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Secret Garden 少年の誇り 第一話 「避けられぬ罠」
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少年の誇り 第一話 「避けられぬ罠」

~数日後 クフィリオス城~

「ここがクフィリオスか…こんなに遠いとは思わなかったぜ。地図だとこんなに近いのになぁ」

ダーカンドラから数日かけてクフィリオス城の城門前までたどり着いたシオン。
思った以上の長旅に、ブツブツと愚痴を零しながら乗って来た馬から降りる。

「クフィリオスの周辺は山々に囲まれていますからね…」

「っ!アンタは?」

俺もそれなりに気配とかに敏感な体質なのだが、そいつはいきなり俺の前に現れ、涼しい顔して唐突に地形の説明なんてしてやがる。まるで、今まで俺と一緒に居た様な口振りで…

「私はクノ王に仕えております宰相のラドスです。衛兵からの知らせで、貴方をダーカンドラの使節団の方とお見受けしてお迎えに上がりました。…本隊は今どちらに?」

突然シオンの目の前に現れ、自らをクフィリオスの宰相と言うラドスと名乗る人物。どうやら見張りの兵からの伝令で城から出てきたということだが、どこか人離れした雰囲気が漂う男だ。

「いや、俺が今回の大使だ。出迎え御苦労だぞ」

「えっ?貴方様が…ですか?」

シオンを見下ろすラドスはその答えに興味深そうな眼差しで見つめる。

というのも、13歳のシオン単騎での行動ではさほど珍しくない対応であり、ごく普通のリアクションなのだが…ラドスの場合は少違った反応ともいえる素振りを振る舞う。
だが、そこまでは気が付いていないシオンは、いつも通りに不機嫌な顔をし、大人にしてみれば腹の立つ偉そうな態度をとる。

「そうだ、俺が……えっと、俺はこう見えてもダーカンドラの将軍だぞ?人を見かけで判断するのはどうかと思うぞ?」

「これは失礼しました。ご無礼をお許しください…ホント、あまりにも幼い容姿なものですから」

一瞬笑みを浮かべてそう言うラドス。

「…ふん、まぁいい。さっさと玉座に案内してくれ。クノ王宛ての陛下の親書を預かっているのでな」

コイツ、一瞬笑った?気持ちの悪い奴だ…とにかく面倒な仕事はさっさと終わらせて、城下町でいっぱい遊ぶぞー!

ラドス対応に少し不信感を抱くシオンであったが、任務後の自由時間の方にばかり気が行ってしまい、それ以上勘ぐろうとはしなかった。

「御意…」


その後、シオンはラドスに連れられ長い大理石の廊下を真っ直ぐに進んだ後、何度か階段と同じような通路を行き来し、ついにクノ王が居る玉座までたどり着く。


「王様、ダーカンドラ国より使者が参りました。…さぁ、お入りください」

扉越しにクノ王に向かってそう伝えたラドスは、扉の左右に立っている衛兵達に玉座に繋がる扉を開けさせ、シオンを玉座のある部屋に招き入れる。

「…なっ!」

進んだ先に広がっていた光景に絶句して歩みを止めるシオン。

豪華な装飾のされた室内の先にある高台。そこに「クノ王」と呼ばれる王が座っているのだろが…果たして今王座に腰かけている子供は一体…

シオンが絶句した理由。それは部屋を進んだ先にある玉座に座っていたのが、明らかに自分よりも年下の少年だったからである。そして、一瞬の沈黙の後、絶句しているシオンに向かって少年が話しかける。

「どうしたのだ?余の顔に何か付いておるのか?」

「い、いえ…こちらが陛下からの親書です。お納めください…」

少年の反応に、恐らくあの子供が「クノ王」だと思ったシオンは慌ててその場に膝まずくと、ダーカンドラ王から預かった親書をクノに差し出す。

すると、クノの指示で近くにた家来がさっとシオンに近寄り、シオンの前で一礼して親書をそっとシオンの手から受け取り、それを、まるで卵を扱うかの様に大事に両手で抱えながらクノの所まで持ち帰り、クノの眼前で膝まずいて親書を差し出した。

「うむ…。ふむ…ふむ…ふむ…読めん!」

家来から親書を受け取り、食い入るようにしてそれを読み始めるクノ。だが、すぐにその表情の雲行きは怪しくなっていき、挙句の果てに「読めん」と言い放って親書を家来につき返す。

「よ、読めないとは…」

あまりにも意味不明な状況に混乱するシオン。そもそも、眼の前の子供がクノ王であるのかということ自体に再び疑問を抱く。しかし、シオンがそのことを尋ねようとしたその時、間にラドスが割って入り、クノに膝まずいてこう言う。

「王様、私目にお任せください」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!幾ら宰相だからって、陛下の親書を…」

王が王へ宛てた手紙を読む。子供であるシオンにすら、それがどれだけ王族の権威を汚すことか容易に分かることなのに、ラドスはそれをあえて承知しているかの様な口調で弁解した。

「先王が急死なされたため、国政は私が一手に担っているのです。どうぞお気になさらず」

「気にするなって…しかし…」

この国はコイツが既に牛耳っているのか?そんで、あの子供を良い様に利用しているって訳か…さっき会った時から気に食わない奴だと思ってたが…結構達が悪いな。

クフィリオスの内情を「ワザワザ」見せつけられたシオンは、この何とも言い表せない不穏な空気を本能で感じ取り、そっと誰にも気づかれないように腰の長剣に手を伸ばす。

「……なんと、大変です王様!これは親書などではありませんぞ!」

「????」

玉座に響くラドスの声。シオンはラドスの言っていることの意味が理解できず、呆然とした態度でラドスの言葉に聞き入る。

「これは…ダーカンドラからの侵略戦争の開始を告げる宣戦布告の書類です!…即時降伏せねばクフィリオスを火の海にするとか…」

「なっ!」

思わず耳を疑うような発言に驚くシオン。もちろん、ダーカンドラがクフィリオスに攻め入るなどと言う話は初耳であった。

「それは本当なのかラドス?ダーカンドラが余の国に攻めてくるというのは!」

傀儡であるクノも、流石に自国が戦争になるという言葉には驚きを隠せずに慌てふためく。

「そんな…おい、親書を見せろ!」

ラドスの言うことがデタラメだと思い、とっさにラドスから親書を奪い返そうとするシオン。しかし、こうなることは最初から決まっていたかのようにラドスの掛け声とともに大量の重装備兵士がドッと玉座に流れ込む。

「衛兵!直ちにこの無礼者を捕らえよ!即刻地下牢にぶち込むのだ!」

「だから親書を…って放せ!おいっ!こんなことして…」

剣を抜くか迷ったシオンだが、その迷いが命取りとなり一瞬で遅れる。

「くっ…ラドス!」

それは一瞬の出来事だった。俺がラドスに掴みかかろうとした瞬間。俺は大勢の兵士達に取り押さえられ、床に押し付けられたかと思ったらあっという間に荒縄で全身を縛りあげられてしまい、次に視界が良好になった時には俺を万弁の笑みを浮かべながら見下ろすラドスの姿が…

結局大した抵抗も出来ぬまま、一連の騒ぎで気を失ったシオンはラドスの命令で地下独房に移送されることになった。



「危うく王様を危険に晒すところでした…まさか、ダーカンドラの連中がこんな大胆なことをするなんて」

「まったくじゃ、余の納めるクフィリオスをバカにしおって!思い返せば、大使にあんな子供をよこす時点で既に余をバカにしておる!」

騒ぎの後、ラドスは改めて親書の内容が宣戦布告を告げるものだとクノに教え込むと、次第に幼いクノはラドスの考えに同調していき、ラドスの思惑通りに反ダーカンドラの思いを強めていく。

「確かに王様のおっしゃる通りでございます。後ほど、正式にダーカンドラに対して我々の断固とした意見を返し、あの子供にはキツイお仕置き与えておきます」

「ふむ…まぁ、子供じゃから手荒なマネはするなよ」

「はい…それは十分に承知しております…十分に」




クフィリオス城の西側にある施設。その地下は監獄としても機能しており、罪人扱いとなったモノたちは全てこの暗闇が支配する施設に収監される。無論、国賓扱いであるシオンは例外のハズなのだが…

「こんにゃろぉ!さっさと牢屋から出しやがれ!…それと、装備返せぇぇええぇ!!」

言われなき容疑で地下の独房に投獄されたシオン。着ていた装備はもちろん、青いスタライプの下着以外は全て没収されてしまい、もはや自身がダーカンドラの将軍であるという証は鍛え上げられて培った引き締まった身体の筋肉ぐらいだろう。

「黙れ!このクソガキ!…ったく、本当にあれがダーカンドラの将軍かよ…」

「将軍ですよ」

「っ!ラドス様!…こ、このような場所に何用でおこしに?」

またもや何処からともなく現れたラドス。自国の宰相とはいえ、クフィリオス城の兵士達もラドスとその側近には少なからず恐怖という名の警戒心を持っている。

「いえ、ちょっとあの坊やに聞きたいことがありましてね…それで、君は少し席を外してもらいたいのだが」

本来、受刑者への面会は担当の兵士が原則として一人付く決まりになっているのだが、この兵士はラドスの鋭い視線と重圧に耐えられず、特例としてシオンへの面会を許可。さらには見張りの任まで放棄するという始末だ。

「は、はぁ…ラドス様がお望みとあれば」

少し怯えた様な表情を浮かべながら、見張りの兵士はそそくさと地下独房から飛び出していった。

「さて……ご機嫌いかがですか「将軍」?」

コツコツと足音を立たせながら、徐々にシオンの入れられている牢に近づいていくラドス。そして、自身の牢に近寄ってくるラドスを物凄い形相で睨みつけるシオン。

「ラドス…だったな。何が目的だ?」

ラドスが牢の前に来るや否や、先程の行為の真意を問いただすシオン。

「おや、あの親書の内容を聞いていなかったのですか?貴国の王はクフィリオスに戦線布告したのですよ?」

「それはテメェーのでっちあげだろ!陛下が軍部の意見無しに戦を企てるハズが無い!お前の狙いは一体何だ!戦争を起こして…」

誤魔化そうとするラドスに対し、一歩も食い下がろうとしないシオン。だが、シオンがしゃべり終わる前にラドスがそれをかき消すかのようにして口を開く。

「お前に答える通りは無い。…それより、自分の身の心配をした方がいいぞ、明日からお前の拷問を始めるからな」

「ご、拷問!?」

「拷問」という二文字に驚くシオン。

「ふふ、さっきまでの威勢はどうした?恐怖で体がプルプル震えているぞ?」

「べ、別にそんなこと…」

戦士として、常に死は隣合わせだということを多少心得ているシオンであったが、実際にこのような危機に陥ったことが無いので、内心不安で満ちていた。

そして、それを見抜いているラドスは、さらにシオンを精神的に追い詰めて弄ぶために次から次へと恐ろしい拷問方法を口頭で語って行く。

「…鋭角の三角木馬に掲げ、喉が枯れて叫べなくなり失禁するまで鞭で痛めつけられる…そして、抉れた皮膚に特製の塩キズ薬を塗り込むんだ…ふふ、安心しろ、拷問の担当は私だ。死なない程度にたっぷりと料理してやるから楽しみに待っているがいい」

「ぐっ…くそぉ…」

やがて、ラドスは脅かせるだけシオンを脅かすと、さっさと帰っていった。

「ど、どうしよう…俺…」

その日は「あえて」拷問は行われなかったが、シオンはその夜、独房の片隅で丸く蹲りプルプルと身体を震わしていたという。

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