青空の下で 円堂×立向居
「円堂さんがリベロ…」
立向居は一人グランドを離れ、ブツブツ独り言を言いながら半壊した雷門中内を当てもなく彷徨っていた。
俺がまぐれでムゲン・ザ・ハンドを出したせいで、円堂さんがキーパーを…
円堂さんは気にするなって言ってくれたけど、今まで雷門のゴールを守ってきたのは
紛れもなく円堂さんだ。やっぱり俺には…
元々のGKである円堂を差し置いて、自分が雷門のGKになることに抵抗を感じていた立向居は、守備の要であるGKというポジションへの重圧と円堂への負目に耐えられず、監督である瞳子にGKの辞退を伝えに行こうと決意する。
「どうした?立向居?」
「!?」
瞳子の元に向かおうとしたその時、不意に背後から呼び止められた立向居。その聞き覚えのある声は、立向居が今もっとも顔を合わせたくない人物であり、尊敬する先輩でもある円堂 守の声だった。
「え、円堂さん!」
慌てて声のする方に振り返る立向居。
「お前がフラフラとグランドから離れていくのを見かけてさ…どうしたんだよ?」
「それは…その……」
「お前が雷門のGKだ」
申し訳なさそうに俯く立向居を見て、円堂はすっと立向居に接近すると、やさしくポンと立向居の肩を叩いてそう告げた。
「えっ?」
円堂の発言に驚き、立向居は俯かせた顔をバッと上げて円堂を凝視する。
どうやら、円堂さんにはバレバレだったようだ。ポジションを監督の意向でチェンジされたのにも関わらず、文句一つ言わずにチームと勝利に尽くす円堂さん。それだけでも凄いのに、俺のことまで気にかけてくれるなんて…やっぱり円堂さんはスゴイ人だ!
「気にするなって言っただろう?それに、今はエイリアの連中を倒すのが先決だ。お前には才能があるんだよ、自信を持つんだ立向居!」
立向居の両肩をがっしりと掴み、力づよく励ます円堂。
「円堂さん……ハイっ!俺、絶対あの技を完成させてみせます!」
「よし、それなら早速俺と練習だ!ガンガン行くぜ!」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
その後、立向居はムゲン・ザ・ハンドを会得するため、円堂は新しいシュート技の構想を完成させるために、二人はこれでもかと言うほど激しい練習を繰り返し行った。
「はぁ、はぁ…技が出ない…」
ジリジリと大地を照らす太陽の下、既に受けたシュートの数すら忘れてしまうくらいに円堂の放った数多のシュートを受けきった立向居だが、依然としてムゲン・ザ・ハンドの会得には至らなかった。また、円堂の方も従来の技を超えるような強力なシュート技を生み出すことが出来ず、結果的に二人の体力だけが削られただけという厳しい現実が残る。
「なんたって究極奥儀だ。そう簡単には会得させてくれないさ…だから、諦めないで頑張って会得しようぜ!」
思うように技を出せず、ゴールネットの前に汗だくになりながらしゃがみ込んだ立向居に、円堂はそう言いながら近づき、すっと片手を立向居に向けて差し出す。
「円堂さん…」
円堂さんだって辛いのに…俺はこの程度でヘコたれてだらしない!俺は自分自身にそう言い聞かせ、感謝の気持ちを込めながら円堂さんの手を掴んだ。
「おっと、大丈夫か立向居!?」
「こ、これぐらい…なんでも…うぅ」
円堂の補助で立ち上がった立向居だったが、既にその体力は限界に達しており、円堂の手を離した瞬間に姿勢を崩す立向井。円堂は慌てて立向居腰に手を回して立向居の身体を支える。
「無理するな。そこのベンチで少し休もう」
「す、すみません円堂さん…」
立向居は円堂に支えられるようにして近くのベンチまで運ばれ、やがてたどり着いたベンチに二人はどんっと力無く座り込む。
「うぅ…」
「立向居?おい…居……」
ベンチに座り込むや否や、いきなり円堂の方に上半身を傾ける立向居。どうやら疲労で意識が保てなくなったようだ。立向居の視界から、自分の名を叫ぶ円堂の姿がどんどん霞がかっていき、ついには完全に見えなくなると同時に意識も途切れる。
(寝ちゃったんだ………………ん?なんだろう…この暖かい感触…!
あぁ…も、もしかして円堂さんに膝枕してもらっている???)
意識が戻ったと思ったら、なんと俺は図々しくも憧れの円堂さんに膝枕してもらっていた。
ここはスグにでも起き上って謝罪するべきなんだろうけど、こんな機会は滅多に無いっていうかみなさんも居ないし…
「立向居…お前はスゴイ奴だよ」
「!?」
立向居が目覚めているとは知らず、円堂は寝ている立向居に語りかける様にして突然そう言いだすと同時に、立向居の頭をやさしく撫で始める。
え、円堂さんに頭なでなでされちゃった!感激だ!…円堂さんには悪いけど、もう少しだけこのままにさせてもらおうかな…
「…俺なんかよりずっと」
「!」
立向居の頭を撫でていた手を止め、急に顔色を曇らせ始める円堂。
「正直、お前が羨ましい。俺は何度やっても駄目だったんだ…何も掴めなかった!」
(円堂…さん?)
「ムゲン・ザ・ハンド…俺にも出来れば!」
そうか、やっぱり円堂さんも人知れずあの技の特訓を続けていたんだ…たった一人で…
「…出来ますよ!円堂さんなら絶対出来ます!!」
何か思うことがあったのか、立向居は半ば反射的にその場に起き上がり、円堂に向かって大声でそう叫ぶ。
「た、立向居!お、起きていたのか!?」
「あっ…いや…すいません…」
予期せぬ事態に両手を上げて驚く円堂。一方、立向居はしまったというような表情を浮かべると共に、顔を真っ赤に染めて両手で口を塞ぐ。
「…」
普段は余程のことが無い限り動じない天然気質な円堂だが、チームメンバーの前では決して口にしないようなことを聞かれて動揺を隠せずに沈黙する円堂。しかも、それが同じGKである立向居なら尚更だろう。
「…」
後から考えてみれば一瞬のやり取りだったんだろうけど、俺にしてみれば時間が止まった様に感じられた。円堂さんも何か話さなきゃって顔をしてたけど、俺の方がガマン出来なくて…
一瞬の沈黙の後、先に沈黙を破ったのは円堂では無く立向居の方だった。
「い、いきなりこんなことを言うのもなんですが…え、円堂さんは俺にとって太陽なんです!それで、いつも俺を見守って照らしてくれて…その…俺は…大好きなんです!円堂さんが大好きなんです!」
憧れである円堂の、しかも、その眼前で話すということもあって終始に渡って緊張気味の立向居。聞く側の円堂もポカーンというような表情で立向居を見つめる。
「えっ…お前何言って…」
「はぁわわわっ!…す、すいません!!いきなり変なこと言いだして!…と、とにかく俺は、止まってる円堂さんよりも突っ走っている円堂さんが…」
「俺も好きだ」
立向居が再び意味不明な弁解をしている最中、円堂はボソリとそう呟いて立向居をギュッと抱きしめた。立向居は円堂からの突然の抱擁に、キョトンした表情を浮かべながら瞳をパチパチと瞬きさせる。
「へっ…!!」
「見っとも無い台詞聞かせちゃって悪かったな」
立向居の背中越しにそう告げる円堂。
「え、円堂さん!?」
「あぁ、いきなり抱き締めちゃったりしてゴメンな!そもそも、お前は俺に憧れているだけで…」
そう言いながら少し頬を赤く染め、すっと立向居を放す円堂。すると、円堂がしゃべり終わる前に今度は逆に立向居が円堂に勢いよく抱きついて耳元で呟く。
「愛してます…円堂さん」
「!……そっか」
立向居の対応に、円堂は一瞬ハッとした表情を浮かべた後、そっと一言告げて立向居を包み込むようにして手を回した。
湿ったユニフォームに当たる風は心地よくも少し肌寒いけど、今は円堂さんと共有しているこの感覚がたまらなく愛おしい…出来ればもう少し、もう少しだけこのまま二人っきりでいられれば…
言われる前に「きんもーっ☆」www
まだ、ズプズプヤリあってる文の方がマシか…
立向居は一人グランドを離れ、ブツブツ独り言を言いながら半壊した雷門中内を当てもなく彷徨っていた。
俺がまぐれでムゲン・ザ・ハンドを出したせいで、円堂さんがキーパーを…
円堂さんは気にするなって言ってくれたけど、今まで雷門のゴールを守ってきたのは
紛れもなく円堂さんだ。やっぱり俺には…
元々のGKである円堂を差し置いて、自分が雷門のGKになることに抵抗を感じていた立向居は、守備の要であるGKというポジションへの重圧と円堂への負目に耐えられず、監督である瞳子にGKの辞退を伝えに行こうと決意する。
「どうした?立向居?」
「!?」
瞳子の元に向かおうとしたその時、不意に背後から呼び止められた立向居。その聞き覚えのある声は、立向居が今もっとも顔を合わせたくない人物であり、尊敬する先輩でもある円堂 守の声だった。
「え、円堂さん!」
慌てて声のする方に振り返る立向居。
「お前がフラフラとグランドから離れていくのを見かけてさ…どうしたんだよ?」
「それは…その……」
「お前が雷門のGKだ」
申し訳なさそうに俯く立向居を見て、円堂はすっと立向居に接近すると、やさしくポンと立向居の肩を叩いてそう告げた。
「えっ?」
円堂の発言に驚き、立向居は俯かせた顔をバッと上げて円堂を凝視する。
どうやら、円堂さんにはバレバレだったようだ。ポジションを監督の意向でチェンジされたのにも関わらず、文句一つ言わずにチームと勝利に尽くす円堂さん。それだけでも凄いのに、俺のことまで気にかけてくれるなんて…やっぱり円堂さんはスゴイ人だ!
「気にするなって言っただろう?それに、今はエイリアの連中を倒すのが先決だ。お前には才能があるんだよ、自信を持つんだ立向居!」
立向居の両肩をがっしりと掴み、力づよく励ます円堂。
「円堂さん……ハイっ!俺、絶対あの技を完成させてみせます!」
「よし、それなら早速俺と練習だ!ガンガン行くぜ!」
「は、はいっ!よろしくお願いします!」
その後、立向居はムゲン・ザ・ハンドを会得するため、円堂は新しいシュート技の構想を完成させるために、二人はこれでもかと言うほど激しい練習を繰り返し行った。
「はぁ、はぁ…技が出ない…」
ジリジリと大地を照らす太陽の下、既に受けたシュートの数すら忘れてしまうくらいに円堂の放った数多のシュートを受けきった立向居だが、依然としてムゲン・ザ・ハンドの会得には至らなかった。また、円堂の方も従来の技を超えるような強力なシュート技を生み出すことが出来ず、結果的に二人の体力だけが削られただけという厳しい現実が残る。
「なんたって究極奥儀だ。そう簡単には会得させてくれないさ…だから、諦めないで頑張って会得しようぜ!」
思うように技を出せず、ゴールネットの前に汗だくになりながらしゃがみ込んだ立向居に、円堂はそう言いながら近づき、すっと片手を立向居に向けて差し出す。
「円堂さん…」
円堂さんだって辛いのに…俺はこの程度でヘコたれてだらしない!俺は自分自身にそう言い聞かせ、感謝の気持ちを込めながら円堂さんの手を掴んだ。
「おっと、大丈夫か立向居!?」
「こ、これぐらい…なんでも…うぅ」
円堂の補助で立ち上がった立向居だったが、既にその体力は限界に達しており、円堂の手を離した瞬間に姿勢を崩す立向井。円堂は慌てて立向居腰に手を回して立向居の身体を支える。
「無理するな。そこのベンチで少し休もう」
「す、すみません円堂さん…」
立向居は円堂に支えられるようにして近くのベンチまで運ばれ、やがてたどり着いたベンチに二人はどんっと力無く座り込む。
「うぅ…」
「立向居?おい…居……」
ベンチに座り込むや否や、いきなり円堂の方に上半身を傾ける立向居。どうやら疲労で意識が保てなくなったようだ。立向居の視界から、自分の名を叫ぶ円堂の姿がどんどん霞がかっていき、ついには完全に見えなくなると同時に意識も途切れる。
(寝ちゃったんだ………………ん?なんだろう…この暖かい感触…!
あぁ…も、もしかして円堂さんに膝枕してもらっている???)
意識が戻ったと思ったら、なんと俺は図々しくも憧れの円堂さんに膝枕してもらっていた。
ここはスグにでも起き上って謝罪するべきなんだろうけど、こんな機会は滅多に無いっていうかみなさんも居ないし…
「立向居…お前はスゴイ奴だよ」
「!?」
立向居が目覚めているとは知らず、円堂は寝ている立向居に語りかける様にして突然そう言いだすと同時に、立向居の頭をやさしく撫で始める。
え、円堂さんに頭なでなでされちゃった!感激だ!…円堂さんには悪いけど、もう少しだけこのままにさせてもらおうかな…
「…俺なんかよりずっと」
「!」
立向居の頭を撫でていた手を止め、急に顔色を曇らせ始める円堂。
「正直、お前が羨ましい。俺は何度やっても駄目だったんだ…何も掴めなかった!」
(円堂…さん?)
「ムゲン・ザ・ハンド…俺にも出来れば!」
そうか、やっぱり円堂さんも人知れずあの技の特訓を続けていたんだ…たった一人で…
「…出来ますよ!円堂さんなら絶対出来ます!!」
何か思うことがあったのか、立向居は半ば反射的にその場に起き上がり、円堂に向かって大声でそう叫ぶ。
「た、立向居!お、起きていたのか!?」
「あっ…いや…すいません…」
予期せぬ事態に両手を上げて驚く円堂。一方、立向居はしまったというような表情を浮かべると共に、顔を真っ赤に染めて両手で口を塞ぐ。
「…」
普段は余程のことが無い限り動じない天然気質な円堂だが、チームメンバーの前では決して口にしないようなことを聞かれて動揺を隠せずに沈黙する円堂。しかも、それが同じGKである立向居なら尚更だろう。
「…」
後から考えてみれば一瞬のやり取りだったんだろうけど、俺にしてみれば時間が止まった様に感じられた。円堂さんも何か話さなきゃって顔をしてたけど、俺の方がガマン出来なくて…
一瞬の沈黙の後、先に沈黙を破ったのは円堂では無く立向居の方だった。
「い、いきなりこんなことを言うのもなんですが…え、円堂さんは俺にとって太陽なんです!それで、いつも俺を見守って照らしてくれて…その…俺は…大好きなんです!円堂さんが大好きなんです!」
憧れである円堂の、しかも、その眼前で話すということもあって終始に渡って緊張気味の立向居。聞く側の円堂もポカーンというような表情で立向居を見つめる。
「えっ…お前何言って…」
「はぁわわわっ!…す、すいません!!いきなり変なこと言いだして!…と、とにかく俺は、止まってる円堂さんよりも突っ走っている円堂さんが…」
「俺も好きだ」
立向居が再び意味不明な弁解をしている最中、円堂はボソリとそう呟いて立向居をギュッと抱きしめた。立向居は円堂からの突然の抱擁に、キョトンした表情を浮かべながら瞳をパチパチと瞬きさせる。
「へっ…!!」
「見っとも無い台詞聞かせちゃって悪かったな」
立向居の背中越しにそう告げる円堂。
「え、円堂さん!?」
「あぁ、いきなり抱き締めちゃったりしてゴメンな!そもそも、お前は俺に憧れているだけで…」
そう言いながら少し頬を赤く染め、すっと立向居を放す円堂。すると、円堂がしゃべり終わる前に今度は逆に立向居が円堂に勢いよく抱きついて耳元で呟く。
「愛してます…円堂さん」
「!……そっか」
立向居の対応に、円堂は一瞬ハッとした表情を浮かべた後、そっと一言告げて立向居を包み込むようにして手を回した。
湿ったユニフォームに当たる風は心地よくも少し肌寒いけど、今は円堂さんと共有しているこの感覚がたまらなく愛おしい…出来ればもう少し、もう少しだけこのまま二人っきりでいられれば…
言われる前に「きんもーっ☆」www
まだ、ズプズプヤリあってる文の方がマシか…