミのツトムへの拒絶振りは相当なものだった。その場に漂う険悪なムードは、もはや修復不可能な二人の関係を静かに物語っているようだ。それからしばらくの沈黙が流れた後、ツトムがその沈黙を破る。

「そうだよ…俺がカツミを引き取ったのは俺の専属メイドにしようって考えていたからだ。それに、カツミの両親が俺にカツミを売り飛ばしたんだよ?ちゃんと借金の分ご奉仕してもらわないと」

「なっ…」

ツトムの発言に言葉を失うカツミ。

俺はもうどうにでもなれって思いで、カツミと暮らす以前から夢見ていた「男の子のメイドと同居」という妄想話をカツミに話してしまったが…案の定、カツミはその話を聞くや否や部屋を飛びだしていった。

「あぁ…なんか終わったな…終わった…」

俺はすっとカツミが座っていた椅子に腰掛け、天井をボー然と眺めながら何かも失ってしまったんだと思い返す。

「本物の男の子と同居出来たっていうのに…準血の繋がっていない兄弟になれたのに…さっさとあんなモノ捨ててしまえばよかったな」

「おい!泣いてるのか?」

「!?…か、カツミ!?どうして?出てったんじゃ…しかもその格好」

なんと、てっきり家から出ていったと思っていたカツミが再び俺の目の前に現れた。しかも、俺の部屋に飾っておいた何かのショタエロゲー特典で貰ったメイド服一式を身にまとった姿で。

「か、勘違いするなよ!俺は父さんや母さんの様に生きるのが嫌なだけなんだからな!借金はキッチリ俺が返す!ご、ご奉仕してやるから喜べよなぁ…ご、ご主人…様」

顔を真っ赤に染めながらツトムに突然そう告げるカツミ。ツトムはとんでもない急展開に思考が追い付くことが出来ず、エラーを起こしたロボットの様に固まっていた。

「???」

「な、何だよ!不満でもあるってぇのか!…まぁ、発狂して抱きつかれるよりマシだけどな」

その後、俺とカツミは人目を避けて今住んでいる山奥の洋館に引っ越すことに。ある意味ここから俺達の奇妙な同居生活は始まったといっていいだろう。そういえば、カツミが俺の事を「ご主人様」と呼んだのは今のところその時が最初で最後だ。別に強制している訳でも無いので、普段俺はカツミに「お前」と呼ばれている。せめて昔の様に「お兄ちゃん」と呼んでもらいたいものだ。

ところで、なぜに引っ越し先が洋館なのかというと「どうせ住むなら城っぽいとこがいい」というカツミの希望を最大に取り入れたためだ。お陰で週の三分の一程度を洋館の掃除に費やすハメになったが…




「はぁ、この洋館の未開拓ゾーンの掃除を手伝って貰おうとおもったんだけど…そうか、週末は好きに使っていいって言ったんだよな」

俺はその日の掃除を諦め、リビングのソファーに寝っ転がりながらガラステーブルの上に無造作に置かれたテレビのリモコンを手に取りテレビの電源をつけ、適当にあても無くチャンネルをポンポン回す。

「まだ昼前だから何もやってないか…フバッ!」

突然遮られる視界。何事かと思いバッと起き上がると、俺の座っているソファーの後ろにカツミがモップを持って仁王立ちしていた。

「おい、掃除行くぞ。休日返上で働くんだから特別手当出せよ」

「んぁ…あぁ」

間違い無くツンデレ属性を持っていると思うカツミだが、今だに「デレ」の部分を見たことが無い。これはツンツン属性だってことなのか?まぁ、何はともあれ今日もカツミと絡めてうれしい限りだけど。




第一話に続く…多分w

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Author:blue‐flag
Spec:2次ショタ大好きショタコン学生→オッサンに進化!

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