混血種の少年 その1
この野営陣に配置変えされてから早3日。特に大規模な戦闘などは行われず、戦争嫌いのの僕としては万々歳だ。まぁ、実際戦闘が始まっても、僕の任務は兵糧の管理だから戦う訳じゃ無いけど…
「んぅ…んぁ」
「またか」
食糧庫で兵糧のチェックをする少年兵に耳に届く奇妙な音。その音に少反応した少年兵は作業を中断し、そっと食糧庫から抜け出して周囲に点々と輝く松明の光を頼りに薄暗い野営陣を見渡す。
「う~ん、結構近いな」
ここに来てから毎日だが、日が暮れた後に何処からか情けない喘ぎ声のような物が聞こえてくる。正直、僕は昨日からその音源が気になってしょうがない。任務である兵糧数のチェックも落ち着いて行なえやしないってくらいに…だから、今日はその「声か音」の正体を確かめに行こうと思うんだ。
少年兵は微かに聞える音を頼りに、一人野営陣をウロウロと彷徨い歩く。
やがて、一つの明かりの灯っていないテントの前で足を止める少年兵。どうやら奇妙な音はこのテントから漏れていた音の様だ。
(なんで真っ暗?)
テントの中から人の気配と何かの呻き声の様な物が聞こえるが、なぜかテントの中は真っ暗。僕は恐る恐るそのテントに忍び足で近づき、そっと偶然見つけたテントの隙間から中の様子を窺う。
(何も…)
最初は覗きこんでも中の様子は暗くて分からなかったが、その時ちょうど雲に隠れていた月が都合良く姿を現し、野営陣全体を月明かりが照らしだす。それによって少年兵は中の様子を垣間見ることが出来た。
(あっ…)
しかし、月明かりによって照らされた暗闇のテントの中では少年兵の想像を絶するような光景が広がっており、それを目にした少年兵は思わずその光景を凝視する。
(!?ど、どういうことだ?子供が兵士に乱暴されているのか?いや、でもあれは…亞人?)
なんと、暗闇のテントの中で行われていたのは駐屯兵達による亞人への性的暴力だった。しかも、暴行されているのは少年兵と同じ年くらいの少年だ。それは殺伐とした戦場で一部の兵士が起こす厄介事の一つなのだろうが、年齢が年齢だけにその行為を目撃した少年兵はショックでその場に力なく座り込む。
(なんで…あんな酷いことを…)
「んぁ…んぅん…んぁぁあぁあ!!」
「へへっ、尻尾が性感帯なのは猫族と同じだな。ダラダラあそこからいやらしい汁を垂らしやがって…興奮するだろぉ」
「おい、そろそろ俺と場所代われよ!手こきじゃ満足できねぇ」
(くっ…)
テントの外に漏れる内部の外道なやり取りにだんだんと怒を感じていく少年兵。一方、外で少年兵がテント内の様子を窺っていることなど知らない3人の兵士達は、当然の様な態度で亞人の少年をタライ回しに凌辱し続ける。
(あの子を助けないと…亞人だからってほっとけないよ!)
僕は、どうにかして中で暴行されている亞人の少年を助けられないかと考え、ある事を思いつく。
「敵襲!敵の襲撃だ!各自持ち場に急行せよ!」
突如、静まり返った野営陣に響き渡る敵襲を伝える大きな声。その直後、野営陣に張られた複数のテントから一斉に兵士達が飛び出し、野営陣は一瞬で活気溢れる軍事施設へと変貌を遂げた。
また、薄暗いテント内で亞人の少年を凌辱していた兵士達もその例外で無く、3人の兵士は慌ただしく服と鎧を身にまとい剣を片手にテントを飛び出していく。
「よっしゃ!今のうちにあの子を逃がさなくちゃ」
3人組みが遠退いて行くのを確認し、騒ぎに便乗して動き出す少年兵。そもそも、この混乱は少年兵が起こしたものであり、当然ながら野営陣は襲撃などされていない。少年兵はなるべく自身の起こした騒ぎが長続きするように天に願うと、目の前のテントの中に入り込む。
「ん?誰?」
テントの中に入ると、中にはボーッとした様子で少年兵を眺める亞人の少年の姿があった。
「もう大丈夫だよ!さぁ、早く今のうちにここから逃げるんだ」
亞人の少年は一糸纏わぬ全裸姿であり、その全身は白く濁った液体によって満遍なく汚されている。出来ればタオルや服を差し出してあげたいところだけど今はそんな余裕も無く、
僕はとにかく亞人の少年をここから今すぐ脱出させることを優先した。でも、そんな僕の申し出に対して亞人の少年は、思いもよらぬ返答を僕に告げる。
「…なんで?」
「えっ?えぇ!?」
亞人の少年の言葉に驚く少年兵。一瞬時が止まったかのように少年兵はその場に凍りつく。
「なんで逃げるの?」
「いや、だって…なんで…お前」
ポカンとした表情で僕を見つめてくる亞人の少年。騒ぎまで起こして連れだそうとしたのに…なんだかしらないけど余計なことだったようだ。でも、あんなことされて嬉しがる奴なんて居るか?いや、そんな奴が居る訳が無い!僕は即座にそう判断し直し、強引にでも亞人の少年を連れ出すことにした。
「ほら、行くぞ!さぁ!」
「わっぁ!離してよぉ」
「うるさい!君は黙って僕についてくればいいのっ!」
「う、うん…」
半ば強引に少年兵は亞人の少年の腕を掴むと、亞人の少年をまるで連れ去るようにして無理やりテントから連れ出す。そして、そのまま依然として誤報で混乱している野営陣内を自分の管理下である食糧庫まで人目を避けて連れ帰った。
「ここ何処?お兄ちゃんは?」
「…」
透き通った宝石の様な眼差しで少年兵を見つめ、少年兵に色々と問いかけてくる亞人の少年。一方、一時の正義感で勝手に亞人の少年を連れ出してしまった少年兵は、今更ながら冷静に自分の行ったことを振り返る。
うぅ、衝動的に亞人の少年を連れ出してしまったけど、正直「なぜ?こんなことを」で頭が一杯だ。僕は人員不足のアルバイトで階級も無いし…はぁ、これからどうしよう…
「ねぇ、ねぇ」
「なんだよ」
「お兄ちゃんは誰なの?お客サン?ここは何処?」
「えっと…僕はパック。この食糧庫の番人だよ。ところで君は捕虜かなにか?メチャクチャな乱暴を受けていたみたいだけど…」
「捕虜?乱暴?…僕はねぇ、兵士さん達にご奉仕していただけだよぉ♪」
「なっ…」
あれを笑顔でご奉仕?僕は一瞬、薬かなにかでこの子が操られているかと思った。でも、それは見当違いで…現実はもっと…
「あのねぇ、兵士さん達の棒から白いのがいっぱい出てくると、兵士さん達は僕を褒めてくれるんだよ!それに、お尻に…」
「もういいよ!そんな話…聞きたく無い」
聞けば、この亞人の少年は親も名前も無い天涯孤独の孤児で、育て親の商人の言い付けで男達の相手をしてきたらしい。まぁ、小さいころから毎日あたりまえの様にあんな行為させられていれば、こんな不思議ちゃん風になってしまっているのも納得できる。
(でも、これからどうしよう…もちろん商人の元に返すのは駄目だ)
亞人の少年の身の上を知ることが出来たパックは、急にその場に座り込んで目を瞑り、連れだした亞人の少年の今後のことについて真剣に考え始める。その間、肝心の亞人の少年は物珍しそうに食糧庫内をキョロキョロと見渡しはするが、決してパックから離れようとはしなかった。
そして、しばらくの沈黙の後、ついにパックはある決断を下す。
「僕の家に来ないか?」
「?」
パックが最終的に思いついたことは、亞人の少年を自らが引き取るという選択肢だった。その言葉に亞人の少年は「なぜ?」というような表情でパックを見つめているが、反対にその提案を拒むことも無い。というよりも、成長環境の要因なのか少年に何かを自身の判断で確定するような明確な自我は芽生えておらず、少し強引に迫れば安易に受け入れてしまう性質のようだ。
「とりあえず、食糧庫のアルバイトが終わるまで君は僕の子分ってことで。分かった?」
「う、うん…」
それから一週間後、上層部が危惧していた敵国からの襲撃はまったく無く、これ以上の駐屯は無意味だと判断され、パックの居る部隊は本国に撤退することになった。無論、その間パックは亞人の少年を兵士に変装させたり、色々と追手の目から逃れるために奔走。撤退が決まった時には駐屯兵の誰よりも喜んだと言う。
「んぅ…んぁ」
「またか」
食糧庫で兵糧のチェックをする少年兵に耳に届く奇妙な音。その音に少反応した少年兵は作業を中断し、そっと食糧庫から抜け出して周囲に点々と輝く松明の光を頼りに薄暗い野営陣を見渡す。
「う~ん、結構近いな」
ここに来てから毎日だが、日が暮れた後に何処からか情けない喘ぎ声のような物が聞こえてくる。正直、僕は昨日からその音源が気になってしょうがない。任務である兵糧数のチェックも落ち着いて行なえやしないってくらいに…だから、今日はその「声か音」の正体を確かめに行こうと思うんだ。
少年兵は微かに聞える音を頼りに、一人野営陣をウロウロと彷徨い歩く。
やがて、一つの明かりの灯っていないテントの前で足を止める少年兵。どうやら奇妙な音はこのテントから漏れていた音の様だ。
(なんで真っ暗?)
テントの中から人の気配と何かの呻き声の様な物が聞こえるが、なぜかテントの中は真っ暗。僕は恐る恐るそのテントに忍び足で近づき、そっと偶然見つけたテントの隙間から中の様子を窺う。
(何も…)
最初は覗きこんでも中の様子は暗くて分からなかったが、その時ちょうど雲に隠れていた月が都合良く姿を現し、野営陣全体を月明かりが照らしだす。それによって少年兵は中の様子を垣間見ることが出来た。
(あっ…)
しかし、月明かりによって照らされた暗闇のテントの中では少年兵の想像を絶するような光景が広がっており、それを目にした少年兵は思わずその光景を凝視する。
(!?ど、どういうことだ?子供が兵士に乱暴されているのか?いや、でもあれは…亞人?)
なんと、暗闇のテントの中で行われていたのは駐屯兵達による亞人への性的暴力だった。しかも、暴行されているのは少年兵と同じ年くらいの少年だ。それは殺伐とした戦場で一部の兵士が起こす厄介事の一つなのだろうが、年齢が年齢だけにその行為を目撃した少年兵はショックでその場に力なく座り込む。
(なんで…あんな酷いことを…)
「んぁ…んぅん…んぁぁあぁあ!!」
「へへっ、尻尾が性感帯なのは猫族と同じだな。ダラダラあそこからいやらしい汁を垂らしやがって…興奮するだろぉ」
「おい、そろそろ俺と場所代われよ!手こきじゃ満足できねぇ」
(くっ…)
テントの外に漏れる内部の外道なやり取りにだんだんと怒を感じていく少年兵。一方、外で少年兵がテント内の様子を窺っていることなど知らない3人の兵士達は、当然の様な態度で亞人の少年をタライ回しに凌辱し続ける。
(あの子を助けないと…亞人だからってほっとけないよ!)
僕は、どうにかして中で暴行されている亞人の少年を助けられないかと考え、ある事を思いつく。
「敵襲!敵の襲撃だ!各自持ち場に急行せよ!」
突如、静まり返った野営陣に響き渡る敵襲を伝える大きな声。その直後、野営陣に張られた複数のテントから一斉に兵士達が飛び出し、野営陣は一瞬で活気溢れる軍事施設へと変貌を遂げた。
また、薄暗いテント内で亞人の少年を凌辱していた兵士達もその例外で無く、3人の兵士は慌ただしく服と鎧を身にまとい剣を片手にテントを飛び出していく。
「よっしゃ!今のうちにあの子を逃がさなくちゃ」
3人組みが遠退いて行くのを確認し、騒ぎに便乗して動き出す少年兵。そもそも、この混乱は少年兵が起こしたものであり、当然ながら野営陣は襲撃などされていない。少年兵はなるべく自身の起こした騒ぎが長続きするように天に願うと、目の前のテントの中に入り込む。
「ん?誰?」
テントの中に入ると、中にはボーッとした様子で少年兵を眺める亞人の少年の姿があった。
「もう大丈夫だよ!さぁ、早く今のうちにここから逃げるんだ」
亞人の少年は一糸纏わぬ全裸姿であり、その全身は白く濁った液体によって満遍なく汚されている。出来ればタオルや服を差し出してあげたいところだけど今はそんな余裕も無く、
僕はとにかく亞人の少年をここから今すぐ脱出させることを優先した。でも、そんな僕の申し出に対して亞人の少年は、思いもよらぬ返答を僕に告げる。
「…なんで?」
「えっ?えぇ!?」
亞人の少年の言葉に驚く少年兵。一瞬時が止まったかのように少年兵はその場に凍りつく。
「なんで逃げるの?」
「いや、だって…なんで…お前」
ポカンとした表情で僕を見つめてくる亞人の少年。騒ぎまで起こして連れだそうとしたのに…なんだかしらないけど余計なことだったようだ。でも、あんなことされて嬉しがる奴なんて居るか?いや、そんな奴が居る訳が無い!僕は即座にそう判断し直し、強引にでも亞人の少年を連れ出すことにした。
「ほら、行くぞ!さぁ!」
「わっぁ!離してよぉ」
「うるさい!君は黙って僕についてくればいいのっ!」
「う、うん…」
半ば強引に少年兵は亞人の少年の腕を掴むと、亞人の少年をまるで連れ去るようにして無理やりテントから連れ出す。そして、そのまま依然として誤報で混乱している野営陣内を自分の管理下である食糧庫まで人目を避けて連れ帰った。
「ここ何処?お兄ちゃんは?」
「…」
透き通った宝石の様な眼差しで少年兵を見つめ、少年兵に色々と問いかけてくる亞人の少年。一方、一時の正義感で勝手に亞人の少年を連れ出してしまった少年兵は、今更ながら冷静に自分の行ったことを振り返る。
うぅ、衝動的に亞人の少年を連れ出してしまったけど、正直「なぜ?こんなことを」で頭が一杯だ。僕は人員不足のアルバイトで階級も無いし…はぁ、これからどうしよう…
「ねぇ、ねぇ」
「なんだよ」
「お兄ちゃんは誰なの?お客サン?ここは何処?」
「えっと…僕はパック。この食糧庫の番人だよ。ところで君は捕虜かなにか?メチャクチャな乱暴を受けていたみたいだけど…」
「捕虜?乱暴?…僕はねぇ、兵士さん達にご奉仕していただけだよぉ♪」
「なっ…」
あれを笑顔でご奉仕?僕は一瞬、薬かなにかでこの子が操られているかと思った。でも、それは見当違いで…現実はもっと…
「あのねぇ、兵士さん達の棒から白いのがいっぱい出てくると、兵士さん達は僕を褒めてくれるんだよ!それに、お尻に…」
「もういいよ!そんな話…聞きたく無い」
聞けば、この亞人の少年は親も名前も無い天涯孤独の孤児で、育て親の商人の言い付けで男達の相手をしてきたらしい。まぁ、小さいころから毎日あたりまえの様にあんな行為させられていれば、こんな不思議ちゃん風になってしまっているのも納得できる。
(でも、これからどうしよう…もちろん商人の元に返すのは駄目だ)
亞人の少年の身の上を知ることが出来たパックは、急にその場に座り込んで目を瞑り、連れだした亞人の少年の今後のことについて真剣に考え始める。その間、肝心の亞人の少年は物珍しそうに食糧庫内をキョロキョロと見渡しはするが、決してパックから離れようとはしなかった。
そして、しばらくの沈黙の後、ついにパックはある決断を下す。
「僕の家に来ないか?」
「?」
パックが最終的に思いついたことは、亞人の少年を自らが引き取るという選択肢だった。その言葉に亞人の少年は「なぜ?」というような表情でパックを見つめているが、反対にその提案を拒むことも無い。というよりも、成長環境の要因なのか少年に何かを自身の判断で確定するような明確な自我は芽生えておらず、少し強引に迫れば安易に受け入れてしまう性質のようだ。
「とりあえず、食糧庫のアルバイトが終わるまで君は僕の子分ってことで。分かった?」
「う、うん…」
それから一週間後、上層部が危惧していた敵国からの襲撃はまったく無く、これ以上の駐屯は無意味だと判断され、パックの居る部隊は本国に撤退することになった。無論、その間パックは亞人の少年を兵士に変装させたり、色々と追手の目から逃れるために奔走。撤退が決まった時には駐屯兵の誰よりも喜んだと言う。