帰らずの家 第3話 「シルビエルの魔手」
朝食後、ナッツは台所に置いてある自分の荷物を取ると、さっさと帰り支度を始めて屋敷の面々に別れの挨拶を告げる。
「色々とお世話になりました。僕はそろそろ帰らないといけないので…」
食堂の入口で住人にペコリと一度頭を下げ、扉を開けて玄関ホールに移動するナッツ。しかし、玄関が目の前だというところで追いかけてきたヨーセンによって腕を掴まれてしまった。
「!」
「ナッツくん。外はスゴイ濃霧だよ?もう少し待ってからでもいいんじゃないかな?」
昨日の夜のことが結局ずっと頭から離れず、それでヨーセンさんに腕を掴まれた時は驚いたけど、実際にヨーセンさんが僕に言ってることは普通のことで、玄関の横にある窓の外は本当に真っ白だった。
「そうだよ!迷ったらどうするんだよ!」
そこに、後から追いかけてきたファムも駆け付け、ヨーセンの意見に賛成してナッツを引き止める。
だが、ナッツは自分でもなぜだと問いかけてしまうほどに、防衛本能が呼びかけているかのごとく、どうしてもこれ以上この屋敷に留まっていたくは無かったのか、ヨーセンの警告を無視してまで半ば強引に帰ろうとした。
「いや、僕は大丈夫ですから…それじゃ」
そう言って、愛想笑いを浮かべながらヨーセンの手を振り払おうとするナッツだが、ヨーセンはなぜか掴んだ手を離そうとしない。
「っ!?」
「行かせないよ。君はこれからずっとこの家で暮らすんだ…私達とね」
困惑するナッツを尻目に、いきなり訳の分からないことを言い出すヨーセン。
「ヨーセンさん?」
「ヨーセン兄ちゃん。ナッツは家に帰してやろうよ…待ってる人も居るみたいだし」
ナッツの手を離そうとしないヨーセンに対し、ファムがナッツを返してあげようと横からヨーセンに進言する。しかし、ヨーセンはファムの意見にこう向かって言い返す。
「シルビエル様のご命令だぞ?」
「お父様の…シルビエル様の命令…」
シルビエルの命令と聞くや否や、急に黙り込むファム。一部始終を見ていたナッツも未だに状況が理解出来ず、黙り込んだファムに真相を問いただそうとする。
「放してください!…ファム!どういうこと?」
「弟が欲しいって、お前ずっと前から言ってたじゃないか」
「そうそう」
「スタンさん?ストルさん?」
ナッツの質問に答えず黙って俯いているファムに、さらに遅れてやってきたスタンとストルが声をかける。しかし、ファムはそれにも答えようとせず、とうとうグズった様な声でナッツに謝罪し始めた。
「ナッツ。ごめん…ごめん」
「ごめんって…何を…僕をどうするつもりなんだ!うっ……」
急に泣き出すファム。これから一体僕はどうなるんだろう?僕はその理由をファムに聞こうとしたけど、急に眼に前が真っ暗になって…
「んっ…ここは?…体が動かない…何も見えない…うぅ、それにこのネバネバ…」
気がつくと、僕は自分でも何処に居るのかわからない不思議な場所に居た。ついさっきまで玄関に居たはずなのに…ここが屋敷の中なのかどうかも全然分からなかった。とりあえず、なぜか体が動かないのと目が見えない。目は布で目隠しされてるみたいだけど…それと、体中に感じるネバネバした嫌な感じ。
「お目覚めかな?ナッツくん」
「…っ!」
現状が理解出来ずにいるナッツの耳に響き渡る声。だが、聞き覚えのあるその声にナッツはスグにその正体に気がついた。
「…シルビエルさん?……何処に居るんですか?どうしてこんな事を…ねぇ!!」
声の主がシルビエルだと気付いたナッツは、身動きとれない身体をピクピクと懸命に震わせ、シルビエルに真意を尋ねる。しかし、シルビエルから返って来た返事は意味の分からないモノだった。
「何処って…スグ側に居るじゃないか。さっきから君を抱きしめているというのに」
「えっ…」
シルビエルの言葉に悪寒を感じるナッツ。もし、さきほどから身体を圧迫している粘着質な何か「自体」がシルビエルだとしたら、それはシルビエル自身が人ではないということ
だ。
「さぁ、君にも植えつけてあげよう…私の愛をね」
そうシルビエルが呟いた瞬間、ナッツの周囲からシュルシュルと何かが活動を始めた音が響く。そして、それは突然ナッツの口元に勢いよく注ぎ込まれる様にして侵入を始めた。
「やぁ…やめて!やだぁああぁ!ふぅんっ!んぅううぅ!!」
強引にナッツの口の中に入ってくる謎の粘着質な物体。ナッツは懸命にそれを吐き出そうと顔をブンブンと狂った様に振り回すが、謎の物体は容赦なくナッツの口に流れ込み続ける。とその時、ナッツの目隠しが衝撃で中途半端にずれ込み、片目の視界が蘇る。
「んぅんぅううぅ!ふぅんぅううぅ!」
僕の目の前にあったのは、気持ち悪いぶよぶよとした太い緑色のミミズ。これがシルビエルの本当の姿なのか知らないけど、部屋一杯にそのミミズは溢れていた。
なんと、先程からナッツの身体を圧迫していた謎の物体の正体は、テカテカ不気味な光沢を放つ緑色の粘着質な触手であった。その太い触手の一本は相変わらずズブズブとナッツの口の中に入り込み続け、ナッツの口内を勝手気ままに埋め尽くしていく。
「んぅううううぅ!!」
多数の触手に良い様に弄ばれ、吐き気などにおそわれパニックに陥るナッツ。だが、触手はそんなことお構いなしに次なる目標であるナッツのある部分に迫る。
「ふぅんぅ!!」
ナッツの全身がズンと震えた瞬間、ナッツの肛門が無理やり外部からこじ開けられ、開いた肛門から口同様に触手が侵入し始めた。それに慌てたナッツは朦朧とする意識の中、肛門を閉じようと力むが、既に侵入を許してからのそれには意味が無く、触手はナッツの肛門に吸い込まれる様にしてゆっくりと確実に入りこんでゆく。
「んぅううんぅうううんぅ!んぅうんぅううんぅ!!」
僕はこのまま死ぬのかな?ミミズに襲われて死ぬと思っていたら、なんだか体の底から変な感じがしてきた…なんで?これは気持ちいい?
触手に完全に身体を乗っ取られ虚ろな表情を浮かべるナッツだったが、それとは対照的にナッツの性器がこの状況でムクムクと大きくなっていく。また、それを後押しするかのように細い触手がナッツの勃起しかけた性器と両乳首にシュルシュルといやらしく纏わりつき、陰部への刺激を与え始める。
「んぅぅうぅ!んぅっ!んぅうぅ!んぅううんぅ!」
性器や乳首を刺激されることによって、ナッツの息使いはさらに荒くなっていくが、先程までの苦しそうな息使いというよりは違う、まるで触手に犯され喘いでいる様にもとれる表情を見せるナッツ。
「ふぅんんんぅううぅ!んんんんぅんぅんんぅうぅんぅんんぅ!!」
そして、ナッツの快感が触手からの責めによって最高潮に達したと思われる様な動きが身体に起こった時、それと同時にナッツの意識は再び途絶えた。